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2007年12月22日 (土)

患者輸送 (その1)

Oshimu サッカー日本代表の監督をしていた イビチャ・オシム ( 66 ) 氏が、11月16日に千葉県内の自宅で急性脳こうそくで倒れ、同県浦安市の順天堂大浦安病院の脳神経内科・脳神経外科に緊急入院しました。集中治療室  ( ICU ) で治療を受けていましたが、12月5日に意識が回復したとのことでした。しかし歩けるような状態ではありません。

この例に限らず国内旅行中に発病したり事故に遭うなどして、寝たきりの状態のままで、旅先から帰宅せざるを得ない場合があります。

Daitaikotsu 金野氏から聞いた話によれば、ある年の二月に大阪から札幌の雪祭りを見物に行った七十才台の男性が雪道で滑って転倒し、大腿骨 ( だいたいこつ ) 骨折の重傷を負いました。
この ケガは高齢者が転倒した際に多く発生するそうですが、骨を接合する為には専用の チタン製の金具を埋め込んで、ネジ ( スクリュー ) で固定し、さらに ギブスを股の付け根から  「 くるぶし 」 までするそうです。となると歩行はもちろん、排尿などもままなりません。上はレントゲン写真。

Kanjiki 慣れない雪道を底が平らな皮靴で歩いて滑ったのが原因でしたが、そういう事故が雪国以外から来た観光客に多いので、冬になると札幌空港の売店には靴に ゴム・バンド で着脱可能な 「 滑り止め 」 を売っていました。

金野氏が一昨日、大阪-東京間を所用で日帰りした際に見た機内の カタログ誌に、同じような種類で スノウ & アイス・ウォーカーという名前の  「 滑り止め 」  商品の広告写真がありました。

ところで骨折患者は状態が安定した 二週間後に札幌空港から直行便で大阪伊丹空港に帰ることになりましたが、旅客機の客席には ストレッチャー( Stretcher、 簡易 ベッド )を装備することが可能になっています。窓側にある座席 前後 三列を平に寝かせてその上に専用金具を組み立てて キャンバス製の ストレッチャーを、固定するのです。その為には窓側から横に並んで三席ある座席も使用できなくなるので、当然その分を含めて最大で 九人分の運賃を支払う必要があります。

つまり札幌-大阪伊丹間の片道料金 35,000円 掛ける九名= 315,000円 であり、そのうえ病院から札幌空港までと、伊丹空港から病院までの民間救急車の費用も必要ですが、その費用は葬儀の霊柩車 ( れいきゅうしゃ ) 並みに高額です。救急車で駐機場に入り、飛行機に乗る際には通常 機内食、飲み物、サービス用品の搭載に使用する機体最前方右側の ドア ( R-1、ドア ) から機内に入りますが、 ハイ・リフト・トラックで  ストレッチャーごと、 三 メートル以上の高さまで持ち上げます。

さらに駐機場は立ち入り制限区域なので、緊急時以外は空港事務所へ事前申請の手続きが必要になります。

雪道での転倒による ケガだけでなく、冬は本州から パウダー・スノウ  を求めて滑りに来る スキーヤー、スノウ・ボーダーの骨折、衝突によるケガも多く、ストレッチャーによる患者輸送の機会が増えます。旅先で骨折などの ケガをすると輸送費を含めて、 なにかと 「 もの入り 」 です。

Stretcher1 英語の ストレッチャー ( Stretcher ) とは患者を運ぶ担架  ( たんか ) のことですが、座席に設置した ストレッチャーも担架のようなものであり、寝心地が良い ベッドではありません。前述のごとく 金属製の パイプ に キャンバスを張っただけなので、患者の肌にはキャンバス布地が当たります。そこで毛布、シーツなどを一枚下に敷いて患者を寝かせます。

フトン代わりに上にも毛布を一枚掛けますが、担架 ( たんか ) には枕など無いので機内の膝掛け毛布を畳んで代用にします。写真では頭の部分を高くしてありますが、完全水平にもなります。

これで ベッド は出来上がりですが、周囲の乗客からの好奇の視線を遮るために周囲に カーテンを張ります。九人分の座席には狭いながらも座れるスペースができるので、付き添いの家族や、重病人の場合には看護師、医師が添乗する場合があります。

では遠く海外から日本へ、あるいは日本から海外に、寝たきり状態の患者を運ぶにはどうするのでしょうか?。( 続く )

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コメント

あけましておめでとうございます。
脳神経外科手術といえば、12月14日に、かぼちゃ女房が脳動脈瘤のクリッピング手術を受け28日に無事退院しました。
BMIも標準上限ギリギリになるおまけつきです。
木原美光知子さんの例やセカンドオピニオンで決断したのですが、手術の模様をライブ映像で見ることができまさに驚愕しました。
周辺ハイテク技術はともかく、最終的には偏差値もIQもおそらくあまり関係無い手先の器用さのみが強く印象に残りました。

おめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
ところで奥様がクリッピング手術をされたとは大変でしたね。脳 ドックで動脈瘤が分かったのでしょうか?。私などこれまで一度も、脳動脈の検査を受けていませんが、今年あたり受けてみたくなりました。

金野様 に お聞きします。死体(棺おけ)を
飛行機で 外国から日本に送る場合は
貨物輸送ですか? 国内では それなりの
書類が必要です。運送事業者です(寝台車)
個人で配送すると ”死体遺棄罪”に問われる
可能性あり!

遺体の空輸はすべて貨物用 コンテナーに入れて貨物専用機で、もしくは旅客機の場合には客室の床下にある コンテナー・スペース に入れて運びます。

外国から、もしくは外国へ遺体を運ぶ場合には、殆どの国では エンバーミングを実施した証明書を要求します。

エンバーミングについて知りたい人は、私の ホームページにある随筆集の 2番の項目に、「 エンバーミングについて 」 があります。

飛行機で遺体を運ぶ場合には、専門の業者に手続きを依頼しますが、成田から フィリピンの マニラに運ぶと エンバーミング代 21万円を含めて、約 114 万円かかると言われています。

なお日本国内で遺体を運ぶ際には、医師の死亡診断書があれば、自家用の車でも運ぶことは可能です。

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