NOVA と カンタロー
英会話学校最大手の NOVA が数百億円の負債を抱え経営に行き詰まり、十月二十六日に会社更生法を大阪地裁に申請して保全命令を受けたため、全国の英会話教室が休校となりました。
ところで十数年前のこと、縄文航空の副操縦士でした 鋭悟 学 ( えいご・まなぶ ) 氏は、そろそろ国際線に乗務する順番が近づいたことだし、自分自身でも自己啓発の必要性を感じていたため、あるとき NOVA に駅前留学をする決心をしました。自分の都合がよい時間帯に受講の予約をして、英会話の レッスンをうけるのですが、受講 チケットの単価を安くするために、六十万円ほどを前払いしました。
JR 駅前にある ビルの三階が英会話教室でしたが、英会話の レベル・チェック を受けてから、 カラオケ・ボックスのような小部屋で若い女性、大学生たちと一緒に授業を受けました。しかし先生も生徒も毎回のように変わり、まじめに通ったのは二ヶ月ほどで、そのうちに同じ ビルの 四階にある マージャン・クラブに、興味を引かれたため、奥さんには NOVA に行くことにして、もっぱら マージャン・クラブに通うようになりました。
夏休みになると子供を連れて アメリカ旅行に行きましたが、レストランで食事した際に、近くの テーブルの人が食後の デザートに メロン を食べているのを見た子供が、メロン を食べたいと言い出しました。奥さんも食べたいというので 鋭悟 学 ( えいご・まなぶ ) 氏はやむなくそれを注文することになりました。日本人の苦手な メロン ( Melon ) の 「 エル 」 の発音に注意しながら、ウエイトレスに メロン を注文しました。
ところが彼女が持ってきたのは、なんと ミルク でした。子供や奥さんからは メロン をせがまれたので再度 メロン を注文したところ、ウエイトレスはまたも ミルク を持ってきたではありませんか。たまりかねた子供が エチケット に反して近くの テーブルの人の メロンを指差したので、ウエイトレスはようやく注文の意味を悟り、「 ペラペラペラ○×▲ カンタロー 」といいました。
子供が 「 カンタロー だってー 」 といったので、ウエイトレスは カンタローの オーダーを受けたと判断して、ようやく スライスした カンタロー の メロン を持ってきたので一件落着しました。
しかし NOVA で半年以上も英語会話を学んだはずの 鋭悟 ( えいご ) 氏は、妻子の前で英会話力の不足を露呈しましたが、注文に失敗した報いで冷たい ミルク を 二杯も飲んだ結果、その晩にはお腹をこわしました。奥さんからは 六十万円もかけて NOVA で半年以上も英会話を習っていたはずなのに、メロンの オーダーもできなかったことを問いつめられた結果、マージャン・クラブ通いの件を白状する羽目になりました。
アメリカで メロン といえば マスクメロン ( Muskmelon ) の一種で、果肉が オレンジ色をした キャンタロープ ( Cantaloupe ) と、普通の色をした ハニーデュー ( Honey Dew ) が一般的ですが、スイカは文字どおり ウオター・メロンといいます。
ところで カンタローといえば 私と同世代の人ならば、戦時中に流行った 「 勘太郎月夜唄 」 の歌詞を思い出しますが、最近では 「 天童よしみ 」 が リバイバルでこのを歌っています。