飛行機から落ちた国旗

前回は当時の皇太子ご夫妻が全日空機に搭乗されたことを書きましたが、 アメリカの軍隊や自衛隊では Ｖ Ｉ Ｐ （ Very Important Person ）  の  「 偉さの程度 」  を数字で表していて、偉い人を運ぶ際には飛行計画に　Ｖ Ｉ Ｐ コード （ Code ） を記入します。

Ｖ Ｉ Ｐ　コード ：　ワン 「 １ 」 といえば 天皇、皇族、外国の国家元首 であり、
コード ： ２　は首相、副大統領、衆参両院議長、最高裁長官、国連事務総長、各国の大使、閣僚、軍人では 海上 （ 陸上、航空 ） 幕僚長、元帥 （ ５つ星、ファイブ ・ スター ） の階級にある者。

コード ： ３　は、軍人の場合は大将 （ ４つ星 ）。

コード ： ４　は、軍人の中将 （ ３つ星 ）。

コード ： ５  は、軍人の少将  （ ２つ星 ）です。

海上自衛隊にいた当時、Ｖ Ｉ Ｐ コード　５ を乗せて米軍の岩国基地に着陸したことがありましたが、あいにく天候が悪く Ｇ Ｃ Ａ  （ Ground Control Approach 、レーダー誘導による精密進入 ） をすることになりました。すると管制塔から Ｇ Ｃ Ａ に使用する無線の周波数を、プライマリー、セコンダリー、バックアップ　と三つの波で同時送信する旨を知らせてきました。

普段はひとつの周波数でしか送信しないものを、Ｖ Ｉ Ｐ の着陸に際し、通信機の故障などにより レーダー誘導の指示が途絶える事態に備えての対策で、その安全確保の周到さには驚かされました。

ところで国賓として外国を訪問する場合や、外国の国賓が日本に公式訪問する場合には、飛行機の操縦室の窓の外側や屋根 （ ？ ） に国旗を立てます。

操縦室の側方の窓 （ Side sliding Window ） が開く  タイプの飛行機であれば、窓を開けて旗竿を立てる筒に自国の国旗、反対側には相手国の国旗を差込み、窓が開かない タイプの飛行機であれば、操縦室の天井にある パイロットの脱出用の ハッチを開いて同様に  ２ 本の国旗を立てます。

ところで昭和 ５１年 （ １９８１年 ） ２月 に ローマ法王 （ 教皇 ） の ヨハネ ・ パウロ ２ 世が来日し、２月２５日に東京から広島、長崎を訪れましたが、その際には縄文航空の飛行機に搭乗しました。

広島空港 （ 現、広島西空港 ） に着陸後、地上走行中に乗員が窓を開けて ローマ法王を国の元首とする バチカン 市國 の国旗を筒に差し込みましたが、ターミナルに入る手前で、一陣の風にあおられて旗が ポロリ と落ちてしまいました。更に運が悪いことに落ちた国旗を搭乗機 の主車輪で引くという、前代未聞の出来事が起きました。

縄文航空の関係者一同は、国旗を汚した行為が 外交上の儀礼 に反し、 国際問題になるのではと恐れおののき、不手際を  ローマ法王側近にお詫びしたのだそうです。 ところが ローマ法王側は、この事態をまったく気にしませんとのことでした。

もしこの出来事が、他国の国旗を燃やすのを得意とする　アジアの K や　Ｃ の国旗 で起きたとしたならば、彼等は絶好の機会と とらえて騒ぎ立て、会社や国に謝罪や補償要求をしたに違いありません。