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2006年8月31日 (木)

飛行機のトイレ

Ystoire 国産旅客機の YS-11や、オランダ製の F-27 ( フレンドシップ )などのプロペラ機のトイレは、水洗トイレではなく、端的に言えばバケツに貯める方式でした。この方式の最大の欠点は飛行機がひどく揺れると、バケツの中の汚水がトイレの床に溢れ出ることでした。もっともそういう事態は、数年に一度有るか無しかでしたが----。写真はクリックで拡大。

ジェット旅客機のトイレについて説明しますと、大きく分ければ循環式とバキューム式があります。循環式トイレは B-747-200型機などの、旧式のジャンボ・ジェットなどに使用されているもので、トイレの下に汚水タンクがあり、水洗レバーで流す度に薬品を入れて青くなったタンクの汚水を、循環させて洗い流す仕組みです。長時間飛ぶと汚水の腐敗分解が進み、臭いが強くなるので、「デス」が青色の防臭剤を更に便器に追加投入します。循環式トイレの欠点は非常識な乗客が、トイレに汚れた下着、おしめなどの異物を流すと、ポンプが詰まり使用できなくなることです。

これに対して 、B-767 や B-777、B-747-400型 のジャンボ・ジェットなどの新型機では、バキューム式、トイレの構造となっていて、汚水タンクはトイレの下ではなく、機体の最後部下方などにあります。このタイプではトイレでフラッシング( Flushing )する(流すボタンを押す)と、「プシュー」という圧縮空気音がするのが特徴です。今度飛行機に乗ったら、トイレに入って試してみてください。汚物は少量の水と一緒に、床下にある汚水パイプを通って後部の汚水タンクに吸引されて、そこに貯蔵されます。原理的には家庭にある掃除機でゴミを吸い取るのと同じですが、その際の吸引力を得るには客室内部の高い気圧と、機外の低い大気圧との圧力差を利用します。したがって循環式トイレのように、臭いがすることは原理的にありません。

詳しく説明しますと旅客機が 一万メートル以上の高空を飛行していても、乗客が酸素不足による高山病などにならないように、客室内の空気を加圧していますが、その圧力は高度にすれば 八千フィート( 2,400 メートル) の高度と同じで、気圧の値では 0.8 気圧程度に常時保たれています。それと機外の低い大気圧との差を、吸引力に利用しています。飛行機が地上にある時や低高度を飛んでいるときは、気圧の差を利用できないので、バキューム・ブロアという一種の掃除機で、少量の水と共に汚物をタンクに吸い込みます。

Toirefurasshu1 ところで航空界には、こういう伝説があります。大西洋横断の旅客機に搭乗した超肥満体の女性が、機内のトイレで用を足し、そのままの姿勢で前述のフラッシュ・ボタン( 写真の黄色のボタン )を押したところ、飛行機内外の気圧差によって巨大なヒップが便器内に吸引されてしまい、便座から抜け出せなくなりました。「デス」を呼んだものの抜け出せず、結局そのままの姿勢で飛び続けた末に、着陸後に三名の整備士によって、ようやく吸引から解放されましたとさ---。

高い高度を飛行中に、客室に掛かる与圧を 8.6 P S I  ( Pound per Square Inch、つまり1平方 インチ当たり8.6 ポンド )と仮定します。これを キログラム/平方センチ の値に換算すると、1平方センチ当たり 0.6 キログラムの圧力が作用することになります。超肥満体の女性が座る便座の大きさを、 30センチ X 20 センチと仮定すれば、巨大ヒップ全体に掛かる吸引力は、計算上で  360 キログラム になります。

Fatwoman ところでトイレ・パイプの吸引力が作用するのは、フラッシュした後のせいぜい 五秒前後なので、便座と巨大ヒップとの間がそれほど長時間、188 キログラムの吸引力( 換言すれば真空状態 )を維持できるかどうか疑問になります。この伝説から教訓を得るとすれば、「身軽になる行事」を終えた後は、身づくろいを済ませてから、フラッシュ・ボタンを押すことです。写真はクリックで拡大。

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コメント

拙者、昔海自のR-4Dに搭乗の機会があり、恥ずかしながら我慢ままならず、着陸直前の淡路島上空で黒塗り金属製のポッティーに用を足したのでござる。勿論Lの方で、トイレは無い旨念を押されていたので、今思い出しても冷や汗ものですが、あの時の脂汗には勝てなかったのでござる。失礼:p

R-4D というのは米海軍の制式名称で、民間航空機製造の名門である、ダグラス社製の DC-3 のことです。DC-3 型機にはバケツ式のトイレが当然ありましたが、海上自衛隊では主に補給物資の輸送などに使用していた為に、トイレの設備を取り下ろしていたのだと思います。昭和30年代にアメリカで、グレイハウンドの長距離路線バスに乗ったところ、「不快な時間から貴方を解放するために、この車両にはトイレの設備がある」とパンフレットに書いてありました。坂之上殿も別な方法により不快感から無事解放された由、祝着至極に存じまする。

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