運動神経とは無関係
操縦適性とは不思議なもので、運動神経が発達している者の方が パイロットに向いているように思われますが、実際はそうではなく実は無関係なのです。見るからに スポーツ万能 タイプで実際に運動能力の高い人がいましたが、飛行訓練が始まると パイロットの適性が無いということで、訓練の途中から エリミネート( Eliminate 、排除 )されました。
その一方でこれまで運動とは無縁の学生生活を送り、海上自衛隊の幹部候補生学校に入学した際には、泳げない 「 赤帽 」 の人がいました。「 赤帽 」 とは泳げない人が水泳訓練の際に被る赤い帽子のことですが、泳げない海上自衛官などあってはならないことなので、起床後からすぐに水泳の特別訓練があり、しごかれた結果、夏の終わりには遠泳ができるまでになりました。本来左の写真の頃から水泳を習うべきでしたが---。
彼は後に米海軍の パイロット・コースに留学し、無事に パイロットの資格を取りましたが、二人の息子は共に航空大学校に進学し、一人は鶴丸航空の パイロットに、もう一人は縄文航空の パイロットになりました。ここで言いたいことは操縦適性と運動神経とは別物であること、そして操縦適性にはほんの少し遺伝的要素があるのかな?、という気がしました。
ではどういう性格の人が パイロットに不向きであるかを、私の独断で述べてみますと、神経質な人、几帳面な人、まじめで緊張する クセのある人は、どちらかといえば パイロットには不向きです。人は緊張すると手足の筋肉が自然に硬直し、柔軟性を失うので、三舵(水平尾翼、垂直尾翼、主翼、の後縁にある補助翼)を両手、両脚を使い コントロールする操縦操作が スムーズにできなくなるとか、修正操作を オーバー・コントロールする傾向があります。
さらに緊張すると、前回述べた視野の狭窄 ( きょうさく ) が起きて一点集中の傾向が強くなり、計器類の スキャン ( Scan、頻繁な チェック、眼の動き) が遅くなります。
訓練によりこの傾向はある程度改善されますが、おのずと限界があり、社会生活の上でむしろ好ましい部類に属する性格も、パイロットになるには マイナスの面があります。
ところで羽田空港では四本目の滑走路が二年後(2009年)に完成予定ですが、そうなると現在の羽田の離発着回数が、一時間当たり29便から40便へ増え、年間発着回数も 29万6千回から、滑走路新設で 約 1・4倍の 40万7千回に増えることになります。発着枠の増大に備えて各航空会社では、今から パイロット、スチュワーデスの増員に迫られています。
スチュワーデスは国家資格も国家試験も無いので、養成には時間が掛かりませんが、問題は パイロットで、機長になるには副操縦士として 15年程度の経験が必要ですが、その上団塊の世代の機長 クラスが毎年百人近く退職するのと重なり、現在のように子会社で働くのではなく、会社自体で働く パイロットの定年を、六十五才まで延長するなどの対策が必要になります。
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