夜行高速バスよりも
平成十九年二月十八日のこと大阪・吹田市の中央環状線で スキー・ツアー客を乗せた大型 バスが、道路脇の モノレールの支柱に激突し、アルバイトの添乗員の少年 ( 十六才 ) が死亡。運転手と乗客二名が重傷、二十三名の乗客が軽傷を負った事故のことをまだ覚えてる人が多いと思います。
旅行社との契約では交代運転手を含めて運転手を二名用意するはずでしたが、その手当ができずに一人で長野県の スキー場から ナンバ まで 五百 キロの距離を運転中に、疲労から居眠りをしたのが原因でした。
その昔、東京から大阪へ帰る際に、当時、東京駅二十一時発の大阪行き新幹線 「 ひかり 」 の最終列車に乗り遅れたため、東京駅の八重洲口から出る大阪行きの夜行 バス、 ドリーム号に乗って帰ったことがありました。東京=大阪間を 八時間かかりましたが、交代の運転手が乗務し、概ね二時間~三時間おきに サービス・エリアで運転を交代して、疲労を防ぐことにより安全運転を確保していました。
ところで長距離の国際線を飛ぶ、パイロットの場合はどうなのかご存じですか?。
ボーイング 777型機のように、パイロット二名で飛行する場合で、飛行時間が八時間を超える コースを飛ぶ場合には、機長資格を持つ パイロット二名と副操縦士一名の合計三人の パイロットが乗務しました。つまり飛行時間の約 三分の一 ずつを交代で仮眠をとりながら飛行するのです。どこで仮眠するのかといえば操縦室に隣接する クルー・バンク ( Crew Bunk、乗員のベッド ) で休みますが、もちろん ホット・ベッドです。
ホット ・ ベッド の 意味が分からない人は、下記をクリック
http://good-old-days.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/post_3e21.html
上の 写真 は ボーイング 777 型機の操縦席。
ところが平成4年 (1992年) 1 2 月に、現国土交通省の航空局技術部長が、「 定期航空運送事業者の行う国際運航に従事する航空機乗組員の、連続 2 4 時間以内の乗務時間制限及び編成に関する基準 」 という長い名前の通達を出して、「 国際線の場合 パイロットが交代要員無しの、2 名編成で飛べる乗務時 」 をそれまでの 八時間以内から、驚いたことに 十二時間以内までに延長しました。
分かり易くいえば前述のように飛行機は機長と副操縦士の 2 名で飛びますが、交代 パイロット が無いまま、換言すれば休憩させずに、徹夜の飛行を 1 2 時間させても良いことになりま した。
これを夜間の高速 バス に例えれば、運転時間が 1 2 時間以内であれば、交代運転手は不要ということになりますが、過労防止、安全性確保の点からも、航空局は気が狂ったとしか思えない通達です。写真は ボーイング 777 型機。
航空会社側もさすがに 1 2 時間無休の飛行は無理と考えたのでしょうか、成田 サンフランシスコ線 ( 5,131 マイル=9,500 キロメートル ) など 1 1 時間以内 の コースについては交代要員無 しと しま したが、その結果 徹夜の飛行で疲労 したパイロットが、眠い眼をこすりながら操縦することになりました。
国土交通省は交代運転手を乗せて 8 時間で走る、東京 = 大阪間の夜行高速バ ス の運転よりも、3 5 0 人 の乗客を乗せて 1 1 時間飛ぶ国際線の操縦の方が 神経を使わず、肉体的にも楽な仕事だと思っているので しょうか?。写真は JR バス。