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2008年3月 1日 (土)

新千歳空港(その2)

Shinchitosetower_2 風雪による悪天候で視界500 メートルの状態では、滑走路 1R の南端にいた飛行機の姿は、管制塔からは多分肉眼では見えなかったはずです。

前回の ブログで述べた テネリフェ 空港における、航空史上最悪の事故の教訓から生まれた事故防止策によれば、管制指示 ( Clear for take off 、Clear to land 、Taxi into position 、 hold short of runway、etc.---) を パイロットは 「 必ず復唱する 」、 復唱しない パイロットに対して管制官は 「 復唱させる 」 ことでした。

ところが今回問題となった、 ラジャー ( Roger、了解 ) だけしか言わなかった日航 502便の パイロットに対して、管制官は当然  「 復唱させ 」 管制指示の 「 確認 」 をすべきでしたが、彼はしませんでした。

I  say again, Japan Air 502 ,stand by  ( または、expect ) immediate take off , acknowledge.  ( もう一度言うが、日航502便は、速やかな離陸を準備 ( 予想 ) せよ、アクナレッジ ) と彼は言うべきでした。

Acknowledge とは アメリカの、 Glossary for Pilots and Air Traffic Service Personnel ( パイロット及び航空管制業務に従事する人のための用語集 ) によれば、

Let me know that you have received and understood this message. ( あなたがこのメッセージを受信し、了解したことを知らせよ )という意味の航空用語です。

[ 除氷、防氷の問題 ]

航空・鐵道事故調査委会の調査官の質問に答えた機長は、出発直前に散布した防氷液の効果が失われるのを気にして、早く離陸したい気持ちがあったため、管制指示の一部 ( Stand by 、もしくは Expect ) を聞き逃したと述べました。

つまり早く帰宅したい気持ちがあったので、車を運転中に交差点で赤信号を見落としたというのと同じでした。しかも操縦室には機長 (58才)、交信担当の見習副操縦士 (27才)、正規の副操縦士 (32才) がいたのに---。誰も自分達のミスに気が付きませんでした。

Icecovered やや専門的になりますが、飛行機の機体にとって大敵である氷と雪につての説明をします。

除氷 ( De-Icing )とは機体の重要な表面 ( たとえば翼面 )、隙間、その他の開口部、ヒンジ ( Hinge、ちょうつがい ) などから、雪や、霜、雪と氷の混合物、氷などの付着物を取り除くことであり、

防氷 ( Anti-Icing )とは防氷液を事前に散布することにより上記の各部分への、雪や氷の付着や蓄積を防ぐことをいいます。

Deicing1 雪国の空港では降雪があれば、駐機中の機体に雪が積もります。通常の場合は 「 除氷、防氷をまとめて 」 一緒に 除氷液の  エチレン・グリコール ( Ethylene glycol )液をお湯に溶かした液体を、高圧にして機体に吹き付けて雪や氷を取り除きます。時には除氷後に、改めて防氷液を散布する場合もあります。

この作業時間は1回当たり時間にして 30分から 45分、費用は 50万円ほど掛かります。

この液にはやや毒性があるので環境上の問題から、最近では モノプロピレン・グリコール ( Nonopropylene glycol ) に変更するようになりました。

Americandeice 問題は防氷効果がどの程度継続するかですが、丁度車の エンジンの ラジエーター ( 放熱器 ) に使用する不凍液と同じで、濃度が濃い不凍液を使用すればより低温でも凍結しませんが、飛行機の翼に散布する防氷液の場合も濃い濃度であれば、降雪などにより液が薄められても防氷効果の持続時間が長く、薄い濃度の場合は短時間で効果が減少します。

降雪の程度により左右されますが、防氷の有効時間は翼への防氷液散布終了から一般に 30分以内とされます。ではなぜ翼の氷や雪を パイロットは恐れるのでしょうか?。墜落の危険が生じるからです。 ( 続く )

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コメント

こんにちは
先ほど、ニュース映像で、ドイツの空港へ強風下の旅客機の着陸シーンが流れていましたが凄かったです。
2度目に無事成功しました。

なお、以前HPで拝見した「広島原爆とサメ」関連のレンタルDVDを最近みましたが、これも改めて凄いものでした。

地獄の漂流4日間 インディアナポリス号の最期
http://posren.livedoor.com/detail-23558.html

私もその映像をみましたが、ルフトハンザの飛行機でしたね。殆どの飛行機の横風制限は滑走路が乾いている場合、真横の成分に換算して 30 ノット ( 秒速15 メートル )ですが、風が一定ではなく、風向、風速がかなり変化していたようなので、危険と判断して着陸復行 ( Landing Go-around ) したのは正解でした。----できればもう少し早い段階での判断が ベター でしたが。

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