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2006年10月13日 (金)

デスは香水をつけない

ある日のこと、金野氏は乗務終了後に DH{ Dead Head=当該便の乗組員の頭数に入らない、非番( Off Duty )の乗組員}として客席で移動しましたが、その際に客席内で変な臭いがするのに気が付きました。何の臭いかと思って周囲を見ると、通路を夾んで二つ前方の列に座っていた人が、「バッテラ」の弁当を食べ始めていたのでした。写真はクリックで拡大。

Battera 関西の人は「バッテラ」といえばすぐに分かりますが、酢で絞めた生サバに、コンブを巻いたり載せたりした寿司のことです。その酢の臭いが通路の反対側の斜め後方二メートルの距離にいた、金野氏の座席まで漂って来たのでした。

Perfume2 昔からスチュワー「デス」は香水を付けないという決まりがありましたが、その理由は狭い機内では香水の匂いがこもり、乗客に不快感を与えたり空酔いにつながるから、ともいわれていました。しかし夏場には汗臭さを抑えるために、オーデコロンを付ける程度は許されていましたが、「バッテラ」の臭いの経験から、「デス」についての香水禁止の理由がなるほどと納得できました。

ところで三百人から五百人もの乗客が乗る、長さが約 50 メートル 以上、直経 6.5 メートル の半筒状になった客室内を、同じ温度に保つのは難しいことです。冬など客席の前方を適温にすれば、空気が後方に流れて行く間に冷えてしまい、後部の客室では寒く感じます。逆に夏期など何百人もの乗客が発する体温、呼吸気に排出される炭酸ガスなどにより、客室後部の温度が上昇し、むし暑くなることもあります。

Engineer1 客室の温度を快適に保つには機種により異なりますが、客室を四~五箇所の区画に分けてそこに暖気、冷気を導入させて、室温を細部にわたり自動調節していますが、これは三人乗務の飛行機では航空機関士が、二人乗務の飛行機では副操縦士の仕事です。写真は航空機関士席の計器パネルですが、黄色で囲んだ部分が五つの温度調節のスイッチです。クリックで拡大。

ちなみに機内の空気は約 三 分間で全部が入れ替わるように、新しい空気を常に前方から機内に流し、汚れた空気、臭いなどを機体最後部から排出しています。さらに高空を飛行しても乗客が酸素欠乏による高山病にならないように、機内の空気を地上に近い気圧( 0.8 気圧 )程度まで加圧しています。

ある時金野氏が「気の強い猛妻」を連れて、成田から ヨーロッパ へ自社便を利用して旅行した時のこと、飛行機は新潟から日本海の上に出て ハバロフスク から シベリア 大陸を西に横断する コース を飛びました。その際に航空機関士による客室温度の調節がうまくいかずに、機内が肌寒くなりました。すると近くの座席にいた乗客が、「さすがに シベリア の上空に来ると、かなり冷えますなあ」と仲間同士で会話をしているのが聞こえました。

それを聞いた金野氏は「デス」の コール・ボタン を押して、座席にやって来た 「デス」 に客室中部の温度が低すぎる旨を伝えました。しばらくすると今度は温度が高くなり、少し蒸し暑く感じるようになりましたが、例の乗客が「 シベリア の気温(?)の変化」について、今度はどのように仲間と会話したのかは聞き漏らしました。

参考までに気流が悪く乗客の空酔いが予想される場合には、客室内の温度をやや低目に セット すると、空酔い防止に効果があるともいわれています。

ところで金野氏が ベテラン の航空機関士から聞いた話によれば、人種により体感の適温が違うのだそうで、白人系 ( コーケイジャン、Caucasian ) は蒙古系 ( モンゴロイド、Mongoloid )よりも、やや低い温度を好むとのことでした。そういわれてみると金野氏が、米国で冬に白人の運転する車の助手席に乗った時のこと、車内の温度が涼しいと感じたことを思い出しました。

今日は 13 日の金曜日、キリスト 教徒にとっては忌むべき日ですが、金野氏は無神論者なので、キリスト が磔刑になった日であろうとなかろうと、少しも気になりません。昼頃の飛行機で上京し、兄の病気見舞い、法事などの雑用を済ませるため東京にしばらく滞在するので、その間 ブログ は休みになります。

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