機内の食事
「デス」もパイロットも国内線の場合は大抵一日の勤務で少なくとも一回、時には二回、会社が支給する弁当を食べることになります。時間帯によっては出発前に会社の食堂で食べることもあり、時間が無ければパイロットの場合は飛行中に操縦席で食べます。この場合3~4種類ある弁当の中から、機長と副操縦士が同じ種類の弁当を食べない規則になっていますが、食中毒によって二人のパイロットが同時に体の具合が悪くなり操縦不能になるのを防ぐためです。
飛行中は自動操縦装置を入れて飛行するので、操縦席で食べる時間がありますが、気の毒なのは「デス」の方です。その理由は会社は弁当を支給するものの、それを食べる時間が無いのです。食事時間帯でも飛行中は乗客への機内サービスをし、彼女たちが弁当を食べるのは到着後地上で次の便の出発までの僅かな時間です。乗客が全員降機すると機内掃除人が手早く客室の清掃をしますが、ホコリが舞い上がる中で乗客用の座席に座り急いで食事をすることになります。食事を味わうことなどできるはずが無く、文字通りお腹に「詰め込む」ことになります。「習い性となる」のことわざがありますが、私も現役の頃は家の食事でも食べるのがつい早くなり、女房から文句を言われたことがありました。
国際線の場合はエコノミー・クラス用の食事を会社は支給しますが、それはそれでファースト・クラスの食事が必ず余るように搭載するので、気の利いたチーフパーサーがいると、操縦室に持ってきてくれます。洋食と和食があるので、パイロットが同じ食事を摂らないのも国内線と同じです。
「デス」は厨房に折りたたみ椅子を用意して、ヒマな時間にたべますが、聞くところによれば黒いダイヤと言われる高価な キャビア をお茶漬けにして、しかもプラスチック製の容器ではなく、陶器のお飯椀で食べるのだそうですが、勿論ファースト・クラス用の食事です。
トリュフ、フォアグラと並び「世界の三大珍味」といわれるキャビアを何度も食べた感じでは、特別美味しいものとは思いませんでした。どおせ到着地で廃棄処分にされるよりも、「デス」の胃袋に入った方が「キャビア」や「フォアグラ」を作った人も、料理人も喜ぶというものです。
写真の黄色の円内がキャビアですが、上等のワインをたしなみながら、オードブル、スープ、サラダ、メインディシュ、チーズ、デザート、果物、食後のブランデーと続く、ファーストクラスのフル・コースの食事の気分を味わってください。写真はクリックで拡大。
最近 もったいない というキャッチ・フレーズで滋賀県知事に当選した女性が出ましたが、機内でファースト・クラスやビジネス・クラスで口を切り余った高価なワインや、例の高級なドン・ペリニオンなどのシャンパン、数万円のブランデーなどはどうすると思いますか?。到着前に全てトイレに流すのです。
左利きが聞いたらもったいなくて涙がこぼれそうですが、アルコール類は無税で購入したために、口を切った瓶の返却は税関手続き上しないのです。最近の機体は異なりますが、以前の機体ではトイレの下部に便槽があり、高価なブランデーなどを流すと、馥郁(ふくいく)たる香りがトイレ内部に漂ったものでした。機内のトイレについては別の機会で述べることにします。
コメント
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こんにちは
amazonの読者レビューを見ただけですが、田口美貴夫というもと?機長さんの著書の評価も良いようです。この方は縄文航空ですか?
もと縄文航空機長の流行作家、内田幹樹さんについて「著者の今までの作品と異なり------難度の高いシチュエーションに著者は挑戦」と、作品によって作風が大きく変化するのを指摘したレビューがありますね。
いずれにせよ、姪の中年「デス」に、金野氏のエッセイを勧めるかどうか真剣に悩んでいます(笑)
私個人は大変楽しく読ましていただいています。
投稿: Y.S | 2006年7月23日 (日) 13時59分
はじめまして。いつも楽しく読ませていただいています。
「左聞きが聞いたらなぜ涙がこぼれる」っていうのはどういう意味でしょうか?
投稿: りぶ | 2006年7月23日 (日) 18時39分
ブログをお読み頂きありがとうございます。
ところでご質問の意味ですが、ブログには左「聞き」ではなく、左「利き」と書いたはずですが。辞書の大辞林によれば左利きの意味の中には、酒が好きな人。左党とあります。
つまり酒を飲む場合に、右手に持った銚子で酒を注ぎ、左手に杯を持って飲むことから、酒を飲むのが好きな人のことを「左利き」とも言うようになりました。
高価な酒の残りを国際線では、機内のトイレに棄てるという件を、酒好きな人が聞いたならば、もったいないことをするものだ、自分が飲みたかったのにと思うだろうという話です。
涙の件はおもしろ、おかしくするための表現でした。
投稿: | 2006年7月23日 (日) 20時23分
坂上田村麻呂どの、
そのお方は鶴丸城の住人と承っておりまする。
投稿: | 2006年7月23日 (日) 20時31分
ご説明ありがとうございます。
理解が浅くすみませんでした;
言葉はおもしろいですね^^表現ひとつで面白さを見つけられるので。
投稿: りぶ | 2006年7月25日 (火) 12時25分