不時着水、(その2)
太平洋上に 「 不時着水 」 した大型民間航空機は 50年以上無いと前回書きましたが、実はその間に太平洋に墜落したり、行方不明になった飛行機がありました。
[ パンアメリカン航空機の場合 ]
前回述べた パンアメリカン航空の デッチング ( 不時着水 ) 事故の翌年、昭和 32年 (1957年 )11月8日に、同じ パンアメリカン航空の同型機 ( B-377 ) のストラト ( Strato 、成層圏 ) ・クルーザー が 36名の乗客と 8名の乗組員を乗せて、 サンフランシスコから ハワイの ホノルルに向けて飛び立ちました。
飛行機は ノー・リターン・ポイント ( No Return Point 、長距離の洋上飛行をする際に、この地点を過ぎたらたとえ緊急事態が起きても、燃料消費上から 出発点には戻れないという地点を、予め計算しておく ) を通過した後に、遭難信号も出さずに行方不明になりました。
巡航高度の18,000 フィート ( 5,500 m ) で仮に 四つの エンジン全てが故障したとしても、洋上に不時着するまでに 10~15分は滑空できるので、その間に遭難信号は出せたはずでした。アメリカ海軍の航空母艦 「 Philippine Sea 」 を含む部隊が捜索した結果、19の遺体が回収されましたが、墜落原因は不明でした。
[ バリグ・ブラジル航空機の場合 ]
日本から遠く離れた ハワイと サンフッランシスコ の中間地点付近のことではなく、日本の近くでも起きました。倒産した為に今では存在しませんが、その昔 バリグ・ブラジル ( Varig Brazilian ) 航空という会社がありましたが、成田から ロサンゼルス経由で、ブラジルの リオ・デ・ジャネイロ ( Rio de Janeiro 、一月の川の意味 ) 行きの便を運航していました。
昭和 54年 ( 1979年 )のこと、貨物専用機の ボーイング 707-F 型機が成田空港から ロサンゼルスに向けて離陸しましたが、位置通報を 一度した以後は遭難信号も出さずに、日本付近の太平洋上で行方不明になりました。写真は他社のB-707型機です。
6名の乗組員も全員死亡したものと推定されましたが、落ちた場所も原因も不明で、洋上からは浮流物も発見されませんでした。
太平洋横断をする大型 ジェット機が、 無線電話で 「 メイデイ 」 ( 英語のMayday と同じ発音で、緊急事態における交信の際に前置する言葉、注:1参照 ) を出す余裕もなく、墜落する事態になりました。
考えられる原因とは機体の爆発や、 英国が開発した史上初の ジェット旅客機である コメット 機の連続墜落事故 ( 1953 ~ 1954年の間に 3件 ) のように、機体が空中分解でも起きた以外には考えられませんでした。
注 : 1 )
メイデイ ( Mayday ) の緊急符号は1923年に、イギリス人の モックフォードにより考案されました。当時彼は ロンドンの空の玄関 クロイドン ( Croydon 、注 : 2 参照 ) 空港で無線係りをしていましたが、緊急事態になった飛行機がその旨を、管制塔や他機の パイロットに容易に理解される言葉を 考えるように求められました。
当時の空の交通は クロイドンと パリの ル ・ ブールジェ 空港の間を飛ぶ便がほとんどでしたので、フランス語で 「 Come to help me 」 の意味を持つ メイデル 「 M'aider 」 を変形した 「メイデイ ( Mayday )」 をそれに当てることにしました。写真は当時の クロイドン空港。
実際に緊急状態になった飛行機が 「 メイデイ 」 を使用した交信例を見たい人は、下記を クリックしてください。 トムスン・フライの B-757 型機が離陸滑走中に右 エンジンに鳥を吸い込み ( Bird Strike )、 エンジン不調 ( Rough running ) になりながら上昇する際の様子です。
離陸後の管制塔との最初の交信では、規則どおりに 「 メイデイ 」 を 三回 いい、飛行機が緊急事態にあることを宣言し、その後滑走路 6R に着陸しました。
http://jp.youtube.com/watch?v=Jo7678gME0Y
注 : 2 )
ロンドンに新しい空の玄関の ヒースロー空港が、昭和34年 ( 1959年 ) に オープンしたのに伴い、クロイドン空港は閉鎖されました。
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コメント
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>>パンアメリカン航空の同型機 ( B-377 ) のストラト ( Strato 、成層圏 ) ・クルーザー
どちらも懐かしい名前ですね。
ブリキ製の玩具をよく見ましたが、名前からもB29から発展した旅客機とみてよいのでしょうか?
投稿: Y.S | 2008年5月24日 (土) 12時09分
そうだと思いますが、エンジンは全く異なりました。B-29 は Wright 社製の R-3350-23でしたが、B-377には Pratt & Whitney 社製のR-4360 エンジン が付いていました。
レシプロ ・ エンジン ( 往復機関 ) としては世界最高の出力でしたが、複雑なために故障が多く、56機しか売れませんでした。
ちなみに P2V-7 のエンジンは R-3350-32W であり、Wとは離陸時にシリンダーへ Water- I njection ( 水噴射 ) をして、温度上昇を抑え出力を高めていました。
3350 とは星型二列で合計 18 個ある シリンダー ( 気筒 ) の総容量が、3350 立方 インチという意味です。
投稿: Y.O. | 2008年5月24日 (土) 14時29分
こんばんは。横からいきなりウザいとは思いますが、ひとつ。
>>名前からもB29から発展した旅客機とみて
B29はスーパーフォートレスです。ストラトフォートレスはB52ですよ。
いや、失礼しました。では
投稿: 84 | 2009年7月 9日 (木) 01時41分