« 胴体着陸ではない | トップページ | 自衛隊機の場合 »

2007年3月20日 (火)

ジェット機の機首着陸(?)

機首の車輪が引っ込んだままの胴体着陸(?)について、プロペラ機だから無事に着陸できたのであって、大型、高速の ジェット機の場合には危険であるとする意見が寄せられましたので、実例を挙げて一般の人が考えるほど危険ではないことを説明します。

Noseabnoramalgear 平成17年9月22日のこと、アメリカの ジェット・ブルー航空の292便 (エアバス320型機) が、乗客140人と乗員6名を乗せて カリフォルニア州の バーバンク空港 (ロサンゼルスの北西20キロ)から、東海岸ニューヨーク州の JFK ケネディー空港に向けて離陸したところ、機首の車輪が上がらなくなりました。

そこで バーバンクの管制塔の傍を ローパス ( Low pass ) して管制官に目視で機首車輪の状態の確認を依頼したところ、機首車輪が90度左にねじれているが、車輪は完全に下りている様だとのことでした。 写真はクリックで拡大。

地上からのアドバイスを受けながら トラブル・シューティング をしましたが、不成功に終わった為に、機長は出発地の バーバンク空港ではなく、より長い滑走路と消防車、救急車などの緊急用の機材と、人員が揃ったロサンゼルス空港に着陸することに決めました。
西海岸から東海岸まで四時間掛かる北米大陸横断飛行の為に、機体に多量の燃料を搭載していたので、着陸に備えて太平洋上を二時間旋回して燃料を消費した後に、ロサンゼルス空港に緊急着陸をおこないました。

Noasegearfire 着陸した後に主車輪での滑走をできるだけ長く続け、減速した後に機首車輪を接地させましたが、同時に火花が発生し炎が見えました。機体は滑走路の 90パーセントを使用して停止しましたが、同時に火も消えました。乗客は機内から緊急脱出用の スライド(滑り台)を使用して脱出する必要もなく、通常の ドアから下りました。

Songai 写真は緊急着陸をした機体の機首車輪の ハブ と タイヤ ですが、ハブ は半分に摺り減ったもの火花の割には タイヤ の焼け跡も見られず、機体の損害は ハブ と タイヤだけでした。エアバス 320型機の着陸速度は詳しくは知りませんが、機体の大きさから 時速 210~230 キロメートル (120~130 ノット )前後だろうと思いますが、それでもこの被害で済みました。

22plane_5 これを見ても プロペラ機だけでなく、着陸速度がより速い中型 ジェット機でも、機首着陸(?)が思ったよりも安全なことが理解できたと思います。以前述べたことを繰り返しますが、機首附近には燃料 タンクも、燃料の パイプライン も無いので、着陸滑走中に派手に火花を出しても、燃える物、引火する物は 機首のタイヤ 以外は何も無いからです。

写真は機首の火花も他に燃え移ることなく消えてしまい、滑走路まで迎えに来たバスに落ち着いて乗り移る乗客たち。

« 胴体着陸ではない | トップページ | 自衛隊機の場合 »

コメント

こんにちは
横風の強い場合、素人目には、かえってJetのほうが対応しやすいかとも思うのですが、いかがでしょうか?

スペイン貿易庁(ICEX)が、経済誌などに、《現在、世界を行き来するフライトの5便のうち3便は、スペイン企業が開発した航空管制プログラムで目的地に到着しています。スペインは航空管制の分野で世界一です。》と、広告を出していますが、ちょっと意外でした。
なぜ、アメリカなどではなくスペインなのでしょうか?

機首着陸(?)の場合には 接地後 ブレーキを使わずに直進するので、プロペラ機でもジェット機でも横風には差が無いように思います。なお ラダー(方向舵)が方向維持に有効なのはせいぜい 50 ノット(時速90キロ)までなので、強い横風があれば以後の方向維持が困難になります。

航空管制用のプログラムの件は全く知りませんが、日本の管制プログラムは NEC や富士通などの、 日本製だと思ってきました。以前管制システムが大幅に ダウン したことがありましたが、原因は NEC 製の プログラム に バグ があったのが原因と聞きましたけれど。 

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジェット機の機首着陸(?):

« 胴体着陸ではない | トップページ | 自衛隊機の場合 »