蜂が原因
九月二十日に台北から佐賀空港に到着した中華航空の ボーイング737-800型機が、直後の飛行間点検の際に、胴体に長い亀裂があるのが発見されて運航中止となり、佐賀空港で修理することになりました。
機体の応急修理を終えて、十月五日午後に台北へ向けて離陸滑走したところ、飛行機がなかなか浮上せずに、滑走路末端から六十 メートル先にある過走帯 ( オーバーラン ) 灯を壊してようやく離陸しました。十月九日になって故障原因は速度情報を得る ピトー管の孔に虫が詰まっていたために、速度計が狂ったとのことで、修理のうえ十一日にようやく台湾に向けて飛び立ちました。
金野氏はそれを聞いて同様な故障を経験したことを思い出しましたが、昭和四十年代中頃のこと、伊丹空港の南側に隣接して新明和工業という飛行機整備会社がありました。この会社の前身は航空機 メーカーの老舗 ( しにせ ) の川西航空機で、戦時中には世界的にも トップ・クラスの性能を持つ、二式大艇 ( にしきたいてい ) という四発大型の飛行艇を製作したことでも知られていました。
縄文航空では双発の ターボプロップ機、F-27 ( フレンドシップ ) の オーバーホールを新明和工業に外注していましたが、ある時金野氏は整備が完了した飛行機の、テスト飛行をすることになりました。機長、副操縦士、それに縄文航空、新明和の整備関係者五~六人が乗り伊丹空港を離陸しました。
離陸滑走中に V1, V2 の速度 ( 注参照 ) を通過する時から、速度計の異常に気が付きましたが、1,200 メートルの短い滑走路での離着陸が可能な F-27 ( フレンドシップ ) にとって、伊丹空港の A 滑走路 ( 1,800 メートル ) は十分過ぎる長さでしたので、離陸を続行しました。
注:) V1、 V2、について知りたい人は下記をクリック
http://homepage3.nifty.com/yoshihito/jumon.htm#buriifu
異常とは機長席と副操縦士席の速度計の指示が、三十 ノット ( 秒速十五 メートル )も差があることでした。この場合どちらの速度計が正しいのか、空中で確かめる方法が一つだけありましたが、それは機体を失速状態にさせて、その時の速度計の読みを、予め飛行機の性能表から機体の重量、飛行高度から求めた失速速度の値と比較することでした。
安全の為に一万 フィート ( 三千三百 メートル ) まで上昇し、失速速度まで徐々に減速しながら、主翼の表面を流れる気流が剥離して、機体が ガタガタと バフェット ( Buffet 、揺れる ) するのを待ちました。 その結果から機長席の速度計に不具合があることが判明しましたが、それ以後は副操縦士側のピトー管に切り替えてテスト飛行を続けました。
着陸後調べたところ機長側の ピトー管に静圧 ( Static Pressure ) を供給する直径 六 ミリ程度の小さい孔 ( 静圧口、Static Port ) に、蜂が タマゴを産みつけていたのを発見しそれが故障の原因でした。 現代科学の粋を尽くした飛行機も蜂などの虫により、思わぬ故障を引き起こしたのでした。
絵図の ピトー管では、ピトー圧を検知する先端部と静圧口が一体化されていますが、F-27の機体ではこの構造ではなく、静圧口は機首の両側側面にありました。 小型機などでは長時間の駐機中は、ピトー管に カバーを被せてあるのを見ますが、大型機では位置が高いので見たことはありませんでした。
コメント
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蜂ですか・・・・・あり得るかも知れませんね。
でも、そんなこともあろうかとピトー管は複数あるんですよね? 或いは微妙なモノなんでしょうね(笑)
投稿: へるまん | 2007年10月23日 (火) 09時37分
ピトー管は複数ありましたが、静圧口は機長と副操縦士側に一つずつでした。
投稿: Y.O. | 2007年10月24日 (水) 10時03分