格安航空会社 ( L C C )
タイ南部 プーケット島の国際空港で九月十六日午後四時 ( 日本時間同六時 )ごろ、タイの格安航空会社 ( L C C 、Low Cost Carrier ) の ワン・ツー・ゴー [ One・Two・GO ] 航空が運航する バンコク発 プーケット ( Phuket ) 行き旅客機 M D-82が着陸に失敗し、大破して炎上しました。乗客乗員合わせて百三十人のうち、最新の情報では 七割に当たる 九十一人が死亡しました。プーケット空港の滑走路は長さ三千メートルで M D-82ジェット機にとっても十分な長さであり、勾配は無く、標高5.7メートルでしたが、事故機は反対側 ( 滑走路09 ) から降りて来て、多分手前の林の中へ突っ込んだものと思われます。
東南 アジアには格安料金で運航する危険な航空会社が数多くありますが、事故を起こした One・Two・GO 航空もそのうちのひとつでした。 バンコクに スワンナプーム ( Suvarnabhumi 、黄金の土地 ) 新空港が去年九月に完成するまで国際空港でした、 ドン・ムアン ( Don Muang ) から、 タイ国内の八箇所の空港へ、どこでも 1,750 THB ( タイ・バーツ )、( 約6,300円 ) の均一料金で客を運んでいました。写真は同型機の M D-82。
機内での飲み物や スナックの サービスは無料、購入した航空券の行き先、搭乗日時、便の変更も無料で、しかも座席は チェックイン時に指定するので、他の安売り会社の飛行機のように、搭乗の際に良い席を取る為に搭乗 ゲートから飛行機まで走る必要がないということでした。バンコック ( ドン・ムアン ) と プーケット国際空港 間は、一日五便を運航する会社で、就航便数もそれなりでした。
One・Two・GO 航空は平成十二年 ( 2000年 ) に設立された会社ですが、他の格安航空会社と同様に、整備を含む安全面での問題に疑問を指摘されています。国内線だけでなく ホンコン線も一日一往復運航していますが、運航母体 ( 親会社 ) は日本にも チャーター便でやって来る評判の悪い オリエント・タイ航空です。機体の塗装は子会社の [ One Two GO ] 仕様です。
平成十八年三月のこと、韓国の建設・運輸省が韓国に チャーター便として飛来する オリエント・タイ航空を含む 三つの L C C ( 格安航空会社 ) に対して、十八の規則違反を指摘し、その頻繁な運航遅延や標準以下の安全対策に関して警告を発しました。
それによると韓国の インチョン ( 仁川、ソウル郊外 ) から バンコック、プーケット間を運航する オリエント・タイ航空は、運航、安全 マニュアルが最新のものに更新されてなく、機内の複数の消火器や複数の酸素 タンクが使用可能な状態では無かったと、コリア・タイムズが伝えました。
平成十六年十月のこと、日本に チャーター便としてやってきた 同社の ボーイング747-200 ( 旧型機 ) が、羽田空港の滑走路 16 へ目視による周回進入をする際に、大きく コースを逸れて、東京 タワーに 200 メートルの距離まで接近し、東京駅や日本橋地域の上空を高度 540 メートルで飛行する出来事があり、国土交通省から事情聴取されましたが、機長が羽田への周回進入方式に慣れていなかった ( 知らなかった ? )
のが原因でした。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/12/121027_3/05.pdf
今回の [ One ・Two・ GO ] 航空機による 事故の原因は、降雨の悪天候時に ウインドシア(風 向風速の急変 ) に遭遇し、パイロットは着陸を中止しようとしたが、高度が低すぎたとの説もあります。
以前の ブログで述べましたが、降雨、悪天候時の オーバーランと聞けば、パイロットであれば ウインド・シア ( wind sheer ) か、ハイドロ・プレイン ( Hydro-Plane ) 現象をまず疑いますが、以下を参考にして下さい。
http://good-old-days.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/wet_runway_8b3b.html
格安航空会社については例外もありますが、その大部分は L C C ( Low Cost Carrier ) の名前通りに低 コストを主目的にして、他社が使い古した機体を安く仕入れ、機体の整備費用も節約し、整備士や乗員の訓練には カネを掛けず、安い給料で パイロットを雇うので、飛行時間が少ない未熟な パイロットが転職に有利なように、パイロットの勲章である飛行時間稼ぎの為に応募し、乗務するともいわれています。
しかも事故に備える乗客保険 ( 搭乗者保険 ) についても保険料を節約するので、乗客の遺族に支払う補償金も、かなり少ないことが予想されます。
以上のことから チャーター便を含む格安航空会社の利用には、 安いものには、それなりの理由、つまり危険がある という 万国共通の法則 を思い出し、くれぐれもご用心を。
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コメント
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安くする為に・・・・・・行うことの全てがなされていますよね。
本来は立派なことなんです。
他の業界だって安くするためにどんな手段だって使って居ます。
ただ、事・・安全・・としては非常に恐ろしく感じます。
正しい対価とは難しいことで、一体いくらが正しいのか・・・・・・?
実は安さの限りを尽くしておきながら(原価を下げて)一般よりちょっと安くするだけだとすると、一所懸命コストを掛けてるからこの価格なんだろう・・・・と
客は思い、安物航空会社はぼろ儲けできるかも知れない。
ちうごく製野菜を国産と偽って高収益を得ていたスーパーがありましたモンね(笑)
投稿: へるまん | 2007年9月21日 (金) 13時09分
経費節減と安全性確保とは 「 二律背反 」 の難しい問題ですが、格安航空会社に限らず、古い機体をろくな整備もせず運航する航空会社が、アジア、アフリカにはかなりあります。
そういう危険な航空会社の飛行機を、乗り入れ禁止にしている国がヨーロッパにあります。
投稿: Y.O. | 2007年9月21日 (金) 21時26分