緊急脱出用、スライド ( 滑り台 )
写真のような事故はいつでも、どこでも起こり得るものですが、そのために飛行機の出発に際して全ての客室 ドアーが閉じられると、航空会社により多少文言が異なりますが、チーフパーサーは緊急事態に対処し乗客の安全を守るために、毎回次のような業務連絡を マイクで放送します。
キャビン・アテンダントは、ドア・セレクター・レバーを [ アームド、( 作動可能 ) ] の位置にしてください。
( Cabine attendannts move the door Mode Selector to ARMED )
この操作をすることにより 各 ドアの内側に収納されている 緊急脱出用 スライド ( 滑り台 ) を、機体出入り口の床面に [ 固定する ] ことになります。
緊急脱出をする際には 「 飛行機にある出入り口、非常口の半数を使用して、90 秒以内に全員が脱出可能でなければならない 」 と決められていますが、詳しくは下記をクリック。
http://homepage3.nifty.com/yoshihito/jumon.htm#hijou-guchi
そのために スチュワーデスは脱出用の スライドの操作方法に習熟していなければなりませんし、パイロットも スチュワーデスも毎年一回 の緊急訓練を受講して、緊急時に必要な知識を再確認すると共に、脱出用 スライドで脱出の訓練をします。下記の ビデオの連中も多分パイロットで、スライドによる脱出には慣れたものでした。
http://www.youtube.com/watch?v=1FrWM6RZw7k&feature=related
最後に滑り降りた者に対して、「 God bless You 、神の祝福あれ !」 と誰かが怒鳴っていました。
航空機 メーカーや機体の型式により ドアの操作方法に違いがありますが、アームド ( ARMED、作動可能 ) の状態で緊急時に ドア・レバーを [ 開く位置 ] に回すと、圧縮空気の圧力で ドアが開くと共に、脱出に使う スライド ( 滑り台 ) が自動的に 10秒以内に膨張し、機内からの脱出を容易にします。ドアに のぞき窓があるのは、不時着した場合に、機外に火災が無いことを確認してから開けるためです。
ところで もし キャビンアテンダントが 「 アームド ( ARMED ) 」 の位置にするのを忘れた場合には、緊急時に脱出する為に ドアを開けても スライドは膨らみません。高さ 3 メートルの 1階の床、6 メートルの 2階の床から、地上に飛び降りなければなりませんが、しかも下には先に飛び降りた人たちが、大勢骨折や ケガなどして 動けないでいる上にです。
それゆえ機内の全てのドアを閉じた後で、チーフパーサーが ドアの モードセレクターを 「 アームド、ARMED 」 位置にする指示は、 乗客の安全にかかわる極めて重要な事柄 なのです。ある時鶴丸航空の飛行機で、「 アームド、ARMED 」 にするのを忘れて飛行した実例がありましたが、緊急脱出の事態にならずに幸運でした。
同様にゲートに到着後には出発時とは逆に、ドアの モード・セレクターを 「 ARMED、作動可能 」 の位置から、今度は 「 ディスアームド ( DISARMED )、あるいはディタッチ(DETACH、切り離す) 」 に戻さなければなりませんが、もしこの操作を忘れた場合にはどうなるのでしょうか?。
緊急脱出の事態でも無いのに、ドアを開けると脱出用の スライドが膨らんでしまいます。以前外国の飛行機がこの失敗をして、ボーディング・ブリッジの内部に スライドが膨らんだ写真を見たことがありました。
私が知る限り縄文航空でもその昔、デスが長崎空港で操作を間違えて客室 ドア を開ける際に、脱出用の スライドを膨張させた例がありましたが、鶴丸航空でも今年になって関空で同じ ミス が起きました。その ドアはもはや緊急時に使用できませんので、満席であれば 40人程度の乗客を降ろすことになります。
http://hideshima-issei.air-nifty.com/blog/2008/03/jal_5fd1.html
スチュワーデスによる客室 ドアの誤操作により、北米だけでもこれまでに 2億 ドル ( 200億円 ) の損失を生じたために、音声 ( 警告音 )付きの装置が開発装備されました。下記の場合はドア操作を間違えると、
Door ARM Slide will Deploy ( ドアは アームされている。開くと スライドが膨張する ) の音声警告が出されます。
http://www.youtube.com/watch?v=kxe6JB7KsFg&NR=1
ところで以下は エアバス社が開発した、世界最大の旅客機 A-380 型機の型式証明を得るための緊急脱出実地試験の様子で、説明は フランス語ですが、90秒 ルールに適合するかどうかの重要な テストでした。規定どおり夜間におこなわれた 実地試験の ビデオを、私も初めて見ました。
結果は 873人の乗客・乗員の全員が33名の負傷者が出たものの、77.4秒で見事脱出に成功し 実地試験に合格しました。
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