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2007年1月12日 (金)

操縦不能

Fedex_md11_1 十日の午前のこと、高知県の足摺岬沖を飛行中の米国アラスカ州のアンカレージ発ホンコン行きのトランスマイル航空の貨物機の操縦席で、ブラジル人機長が突然けいれんを起こして意識を失ったために、別のパイロットが操縦して関西空港に緊急着陸をしました。

写真は別会社のものですが、同型機の同じタイプの貨物機です。クリックで拡大。

この機長は脳腫瘍を患い一年半前にも、意識を失ったことがあるとのことでした。ブラジルの航空身体検査はどうなっているのか疑問を感じましたが、パイロットにとって最も危険であり、避けなければならないことは、飛行中に インキャパシテイション ( Incapacitation、操縦不能 ) になることです。

ある時縄文航空のパイロットが羽田に向かう途中で胆嚢か尿路かの結石が原因で、操縦不能になったことがありましたが、その際に副操縦士が社内無線で 「機長の顔色がますます悪くなり、非常に痛がっています」 と実況放送(?)していたのを聞きました。結石が体内を移動するときの痛さは強烈で、その為にショック状態になり、モルヒネの注射でなければ鎮痛できないといわれています。その時は副操縦士が操縦して、無事に羽田に着陸して事なきを得ました。

Koukuus 機長資格保有者の場合は六ヶ月毎に航空身体検査を受けて、それに合格しなければなりません。合格すると初めて第1種航空身体検査証明書が貰えるので、乗務の際はパイロットの技能証明書と共に常に フライト・バッグ の中に携帯していて、これも半年毎の操縦試験の際に、有効な検査証明書を持つことの確認を受けます。写真は私が最後に更新した第1種航空身体検査証明書ですが、記念に保管しておいたものです。クリックで拡大。

航空身体検査の検査項目とは、脳波、心電図、胸部の レントゲン撮影、眼の検査だけでも、通常視力、動体視力、眼圧、視野、眼球振動、夜間視力、それに血液検査、聴力、血圧 、尿検査、握力、平行感覚などなどで、身体について検査できる箇所は全て調べるのではないかと思うほどです。

しかも検査はパイロットの健康維持の観点からおこなうのでは決してなく、航空法で定められた基準値から少しでも外れたならば、すぐに飛行停止にしようと (?) 会社は待ち構えている (?) のです。

Shindenzu 特に老齢パイロットにとっては、半年ごとにやってくる身体検査に合格することが切実な問題です。若い時には血圧、聴力などに異常がなくても、老齢になるにつれて血圧も高くなり、聴力も衰え、心電図にも期外収縮などの異常波形が出やすくなるのが普通です。パイロットの中には身体検査に不合格となり、何年も飛べずに定年を迎えた人や、パイロットの職を諦めて、地上職に職種変更した人が何人もいました。その点私は定年まで無事に飛ぶことができて、幸せだったと思っています。

ところで身体検査に不合格になり一定期間飛べなくなると、収入の大部分を占める飛行手当が無くなり収入が減りますが、殆どのパイロットはそういう事態に備えて所得補償保険 ( Loss of License 保険 ) に加入しているため、経済的に困ることはありません。補償保険金には所得税が課税されないため、地方税も無税に近く、収入はむしろ増えるとさえいわれています。

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