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2007年3月14日 (水)

胴体着陸ではない

航空用語の殆どは英語からの和訳ですが、胴体着陸のことを英語では ベリー・ランディング( Belly landing )といいます。ベリーとは腹部のことです。一般受けするように高知空港の事故を、マスコミは胴体着陸と呼びましたが、本来の胴体着陸の意味は、車輪が全て出ない状態で、あるいは意図的に車輪を出さずに胴体で着陸、接地することです。たとえば滑走路だけでなく、畑の中や砂浜などに不時着する場合には、転倒防止のために胴体着陸をするのが普通です。

高知空港では事故機の腹部 ( 胴体 ) は接地しましたか?。接地したのは 機首 (ノーズ、Nose ) だけでしたね。でしたら ノーズ・ランディング ( Nose landing ) というべきでしょう。
Nose gear retracted landing  といえば完璧ですが、やや長過ぎます。

今から約四十年まえの昭和43年頃のこと、大阪伊丹空港で縄文航空の YS-11で、片側の主車輪が下りなくなる故障が起きましたが、着陸の困難さから言えば、今回の ボンバルディア 機の場合よりも何倍も難しい状況でした。

詳しいことは忘れましたが、着陸する為に機長が YSー11 の車輪を下ろしたところ、片側の主車輪が下りずに格納されたままでした。空中で整備士の アドバイス を聞きながら車輪を下げる処置をしましたが、結局成功せずに着陸することになりました。

この場合の取るべき着陸形態は、大別すると二つありました。

1:全部の車輪を上げたままで、文字通り胴体だけで着陸、接地する。
2:利用可能な機首の車輪と、片側の主車輪の二つの車輪で着陸する

1:の場合は主翼にある燃料タンクのヒビ割れなどの燃料漏れによる、火災の危険がありました。
2:の場合は着陸後に車輪が出ていない側に機体が傾き、地上でグラウンド・ループ (機体が地上で方向維持できずに、大きく旋回し滑走路からはずれること ) の可能性がありました。

さらに着陸場所について

3:滑走路上に着陸する。
4:火災の発生を防ぐために、滑走路脇の芝生の上に着陸する。

という選択肢がありましたが、 機長は 2 と 3 を選びました。

大型 ジェット 機以外は、空中で余分な燃料を放出する装置がないので、飛び続けることにより燃料を消費しました。そして限界近くまで燃料タンクを空にしてから、伊丹空港の滑走路に着陸しました。

接地はグラウンド・ループを考慮して滑走路の中心よりも片側に寄せ、片側の主車輪、それに続き機首の車輪を接地させ、接地後の滑走では補助翼を車輪の出ている側に一杯に取り、なるべく空力抵抗( Aero-dynamic Brake ) を使い減速し、支えきれなくなってから翼を滑走路に接地させました。グラウンド・ループ は予想の範囲内でした。かくして乗客、乗員は全員無事に機体から脱出できました。メデタシ。

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コメント

いつも楽しく拝見しております。
今回の事故、生中継で見ました。仰るように胴体では無いですよね。どの人か忘れましたが、コメンテーターの方が「胴体着陸ではない」「それほど難しい技術ではない」とコメントしてましたが、あっさり流されてました(笑)
たぶん、テレビ的では無かったんでしょうね。
胴体着陸ですが、何度かゲームのシミュレーターで、やった事があります。
機材によって失速する速度が違うので、難しかったように思います。
実際は、大勢の人を乗せてるので、技術以前に、精神力が物を言うんでしょうね。

緊急事態になると乗客はスチュワー「デス」の態度に敏感に反応するし、「デス」は機長の顔色を覗うものです。そこで機長としては内心はともかく、努めて平静に保つことが必要です。

避けなければならないのは、乗客がパニックを起こすことであり、緊急着陸に成功しても、乗客が先を争って飛行機から脱出しようとすれば、機内で混乱が起きて時間が掛かり、ケガ人も出ます。その為に、

我々乗組員は日頃から緊急事態に備えて、十分に訓練を受けているので、心配ご無用です。

All of your crew members are well trained for this kind of situation ,so there's no cause for worry.

とでも機内アナウンスをすれば、乗客の不安も解消されます。

べりーダンスのべリーですね。最近はカルチャーセンターなどでも人気とか。
そういえば、ノーズ・ランディングは和訳が無いのですね。
でも、やはり[胴体着陸]は変ですねー。

とりあえず・・心配したほど縄文航空の株価は下がらなかったけれど、市場は全面安ですね。

若い女性のベリーダンスなら見ても楽しいのですが、昔若かった人のでは---?。

縄文航空の株は関東出身の金野氏が、株主優待券を使い飛行機で往復するのに必要なため、売らないらしいとのことでした。

機名は、弟なども、ボンバルディアというより、ダッシュ8と言っていますがなぜですか・・

百パーセントの保証はありませんが、以下の答えをします。

ジャンボ・ジェットの愛称で呼ばれるボーイング747型機には、三人乗務で旧型の「ー100」、「ー200」などの型式がありますが、新型で二人乗務の 「ー400」 のことを、航空関係者は「ダッシュ400」、つまり「Dash 400」と呼び、ジャンボ・ジェットの愛称では呼びません。操縦計器には B-767 と同じく グラス(ガラス)・コックピットと呼ばれる CRT ディスプレイを採用したり、国際線では翼端にウイングレットを装着して長距離性能の向上など、性能的にも異なるからです。

DHC-8 について「ダッシュ8」と呼ぶのは 、デ・ハビランド・カナダ製の八番目の型式を示すものであり、ダッシュ400と同様に、DASHとは何かの略語ではなく単に 「ー」 の意味です。

ちなみに 電信のモールス符号の トン・ツー のことを、英語では「 ドット、ダッシュ 」と発音します。

間違っていたら、申し訳ないのですが、

YS-11が片主輪着陸をしたのは1979年7月21日羽田空港で東亜国内ではなかったでしょうか?

昭和40年代前半に発生したYS-11の事故は1966年11月13日に全日空YS-11機が松山空港沖合で着陸失敗墜落した事故があるだけなのですが。

YS-11が大阪空港で事故をおこしたのは全日空YS-11A機が着陸時に胴体後部を接触させた事故と1975年5月16日に東亜国内のYS-11機がパンクしてオーバランした事故があるだけなのですが。

すみません。大阪空港で全日空YS-11A機が着陸時に胴体後部を接触させた事故は1976年4月19日です。

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