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2006年10月 5日 (木)

シブキの話

Goldengate

金野氏から聞いた話。
海上で発生する霧のことを海霧( Sea Fog )といいますが、原因は冷たい海流の上に暖かい空気が流れることにより、水分を含む空気が冷やされて霧が発生します。従って海霧が発生する地域も、季節も概ね決まっています。

写真は北米「霧の サンフランシスコ 」 にある ゴールデン・ゲート 橋で、ここも寒流の影響で霧がよく発生します。写真はクリックで拡大。

北海道や東北の東岸にある空港では、ベーリング 海から千島列島沿いに南下する寒流の影響により、釧路、札幌千歳、青森県の三沢、八戸、などが夏期になると海霧がよく発生します。私は昭和 30 年代に八戸市に 5 年間住んでいましたが、海沿いに住んでいたにもかかわらず海水浴に行ったのは僅か一度だけで、その理由は寒流(親潮)のため海水温度が夏でも 15 度と低く、長い間水中にいることができずに、水から上がると海岸でたき火をして暖を取りました。

昭和 40 年代の夏のこと、その日は朝から札幌千歳空港は濃霧の為に離着陸が出来ない状態で、千歳行きの便の欠航が続き、お盆前の帰省客で空港ロビーは大混乱の状態でした。

金野氏は満員の乗客の為にボーイング 727 型機に燃料を十分に積み、大阪から札幌に向かいました。札幌千歳空港の上空では各地からやってきた飛行機が 5~6 機もいて、天候の回復を期待しながら旋回を続けていましたが、1 時間以上も旋回を続けているうちに予備燃料を使い果たした飛行機から、次々に出発空港や代替空港に向けて去って行きました。

結局一番最後に千歳にやってきた金野氏の飛行機だけが残りましたが、その後幸運にも海霧が薄くなり視程が着陸可能な状態になりました。ところが困った問題が起きましたが、それは燃料を大量に積んで来た為に、そのままでは機体の重量が、着陸するには重すぎることでした。飛行機のジェット燃料は翼の中にある燃料 タンク 内に積みますが、着陸の際に機体が重すぎると、翼と胴体の付け根や車輪などに過度の荷重、衝撃が掛かるため、飛行機には着陸可能な最大重量が決められていました。

その重量よりも重い場合に、着陸する為にはどうするのか?。その答は搭載してある燃料を、空中に投棄( Fuel Dumping )することにより機体の重量を減らしますが、殆どのジェット 旅客機にはその為の装置があります。付近に飛行機が飛んでいないことを確かめてから、レーダーの誘導 パターン を飛行しながら 1 分間だけ燃料を空中に投棄して、着陸可能な重量まで減らしました。

Dampfuel 燃料投棄が終了する頃になって客室の 「デス」から インターフォン がありましたが、「翼から燃料が漏れ出した、と乗客が騒いでいる」 との連絡でした。着陸に備えて余分な燃料を ダンプ したとも機内放送するわけにもいかずに、とっさに「空になった燃料タンクを掃除した」
と金野氏が キャビン・アナウンス をして乗客の不安を取り除き、一件落着しました。写真は翼端にある ノズル から燃料を放出しているところ、クリックで拡大。

雲中飛行の場合は燃料を投棄しても客室の窓からは見えにくいのですが、当時は雲上快晴だったために、翼端からいきなり燃料が霧状に放出された為に、乗客が驚いたのも無理はありません。機種により異なりますが、この機体では 1 分間に約 四千 ポンド (約 1.8 トン、ドラム缶 11 本分)を ダンプ  しましたが、霧状になって空中に放出された燃料はすぐに蒸発してしまい、地上に降ることはありません。

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コメント

ご参考:思い出した懐かしいヒッチコック映画Vertigoのpointからの写真です
Kim Novakでしたか----

http://www.flickr.com/photo_zoom.gne?id=166592756&size=l
http://www.flickr.com/photo_zoom.gne?id=226027446&size=l

ヒッチコックの作品といえば、スリラー映画のサイコ( Psycho )などを思い出します。ところで昔々、サンフランシスコ 湾の遊覧船に乗りましたが、その時のガイドの説明では、湾内にある重罪犯を収容する監獄の島として有名な アルカトラッズ (Alcatraz ) 島から、脱走に成功した囚人は一人もいないと聞きました。その理由は寒流が湾内に流れ込む為に水温が低く、泳いで脱走しても数キロ 先に見える対岸まで、泳ぎ着けずに溺死するのだそうです。 その後監獄の役目を終えて、観光スポットになりました。

こんにちは
確か昔見た脱獄映画が実話だったと思いネットで探しました↓

(引用)1979年に製作された、クリント・イーストウッド主演の”アルカトラズからの脱出”
三人の囚人が脱獄するまでの実話を描いたものですが、事前にこの映画をレンタルして観て行ったので実際にアルカトラズ島に
降りて、中を見学しているときはかなりリアリティーがありました。

イースドウッド演じる、フランク・モリスはかなりの知能指数を誇っていたようです。。

私がサンフランシスコ湾内の遊覧船に乗ったのは、飛行訓練を終えて帰国する、昭和33年(1958年)のことでした。それにしてもアルカトラッズ島から、冷たい海を泳いで脱出したとすれば、不死身ですね。

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