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2007年3月30日 (金)

泡沫消火剤の散布

F4danangab 以前は胴体着陸などの緊急着陸時には、予め滑走路に泡沫消火剤を散布しておき、そこへ着陸させていましたが、最近では軍用飛行場を除き、あまり使用されなくなりました。

その理由とは滑走路上に泡沫消火剤を散布しても、これまで考えられていたほどの火災発生を防ぐ効果が無いことが判明したからでした。アメリカの連邦航空局である、F A A ( Federal Aviation Administration )も以下のような勧告を出しています。

The FAA does not recommend the foaming of runways for emergency landings and warns against the practice with any foam other than “Protein” foam.

意訳しますと、「 F A A は緊急着陸時における滑走路への泡沫消火剤の事前散布を推奨しない。泡沫消火剤を使用する際は プロテイン(たんぱく質)を主成分とするものに限り、それ以外の種類の消火剤は使用しないように警告する」としています。上の写真の アワ まみれの機体は ベトナム戦争当時、南ベトナムの ダナン空軍基地に胴体着陸した F-4 ファントム 戦闘機です。写真は クリックで拡大。

泡沫消火剤には 「プロテイン・タイプ」以外にも、水状の被膜を形成するといわれる 「A F F F (Aqueous Film Forming Foam 、水性被膜形成泡沫消火剤」、や 「アルコール・タイプ」 などがありますが、いずれの場合についても緊急着陸の際に、滑走路を泡沫消火剤で事前に覆うことの有効性については疑問視されています。

つまり緊急着陸する場合に滑走路面を泡沫消火剤で覆っても、覆わなくても着陸機に対する火災防止効果が「気休め程度」しか無いということなので、時間と手間、カネを掛ける必要はなくなります。

Bellylandg1 滑走路の幅について説明しますと、地方空港などの狭いもので150フィート(45メートル)、国際空港など広いものでは200フィート(60メートル)ありますが、胴体着陸に備えて、滑走路の幅の半分近くの75フィート(23メートル)の幅で、最低でも泡沫の厚さ(深さ)2インチ(5センチ)で、長さ1,200フィート(300メートル)の範囲の滑走路に泡沫を散布するとすれば、泡沫消火液を作り滑走路上に散布を終了するまでに、約40分から一時間も掛かります。

Bellylandg2 しかも泡沫の効果は緊急着陸をする パイロット の技量だけでなく、気温、風向風速などの要素に大きく左右され、雨や雪が降る状態では散布できません。散布した 「アワ」 は時間と共に消滅するので散布直後から性能が低下します。写真は上の胴体着陸した機体に、後で消火剤を散布したもの。

パイロット にとって嫌な問題もあります。例えば片側の主車輪と機首輪で着陸した場合には、泡沫により車輪が滑る為に車輪が引っ込んだ側の エンジン や翼端が接地してからは、機体の方向維持がより困難になり、滑走路から外にはみ出す危険性が高くなるからです。

参考までに車輪の トラブルから、滑走路に泡沫消火剤の散布無しに胴体着陸した、二人乗りの F111 の動画です。U R L をクリック。

http://www.youtube.com/watch?v=Uf6zo4N5dS4

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