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2006年9月26日 (火)

他人の給料が高過ぎる?。

金野氏によれば、パイロットは原則として月に 10 日の休みがあり、ホテルに 10 泊しますが、国内線の勤務のパターンは 3 日働き 1 日休み、3 日働き、2 日休みです。国際線の場合には、ニューヨークや、ワシントン D. C などの北米東海岸行きの場合は 2 泊 3 日、ロンドン や パリ などの ヨーロッパ 行きの場合は 3 泊 5 日のパターンになります。この場合 3 泊とは現地の ホテルに泊まる日数であり、5 日とは往きと帰りが機中泊(?)になるという意味です。

労働協約上、休日は所属する基地(たとえば成田、東京、大阪など)で取ると決められているので、外国でいくら休みを多く与えても、日本での休日には計算されません。

ところで国内のホテルに乗組員が宿泊する場合には、なぜか パイロット と スチュワー「デス」 を、同じホテルに宿泊させないように会社が手配するのです。俗に「遠くて近いは男女の仲、近くて遠いは田舎の道」という諺がありますが、結婚適齢期やそれをとっくの昔に過ぎた「うば桜」や、子持ち、孫持ち「デス」と、パイロットが ただならぬ関係 にならない様に、会社が予防措置を講じているのだそうです。それならなぜ国際線では、同じホテルに泊めるのでしょうか?。

事情通にいわせると実際は パイロット に対する嫉妬心から、会社の担当者が意地悪をしているのだそうです。 航空会社では航空大学校を卒業し、あるいは自社養成コースを終えて副操縦士に発令されると、翌日から乗務の際には自宅から会社まで、会社が手配する ハイヤー や タクシー で送迎する制度がありますが、その範囲は空港から 40 キロ 以内の距離でしたが、現在は何 キロ 以内か知りません。しかし一般社員(地上職員)の場合には会社の役員にでもならない限り、自宅から会社までの車の送迎は当然ありません。

彼らにしてみれば自分達は満員電車に揺られて通勤するのに、 24~25 才の若造が ハイヤーに「ふんぞりかえって」 毎日送り迎えされるのを見て、パイロット に対する嫉妬心を持つのも無理からぬことです。それだけではありません。パイロットとの収入の格差があります。新入社員教育の時から、パイロットの給料が高すぎると教え込まれていますが、パイロット側からすれば給料の額だけを言わずに、失敗が許されない仕事 の質や責任の重さを、地上職員のそれと比べて議論する必要があります。

Fire パイロットの一瞬の判断ミス、操作ミスにより、最悪の場合には 棺桶が五百個も並ぶ 事態となり、会社の屋台骨に ヒビ が入るほどの重大な損害をもたらしますが、パイロット以外で社内のどこの部署に、そんな重大な責任を担う人間がいるのか?、ということです。写真はクリックで拡大。

決定的なことを言えば、そんなに高給が羨ましければ、パイロットに成ればよいではないか、あるいはなぜ成らなかったのか?、ということです。現に地上職として航空会社に入社後に、パイロットの自社養成コースに転換し、パイロットになった社員がいるではないか。 もちろん操縦適性無しと判断されて、パイロットに成れなかった人もいましたが、努力もせずに他人の給料が高すぎると非難するのは、ズルイ卑怯者のすることです。

Zangai 機長の場合年に 2 回の厳重な航空身体検査があり、脳波、心電図、眼の検査( 5 種類)、聴力などを含む検査にパスし、同じく年に 2 回のフライト・シミュレーターによる操縦実技の試験を受けますが、そこでは緊急事態における操作の試験で、たとえばエンジンの(1 発、及び 2 発の)停止状態での進入着陸、油圧系統の故障、緊急降下などがあり、筆記試験もあります。ベテラン機長でもひと汗もふた汗もかかされます。写真はクリックで拡大。

それだけでなく、国内線、国際線の各路線毎に年に一度の更新実地 チェック もあり、口述審査にも合格して初めて機長としてその路線が飛べるのです。同じ人命を預かる医師は、一度医師免許を取れば一生有効でその間、全く試験も講習の義務もありませんが、パイロット は前述の技量、知識の チェック を六ヶ月毎に受けて、合格して初めて更新です。勿論中には不合格になる人もいますし、身体検査の結果 不合格になって飛べなくなり、地上配置になる人もいます。

それ程厳しい試験に裏打ちされた資格が、世の中にあるでしょうか?。だからこそ世界中どこの国でも、パイロットは責任の重さに相応しい高給を取るのです。

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コメント

ところで、大変失礼な質問ですが、永年気になっていますのでお許しくだされ。
エアラインのパイロットの仕事自体は新幹線の運転士などにも近いようにも思われます。
ずばり、仕事は楽しいですか?

>エアラインのパイロットの仕事自体は新幹線の運転士などにも近いようにも思われます。

空間の広がりの度合を示す数を「次元」といいますが、決められたレールの上を走る新幹線は、長さの方向だけの「一次元」の平面を走ります。

それに対して飛行機は、長さの方向だけでなく、左右、上下の「三次元」の空間を運航します。両者とも時間軸は省略。

更にスピードを比較すると離着陸の際には、新幹線の速度とほぼ同じですが、巡航中の速度は新幹線「のぞみ」の約 2.9倍 になります。それに新幹線とは比較にならない程、大気の状態、気象の影響をうけます。

>ずばり、仕事は楽しいですか?

機長として数百人の乗客の安全に対して全責任を負いながら、自然を相手に大空を自分の思いのままに飛ぶパイロットの仕事は、自分に最適な仕事であり、十分に楽しむことができました。

有難うございます、大変失礼致しました。

>自分に最適な仕事であり、十分に楽しむことができました。

安心しました、これですっきりしました。

こんにちは
「くれないの塔」関係の記事などまとめましたのでご参考までに・・・
塔の写真と、ご遺族の方のサイトが分かりました
整備されているようです

http://blog.livedoor.jp/enethan_fan/archives/50756877.html

あれから44年が過ぎましたか?。長男が生まれたのが昭和37年の2月でしたので、奄美大島での事故のことはよく覚えています。犠牲者のご冥福をお祈り致します。

パイロットの給料云々はともかく、同じ地上職でも整備士の給料については考え直す必要はあると思いますけどね。
求められる技術レベルや責任の大きさを考えるとパイロットと同じくらいの要求をされていると思うのですがその割に給料に反映されてるかどうか…。

現在の給与水準については知りませんが、かつては 20 年以上勤務した整備士であれば、シフト勤務手当を含めて年収が 1,000 万円以上ありました。

世の中は上を見れば きりがなく、航空会社の役員を 2 期 ( 4年 ) 勤めれば、「 億の退職金 」 をもらったようですが、精神衛生上よくないので、他人の収入を気にしないことにしています。

2年ほど前まではフライトエンジニアでした。団塊の時代に養成されたものであり途中でパイロットに転身した人もおりましたが、60で終了です。空はホントに綺麗です。若者よ今がチャンスです、団塊時代のパイロットがどんどん定年になり、不足気味です。航空大学、東海大学のパイロット養成学部に入学し、日本の空を安全にして戴きたい。。

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