嫌な乗客、パート3
金野氏から聞いた話によれば、ある時成田からロサンゼルス行きの便に乗務のため、出発の1時間半前に出社し、運航管理者とのブリーフィングでいつものように、天候のチェックをし飛行計画を立てましたが、その際に乗客として ディポーティー( Deportee )が乗る旨の連絡を受けました。スチュワー「デス」に対するブリーフィングの際にも確認しましたが、「デス」もその情報をすでに得ていました。
日本において何らかの犯罪を犯し、国外強制退去( Deportation )命令を受けた外国人を クリミナル・ディポーティー (Criminal Deportee )と呼びますが、最も多いのは、オーバー・ステイ( Over stay、違法滞在 )や違法就労者が摘発された場合です。金野氏の時は強制退去を命じられて、ロサンゼルスに行くアメリカ人でした。
犯罪者を輸送する場合は一般乗客の搭乗に先立ち、警察官が付き添って機体後部の座席に座りますが、形式犯である違法滞在、違法就労の場合には、機体の入り口ドアの所まで入管職員が付き添ってきて搭乗させます。写真はクリックで拡大。
入管職員の役目はディポーティーの逃亡を防いで確実に飛行機に乗せ、国外に退去させることなので、飛行機の全ての ドアーが閉まるまでは、附近で監視に当たるのだそうです。
ある時金野氏はホンコンから日本人の犯罪容疑者を成田まで運んだそうですが、国外退去を命じられた容疑者(ディポーティー)に手錠を掛けて、ホンコンの警官が飛行機のドアの所まで連行し、そこで手錠を外して、待ち受ける日本警察の捜査員に引き渡しました。
日本の警察は外国では勿論警察権を行使できないので、飛行機が公海上に出てから初めて逮捕状を執行し、手錠を掛ける手続きをとるのだそうです。
日本の警察は俗に「腰縄」といわれるように、手錠に付けた捕縄(ほじょう)を腰に回して結び、犯人の自由を拘束しますが、金野氏が沖縄から米兵の犯罪者を羽田まで輸送したときには、米軍の憲兵が制服姿の兵士に手錠を掛けていて、それを縄ではなく、鎖で腰に固定していたそうです。手錠姿を空港ロビーの乗客に見られるのが恥ずかしいのか、不自由な両手で帽子を持ち手錠を隠していました。
ところで違法滞在や違法就労などによる強制送還の場合の航空運賃は、原則として本人負担ですが、カネ が無ければ政府が立替えて航空会社に支払い、あとで建前上は本人に請求します。
テロリストの疑いや麻薬犯罪の前歴がある者などの、好ましからざる人物や、必要な入国ビザを持たない者に対しては、入国審査の際に入国拒否をしてそのまま次の便に載せて送還する場合がありますが、その場合の航空運賃は、その人物を乗せてきた航空会社が負担します。
その理由は法律により搭乗手続きの際には、乗客が有効なパスポートを所持し、相手国への入国に必要なビザの保有確認を、航空会社に義務付けているからです。
今朝のテレビを見ていたら、青森県住宅供給公社から14億円余りを横領した元同公社職員の チリ人妻で、元売春婦のアニータ・アルバラードが昨夜成田から入国しましたが、入国許可に三時間かかりました。彼女をターゲットにした、テレビ番組の録画撮りに来日したのだそうですが、不正な カネ であることを知りながら 8億円もの大金を貢いでもらい、それを消費した者に対しては 「好ましからざる人物」 として、入国拒否すべきだと思ったのは私だけでしょうか?。
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