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2007年8月26日 (日)

機内の煙で死亡

飛行機火災の恐ろしさは中華航空機の テレビ映像で何度も見せられましたが、その昔 機内の火災により、乗客乗員が着陸後に機内で全員死亡する事故がありました。

Saudiair 昭和55年 (1980年) 8月19日の午後10時頃、パキスタンの カラチ発、サウジアラビアの首都  リヤド ( Riyadh ) 経由、同国第二の都市  ジッダ ( Jiddah )行きの サウジアラビア航空の  トライスター機が、機内で火災発生した為に、リヤド空港に緊急着陸しました。

経由地の リヤド空港を離陸してから 四分後に後部貨物室内の煙を探知する警報が鳴ったので、機長は リヤドに引き返すことに決めました。その決断までに四分の時間を費やしましたが、無事に着陸しました。後は滑走路上で速やかに機体を停止させ、煙が立ち込めた機内から乗客を緊急脱出させるべきでした。ところが機長は何を血迷ったのか通常の方法に従い滑走路上を 三分間も走行し、誘導路に出てからようやく機体を停止させました。

更に信じられないことに機体停止後も エンジンを 三分以上も回し続けたために、その間 は機内からの乗客の緊急脱出ができませんでした。なぜなら エンジンの前方に脱出すれば エンジンに吸い込まれる危険があり、後方では エンジンからの排気 ガスのため、脱出用 スライド ( 滑り台 ) が吹き飛ばされるからでした。

さらに悪いことには空港に勤務していた レスキュー消防隊員が救助に出動したものの、知識、経験不足から旅客機の入り口  ドア を外部から開ける方法を知らず、事故機の ドアが開けられたのは、エンジン停止から実に 二十三分後のことでした。

事故の直接原因は離陸直後に起きた機内の火災であったとしても、緊急時に慌てふためき乗客の生命安全を守る為に何をなすべきかを知らなかった機長の無知無能さ、副操縦士の未熟さ、緊急時に マニュアル を機内でめくりながら  「 ノー・プロブレム 、( No Problem 、問題ない ) 」 を繰り返すだけで、機長への アドバイスを何もしなかった  「 失語症 ? 」 の航空機関士の無責任さが、301人全員死亡という被害の拡大をもたらした最大の原因でした。

Yaketakitai レスキュー隊員が機内で見たものは、乗客全員が機体の前方付近で折り重なっていた死体でしたが、この事故で乗客 287名と、乗員 14名の合計 301名の全員が死亡しましたが、死因は煙に含まれる有毒 ガスによる中毒と全身の火傷でした。

私もその頃 同型機、トライスターの機長をしていたのでこの事故には関心がありましたが、ガルフ ( Persian Gulf 、 ペルシャ湾岸 ) 航空で以前勤務したことがある、会社の外人航空機関士から、その当時に 話を聞きました。

Isuramu1 それによれば、パキスタン と ジッダ ( Jiddah )を結ぶ路線は、 ジッダ郊外に イスラム教の聖地 メッカ ( Mecca ) があるため、イスラム教徒にとっては 「 宗教上の義務 」 である、 一生に一度の聖地巡礼の旅行者 が多い路線でした。彼等は自炊をする為に 携帯用の ガソリン ( 又は石油 ) ストーブを携行し、空港 ロビーや  「 機内でも 」 お茶を沸かすなど、危険な ストーブを使用する者が絶えなかったそうです。一時はそれが原因とする説もありました。

写真は  メッカ にある イスラム教最高の聖地、 カーバ 神殿 ( The Ka'abah 、黒い四角形の建物 ) で、巡礼者はこの周囲を左回りに七回まわるのだそうです。

毎年受ける緊急訓練の際に聞いた講義によると、化学繊維の燃焼による煙に含まれる有毒 ガス ( 一酸化炭素などを含む ) については、 密閉された客室内で発生した場合には高濃度になり易く、四~五回煙を吸っただけで体の自由が利かなくなり、意識はあるものの身動きができなくなり、やがて急速に意識が失われて死に至るのだそうです。

Kakei ところで話が脇き道にそれますが、江戸時代に火刑に処せられる罪人に対して、体を包むようにして カヤ の束を積み重ねますが、火刑に従事する非人が受刑者に対して 「 点火後は煙が出るのでそれを吸えば、身体が熱くなる前に楽に死ねるから 」 、と教えていたそうです。

次回のブログ更新は少し遅れますが、あの世に行ったわけではなく、8月末から旅行をするためです。

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