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2008年3月 8日 (土)

新千歳空港 (その3)

飛行機の機体、特に 主翼、尾翼を除氷、防氷する必要性を説明する前に、まずは 流体力学 ( Fluid Dynamics )  の初歩の説明です。

[  A:野球の変化球は、なぜ曲がるのか ]

Maru5 野球で投手が投げる カーブ、スライダー、フォーク・ボールなどの変化球や、ゴルフで クラブを スイングする際の フック、スライスなど 意図的であろうとなかろうと、ボールに与えた回転が、その後の ボールの軌道に直接関係することをよくご存じのはずです。

1 : 図の回転する ボールの表面に接する空気は、 ボールと共に回転する動きをします

2 : ボールの表面にある B点では気流の流れに対して、 ボールと共に回転する空気の方向が逆になるため、抵抗となるので気流の流れが遅くなり、その場の圧力が高くなります。

3 : A点では逆に、気流の流れと ボールの回転により生じる空気の流れとが同じ方向のため、気流が スムーズに流れるので、流れる速度も速く、その場における空気の圧力も低くなります。

4 : つまり A点、B点では空気が流れる 速さの違い   から圧力に差が生じ、ボールには A点に向かう力が作用するので、その方向に曲がることになります。

5 : 要点は 「 同じ流線上で 」 、流体の速度が遅い所では圧力が高くなり、流速が速い所では圧力が低くなることです。 その昔、高校時代に物理の時間で習った  スイスの 物理学者  ベルヌ-イ  ( Bernoulli )  の定理 ( 法則 ) を思い出してください。

[ B:飛行機の翼では ]

Airp2 1 : 同じことが飛行機の主翼でも起きます。 C点は翼の前縁、D点は後縁ですが、飛行機が飛ぶのと同じ速度で C点、D点を空気が流れます。

2 : 問題は C点以後の空気が流れる経路で、 C点から翼の上面を流れる経路をみると、翼の下面に比べて上方に湾曲  ( カーブ )  しているために、流れる距離が長く、従って単位時間内に流れる空気の速度が下面よりも速くなります。

3 : これでお分かり頂けたと思いますが、 ベルヌーイの定理をもう 一度思い出してください。翼上面の空気の流れが翼の下面よりも速いということは、翼上面の圧力が低くなり、遅い流れの翼下面の圧力は高いということです。 その圧力差が揚力となって、飛行機が空中に浮揚します。

[ C:ようやく結論に到達  ]
Airfoil

1 : もし翼の上面に雪や氷が付着したまま離陸すると、空気の流れは翼面でどうなるのでしょうか?。

2 : 今まで説明したように、本来は翼面上をスムーズに流れる空気が、邪魔物により大きく妨げられるために、流れの速度が遅くなり、翼の上面に発生するはずの、十分な揚力 ( Lift ) が得られなくなります。 ここまで読むだけでも、アー ・ シンド !。

3 : その結果は言うまでもなく飛行機は浮揚できずに、離陸の直後に墜落する事態になります。だから機体、特に主翼などの除氷 ( 雪 )  防氷が必要なのです。

以前 ワシントン ・ ナショナル空港から離陸した飛行機が、直後に ポトマック川に墜落した事故が起きました。( 続く )

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