当たるも八卦 ( はっけ )
昨日の那覇空港における中華航空の炎上事故について、金野内蔵氏に聞いてみました。
[1:事故の原因はなんだと思いますか?。]
事故発生から 24時間も経たないうちに原因を推測するのは、「 占い師 」 しかしないことですが、占いの結果は右 エンジンの燃料系統で ポンプの電気回路と出ました。ジェットエンジンを スタートする場合には、最初に スターターからの高圧空気で エンジンを回しますが、回転が10~15 パーセントまで上がったところで、「 燃料、点火スイッチ 」 ( Fuel & Ignition Switch ) を ON にします。
すると燃料 ポンプから燃料が燃焼室に送り込まれると同時に、火花で点火されて燃料が燃焼を始め エンジンが自力で回転します。目的地へ到着後に エンジンを止める場合は、前述の 「 燃料、点火スイッチ 」 を OFF にすれば点火も止み、燃料も止まります。
もしここで エンジンが消火したのに、燃料の流れが止まらなかったら どうなりますか?。金野氏は燃料漏れの痕跡が滑走路や誘導路になく、駐機後に右 エンジンから黒煙が上がり、燃料が漏れて、最初に火災が発生した点に注目しました。
[2:煙の色 ]
プロペラ機の時代に習いましたが、白い煙は オイル( 潤滑油 )が燃える色、黒いのは燃料であると---。ジェット機の燃料は家庭用灯油 ストーブの灯油と殆ど同じ性質です。家庭用 ストーブの点火、消火の際に黒い煙が出るように、一度消火した燃料が エンジンの余熱で再度引火したので、最初に黒煙が上がった。つまり燃料系統の故障とみるのが、占いの結果でした。
その場合でも エンジン火災の操作に従い、Fuel Shut off Valve ( 燃料ストップ弁 ) を作動させれば、エンジンへの燃料供給を絶ち、燃料漏れを止めることができたかもしれませんが、下司 ( げす ) の後知恵かも知れません。
[3:緊急脱出 ]
四箇所にある緊急脱出用の スライド ( 滑り台 )が全て使用できたので幸運でしたが、緊急時に スライドが膨らまない場合もありました。平成17年8月4日に カナダの トロンドで起きた エア・フランス機の着陸事故では、八箇所の緊急脱出口のうち、使用されたのは僅か四箇所で、二箇所の スライドは膨らみませんでした。中華航空機には翼の上にある客室の窓を内側に外し、翼の上に出て脱出する経路もありましたが、エンジン附近の火災のため、それはできませんでした。
[4:脱出の九十秒 ルール ]
飛行機の非常用脱出口の数については、アメリカの連邦航空規則 ( FAR ) には 「九十秒ルール」 の規定がありますが、それについては私のホームページ
http://homepage3.nifty.com/yoshihito/jumon.htm#hijou-guchi
に詳しく述べていますので、参考にしてください。
[5:中華航空の安全性 ]
以前にも述べましたが、1970年 ( 昭和45年 ) 以降の航空事故統計によれば、中華航空( China Airlines ) は アジア・オーストラリア地域の航空会社で死亡事故率が最も高く、その値は全日空の三十二倍も危険であり、乗るべきではない 、乗ってはならない最悪の航空会社だということです。
外国の飛行機に乗る前に、どこの航空会社が危険か?。あるいは安全か?。
私のホームページ
http://homepage3.nifty.com/yoshihito/jumon.htm#anzen
をお読み下さい。
なお会社のOBの友人二人が別々のテレビに出て、事故の解説をしていましたが、互いに年をとったなあと感じました。
コメント
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当る占いだと思います。ご宣託ありがとうございます。
エンジン停止で燃料が止まらない・・・最低な話です。インターロックはないのか?配管破断したようなこともないのだろうし???
さて、今回、整備士が、マイクのジャックを突っ込んで有線で機長に報告したとの報道がありました。飛行機にマイクジャックあるのか??と思いました。観光バスには後方にマイクがついてます。オーライオーライが聞こえるようにです(最近使わないかな?)
不謹慎ですが、バーナーであぶって火を出す装置を思い出しました。トーチランプですね。
http://www18.ocn.ne.jp/~dkumiai/k43.jpg
こんなのです。
下からあぶって、奥から圧力かけて火を出します。
投稿: あすか | 2007年8月21日 (火) 14時04分
大変参考になりました。
NTSBのベテラン調査員2名が来たそうなので、おそらく、ほぼ100%明らかになると思っていますが・・・
燃料タンクの中を配線が通っていた大事故などとは、性格が異なるようですが、それにしても改めて航空機事故の恐ろしさを再認識しました。
投稿: Y.S | 2007年8月21日 (火) 14時42分
占い師の占いは、一般に当たらないものですが、今回もそのたぐいですかな?。これまでスポットに到着してからエンジン附近から出火した事故など、聞いたことがありませんでした。
毎年一度必ず受ける緊急訓練の際には、モックアップ ( 模造 ) の機体から数え切れないほど、スライド ( 滑り台 ) を使い脱出しましたが、実際の脱出の映像を見たのは、今回が初めてでした。
ところで飛行機の機首の下部には インターフォン の マイク・ジャックがあり、ゲートから牽引車で機体を プッシュ・バック ( Push back ) する時や、エンジンスタートの際には、地上の整備士とパイロットは必ず有線で連絡をとります。到着時も同様です。
投稿: Y.O. | 2007年8月21日 (火) 20時09分
インターフォンで緊急脱出の指示または要請をした整備士は普通どこの所属でしょうか?
年齢も、あの炎天下で作業するくらいなので、若い人ではないかと想像するのですが、咄嗟に連絡など適切な行動がとれるものですか?
それなりの訓練を受けているのでしょうか?
投稿: Y.S | 2007年8月22日 (水) 12時06分
整備士の所属に関して二つの場合が考えられます。その一は、中華航空が台湾から派遣した関空駐在の整備士であり、二つ目には、地元の全日空なり、日本航空なりに、グラウンド・ハンドリング ( Ground Handling 、地上業務 つまり搭乗手続き、案内、航空券の発券、手荷物搭載、取り下ろし、食事や飲料水の搭載、機内清掃 )を委託しますが、その委託契約の中で、一等整備士による飛行間点検などの整備確認業務を依頼した場合です。
一番最後の写真を見て下さい。右側で乗客の脱出の手助けをしている係員は、交通整理のガードマンのような夜光 タスキ を着用していますが、これは伊丹空港と同じで、全日空の整備士か子会社で地上業務をする者の 「 シルシ 」 です。一方左側で消火器で消火作業をしている人が見えますが、彼は作業服を着ていません。
全日空では整備士は、作業中は必ず作業服を着ます。そこで想像ですが、整備士は中華航空の社員 ( 多分消火作業中の男 ) だと思います。
整備士の訓練については存じませんが、セスナ機などを扱う 三等整備士とは異なり、大型 ジェット機を扱う 一等整備士の資格を取るためには、それなりの学歴と実務経験が必要なので、緊急事態の対処方法に関しては日頃から身につけていると思います。だからこそ乗客の、 スライド脱出の援助にも当たりました。
投稿: Y.O. | 2007年8月22日 (水) 14時51分