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2008年7月26日 (土)

飛行機への落雷

以下の写真はいずれも クリックで拡大。

昔から怖いものといえば、地震、雷、火事、オヤジでしたが、最近では オヤジの権威が失墜したどころか、寝ているうちに息子や娘に殺される時代になりました。

Inazuma ところで、ほとんどの機長は飛行中に 一度や 二度は 落雷 (  Lightning Strike )  を受けた経験があると思いますが、下記の動画は全日空の B-747 が、離陸直後に落雷を受けた珍しい映像と、別の飛行機の飛行中の映像です。全日空機の場合は石川県小松市にある航空自衛隊小松基地か、北海道千歳空港に隣接する航空自衛隊の滑走路ではないかと思います。

http://jp.youtube.com/watch?v=5IRfbC0RHsY

別の飛行機への落雷

http://jp.youtube.com/watch?v=036hpBvjoQw

飛行機 ( 車も同じ ) に落雷を受けた場合にはどうなるかといえば、電気の父とも云われ

「 ファラデーの法則  」などで電気工学の教科書 ・ 参考書に必ず名前が出てくる、 イギリスの物理学者 マイケル ・ ファラデー (  Fatraday 、1869年死亡 ) が、 1836年 におこなった 静電遮蔽 ( しゃへい ) に関する 「 鳥かご実験 」 があります。

下の動画は ファラデーの実験を模したもので、周囲を金網で囲って 静電遮蔽 ( しゃへい、 Electro-static Shield ) された ケージ ( Cage 、鳥かご ) に、 数万 ボルト の静電圧を加えて火花放電をさせても、中の人はまったく安全です。

http://jp.youtube.com/watch?v=Zi4kXgDBFhw&feature=related

これと同じことが、落雷を受けた飛行機や 車でも起きます

飛行機は全体を金属板で覆われているために、 落雷による静電気の電流は外側の金属板が電場 ( 電界 ) を遮 ( さえぎ ) り、静電気力線が機体内部に侵入できないため、 機体の表面を流れます

そのために機内の乗客が感電死したり、漏れた靜電流で体がシビレル ようなことは決して起きず、大きな音や夜間では閃光を感じますが、時には機内の照明灯が一瞬点滅する程度です。

この現象に関して一部の メディア では 表皮効果 ( Skin Effect ) に原因を求めていますが、表皮効果とは [ 高周波電流 ] が導体を流れる際に、導体の中心ではなく表面付近を流れる現象であり、落雷現象とは全く無縁の誤った説明です。

飛行中に落雷を受けやすいのは主に飛行機の機首や翼端、アンテナなどの突出部分ですが、機首にある レーダー・ドームが損傷を受けたり、雷が通り抜けた機体の ジュラルミン製外板には、熱で溶けた小穴が点々と並んでできたり、電気系統・電子機器に一時的に不具合を生じることもあります。

落雷を受けた機長は 被雷報告書 を会社に提出すると共に、必要な場合には整備士による機体の被雷点検が行われます。昔の飛行機とは異なり現代の飛行機は、機上 コンピュータなど重要な部分については落雷による電圧 サージ ( Surge、急激な上昇 ) など から守り、電気的に シールド ( 遮蔽、しゃへい ) されているために、落雷により墜落する事態は 「 基本的には 」 起きないはずです。あくまでも はずです

Ba777crash 今年 ( 平成20年 ) の 1月に、北京から  ロンドンに向かった英国航空 ( BA ) の B-777 型機が、ロンドン ・ ヒースロー空港へ進入中に 二つの エンジンの出力を失い、 ロンドンの  ヒースロー空港に滑り込み、飛行機は大破しました。奇跡的に 136 人の乗客と 16 人の乗組員のうち、13 人が負傷しただけでした。

エンジン出力が失われた原因については、当初落雷によるものと思われていましたが、その痕跡がないことから、パイロットの操縦 ミス説も 一部に起きました。

Contik その約  1 ヶ月後の  2 月 11 日に、ニューヨーク  ・ マンハッタン の川向かいの ニュージャージー州にある  ニューアーク  ( Newark ) ・ リバティー国際空港 から、100 人の乗客を乗せた  ロンドン行きの コンチネンタル航空の B-757 型機が離陸しましたが、直後に被雷したので すぐに ニューアーク空港に戻りました。

[ その際の機内の様子についての、乗客の証言 ]

大きな爆発があり、白い閃光が機外に見え、機内には大きな 「 バーン 」 という音がした。人々は悲鳴をあげ、私は おお神よ我々は墜落するのではないかと思った。ある乗客は何かが燃える臭いがすると言ったし、後の座席にいた少女は ヒステリー状態になり、飛行機から私を降ろして、降ろしてと、悲鳴をあげながら祈り、叫んだ。 ( 引用終了 )

Paa707 私が知る限り日本では、落雷による民間旅客機の墜落事故は起きていませんが、アメリカでは昭和 38 年 ( 1963 年 )  に  パンアメリカン航空の ボーイング 707 型機が、フィラデルフィア国際空港への着陸のための空中待機中に、 落雷を受けて燃料 タンク に引火爆発し燃えながら墜落しましたが、この事故で乗員 8 名、乗客 73 名、合計 81 名が死亡しました。

この事故の教訓から燃料 タンクにある空気抜き口を改善し、 ジェット旅客機に使用する燃料には、それまでの軍用  ジェット燃料の JP-4  ( 石油 と ガソリンを  50 対  50 の割合で混合したもので、引火点は、マイナス 18 度 C  ) の使用をやめて、より引火点の高い 「 安全な 」  ケロシン系 、( つまり灯油  ストーブ用の 灯油に近い  )  ジェット A-1 燃料 ( 引火点、38 度 C ) に変更することにしました。

[  引火点とは ]

石油製品を加熱すると蒸気を発生しますが、これと空気の混合 ガスに  「 火種を近づけると 」 ある温度で瞬間的に引火します。この時の温度を 引火点 ( フラッシュ ・ ポイント、Flash point ) と言います。

この他に自然発火温度 ( Autoignition temperature ) というのがありますが、 たとえば可燃性液体について温度が上昇すると、 「 火種が無くても 」 自然に燃え上がる温度です。

Tenpuranabe 「 ジェット A-1 」 燃料の場合は、自然発火温度は 210 度  C ですが、参考までに 家庭で 天ぷら鍋の火を消し忘れた場合には、250 度 C で白煙が立ち昇り、 370 度 C 前後で油が自然発火します。

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2008年7月19日 (土)

CAT ( Clear Air Turbulence )、晴天乱気流

F86f 乱気流による BOAC ( 現 ・ BA、英国航空 )機 の墜落事故が起きる丁度  4  年前の、昭和 37 年 ( 1962 年 ) 3 月 17 日のこと、九州にある航空自衛隊基地を飛び立った F- 86 F 戦闘機の 4 機編隊が、南 アルプスを越えて高度を徐々に下げながら、富士山の北側を通り埼玉県の入間基地へ向かっていました。

編隊が富士山頂から北北西 16 キロ の地点にある西湖の上空 5,470 m ( 18,000 フィート ) の地点で、突然 4 機とも激しい乱気流に遭遇したために、編隊は ばらばらになりました。そのうちの 2 機は エンジンが フレームアウト ( Flame Out 、燃焼停止 ) したために、パイロットは機体から  ベイルアウト ( Bail Out 、パラシュート脱出 ) してことなきを得ました。

Saiko この CAT ( 晴天乱気流 ) はi富士山によるものではなく、多分 ジェット気流 ( 強い西風 ) の乱れにより生じたものと私は想像します。その理由は 「 西湖上空で乱気流に遭った 」 とする報告がもし正しければ、地図で西湖と富士山の位置関係を確認して下さい。

Sangakuha 富士山による乱気流は 常に風下側 ( 東側 ) で起きる ので、それによる乱気流が原因とするならば、その当時は富士山に当たる風が南風 ( 南から北へ ) が吹き、しかも ジェット気流並みの強さで吹いていなければなりません。つまり 3 月だというのに、台風でも来ない限り、そのような風向風速の強風など、常識では到底あり得ない話です。写真は風洞実験の写真で、富士山による乱気流の様子を見事にとらえています。

CAT について一般的なものは、 ジェット 気流によって生じるものが殆どですが、発生場所としては ジェット ・ コア ( Jet Core 、ジェット気流の中心付近、つまり最速部分 ) の下側で起き易いといわれています。

300hp ちなみに パイロットが ジェット気流の位置を知るのに一番よく使う、300 ヘクト ・ パスカル ( 高度 3 万 フィート、約  9 千  メートル ) の高層天気図 ( 2008 年 7 月 18 日 21 時、日本標準時 ) を掲載しておきますが、日本列島の位置が分かり易いように、私が赤く色を塗りました。これを見ると当日の亜熱帯 ジェット ( Sub Tropical Jet ) 気流の位置が、本州よりも北側にあり、北海道付近を流れていることが分かります。

Jetpos 亜熱帯 ジェットという言葉が出たついでに、地球規模での大気の循環と、ジェット 気流の位置についての図を見てください。北半球においては ジェット気流の勢力は夏には弱くなり北上し、冬になると勢力が増し、南下する傾向があります。この図から. 圏界面 ( 対流圏と成層圏の境界 ( Tropopause ) の高さが極地方では低く、熱帯地方で高くなることが分かりますが、このことは入道雲の発達する高さに関係してきます。

ところで昭和  39 年 ( 1964 年 ) のこと、アメリカで テスト飛行中の B-52 型 戦略爆撃機が CAT ( 晴天乱気流 ) に遭遇し、機長は操縦困難になったので、クルー に脱出の用意を命じ、脱出し易いように、速度を下げて高度を 5,000 フィート ( 1,500 m )  まで降下しましたが、ここで運よく機体の コントロールを回復することができました。

B521964 Emergency Interception & Escort ( 緊急会合および エスコート ) を要求したところ、やって来た F-100 型戦闘機の パイロットが見た B-52 の姿とは、垂直尾翼がとれた 機体でした。頑丈な軍用爆撃機でさえも、CAT  により機体に重大な損傷を受けましたが、民間の旅客機であったならば 恐らくより大きな損傷を受け、あるいは空中分解したかも知れません。

見えない空の恐怖である CAT には パイロットだけでなく、乗客もくれぐれもご用心を。飛行中に座席 ベルト着用 サイン が消えるとすぐに ベルトを外す人や、着陸するとすぐに外す人がいますが、それらは空の旅の初心者です

便乗 ( Dead Head 、非番、 Off Duty ) の パイロットや スチュワーデスが客席で移動する場合には、決して座席 ベルトを外しませんが、何が起きるかも分からない、大空という自然を相手にする怖さや、人間とは ミスを犯す動物であることを十分知っているからです。

2008年7月12日 (土)

入道雲の恐怖

平成 20年 6月 21日午前10時5分ごろ、熊本市上空 高度 5,000 メートルを飛行中の福岡発鹿児島行き日本 エアコミューター ( JAC ) 3643便 ボンバルディア DHC 8が、機体に落雷を受けました。同機は飛行を続け鹿児島空港に着陸、乗客乗乗客乗員 70人に けがはありませんでした。

機体を点検したところ、右尾翼の昇降舵に約 1・5 センチ四方の欠損や、胴体の外板を止める約 20本の金属製の 鋲 ( びょう ) に損傷がありました。修理のため、同機を使う予定だった鹿児島-福岡、鹿児島-大阪の 1往復ずつ計 4便が欠航になり、乗客計約 200人はほかの便などに振り替えました。

九州、山口県が今月 6日に梅雨明けし、近畿地方でも梅雨明け間近になりましたが、梅雨が明けるといよいよ夏本番となり入道雲の シーズンになります。朝から気温がぐんぐん上昇し、強い日射で地面が熱せられて空気が上昇し、午後になると近畿では鈴鹿山脈、四国では四国山脈、関東では関東平野の北部にある 我がふるさと、栃木県の日光連山などの山岳地帯では、熱雷と呼ばれる 雷雲 ( 入道雲 ) が局地的に発生し易く、パイロットを悩ませます。

入道雲が パイロットに恐れられる理由は三つありますが、

1:乱気流
2:雹 ( ひょう、Hail stone )
3:落雷です。

[ 乱気流 ]

Nyuudou_2 乱気流には大別すると雲の中で遭遇するものと、雲が無い晴天の大気中で遭遇する晴天乱気流 ( CAT 、Clear Air Turbulence ) の二種類があります。別の表現をすれば肉眼による雲の存在や操縦席の気象 レーダーなどにより、予め揺れる空域が目に見えるものと、CAT のように レーダーにも映らず、空気の乱れの空域が目に見えないものもあります。

入道雲の内部で発生する上昇気流や、それを補う形ですぐ近くに存在する下降気流などによる乱気流は強烈で、垂直速度が 秒速  20~30 メートルに達するものもあるといわれていて、これにまともに巻き込まれた飛行機は、空中分解することでしょう。

Boacfuel 肉眼では見えない晴天乱気流 ( CAT ) による空中分解の実例としては、昭和 41年 ( 1966年 ) 3月5日、羽田発 ホンコン経由 ロンドン行きの英国海外航空 ( BOAC、現在の BA ) 911便 ボーイング 707型機が、羽田空港を離陸して約 15分後に、富士山上空付近の高度 15,000フィート ( 4,500 メートル ) を飛行中に空中分解し、富士山麓の太郎坊付近の森林に墜落しました。この事故で乗員11名、乗客113名、計124名全員が死亡しました。

写真の白い煙は、事故機の主翼から エンジンが脱落し、燃料 タンクから漏れ出した燃料だといわれています。

原因は ジェット気流 ( 強い西風 ) が 独立峰である富士山に当たって生じる乱気流の怖さを、ドブソン ( Dobson ) 機長が知らなかった からでした。羽田空港を離陸後に乗客に対して富士山をよく見せるために、計器飛行から有視界飛行に切り替えて、富士山のすぐ近くの風下を飛行したために、機体の設計強度を上回る、強烈な富士山の乱気流に遭遇した結果でした。

Seigenk ちなみに ボーイング707型機の主翼は、約 6.4G ( G は加速度の単位で重力の 6.4倍 )、胴体は約 5.6G の加速度により破壊するところ、事故機は 7.5 G ( 重力の 7.5倍 ) の加速度を受けたために破壊したのでした。

輸送機の場合、図の上向きの突風を受けた [ プラス ] の場合と下向きの突風を受けた [ マイナス ]  の場合の 制限荷重倍数 を示しますが、これに 安全係数の 1.5 を掛けた値が、()内の終極荷重 ( Ultimate Load ) 倍数になり、この応力に対して機体が 3秒間耐えなければならず、その後は変形・破壊につながります。

Fkouryuu ジェット気流の強い日には 富士山 ( 3776 m ) の風下に近づかないというのは、日本の パイロットの常識ですが、冬など西や南から羽田に向かう飛行機が、千葉県の房総半島上空の高度 1万フィート (3,300 m )~8,000フィート (2,400 m )付近で ガタガタ揺れるのは、富士山に当たって生じた 乱気流の渦が、 80 キロも遠く離れた地点まで減衰しながら運ばれて来るからです。

Fujiv この渦は肉眼では見えない、いわゆる晴天乱気流 ( CAT ) ですが、時には富士山の風下に乱気流の雲が生じて見えることもあります。( 続く )

2008年7月 5日 (土)

閉所恐怖症の人口比率

これまで述べた閉所恐怖症の人の人口に占める割合について、いろいろ調べたものの、はっきりした数字は見当たりませんでした。

医学界ではそれまでの レントゲンを使用した CT ( Computed Tomography 、断層撮影 ) に替わり、1980年代には 、 M R I ( Magnetic Resonance Imaging 、磁気共鳴画像 )が開発、実用化されました。

それにより 通常の胸部 レントゲン検査時の 数百倍もの 「放射線被ばく 」 を受ける CT 検査に比べて、患者の健康には全く無害な磁気の利用により、体を輪切りにして、内部を見ることができるようになりました。

Cttomography 私は一度だけ CT 検査を受けたことがありましたが、装置は単なる ドーナッツ 状のもので、ベッドに寝たままで ドーナッツ の輪をくぐり抜ける仕組みでしたので、閉所恐怖を感じることもなく、しかもうるさい大きな音もぜずに短時間で検査が済みました。

Tsutsu_2 これに比べて MRI の場合は CTとは大きく異なり、検査装置は細長い筒 ( チューブ  ) 状なのです。検査を受けるには写真のような狭い筒に、頭から入れられて画像を撮るわけですが、顔のすぐ上が装置なので目を覆い、かなり大きな音 ( ガー、60~80ホーン ) がするので耳栓を着けます。時間としては検査部位により異なりますが、普通は約15分~40分程度です。

ここで問題になるのが閉所恐怖症の人の場合です。普通の人であれば狭い穴の中に入れられて うるさい音を感じるだけですが、閉所恐怖症の人は恐怖心から途中で検査を中断する場合もあるので、事前の問診で閉所恐怖症と判明した人については、検査を拒否する医療機関もあります。

しかし別の医療機関では閉所恐怖症の人に対しては、必要に応じて精神安定剤の点滴投与をして、眠っている間に検査をするところもあります。なお MRI の検査は心臓に ペースメーカーを入れたり、脳の動脈瘤を クリップで止める治療をした人、人工関節を入れた人などは検査を受けられません。

Openmria ところで最近は MRI に関する技術の発達により、閉所恐怖症患者にも朗報となる筒状ではない、開放式の オープン MRI (  Open  M R I  ) が開発されたので、従来は恐怖心からできなかった閉所恐怖症の人でも、 MRI が可能になりました。

では閉所恐怖症 ( 疑いのある人を含む ) の人の割合は、 MRI の検査現場ではどの程度いるのでしようか?。ある統計によると 5~10 パーセントといわれているので、一応この数字を挙げておきます。

サンプリング ( Sampling 、統計的見本抽出 ) についての ひとつの考え方として、ある検査 グループについて閉所恐怖症 ( 疑いのある者を含む ) 患者が 5~10 パーセント いるのであれば、類似の特性を持つ グループ ( つまり国民全体 ) としても、同じ程度の値になることが予想されます

High_sea もしこの考えが正しければ、国内には 650万人~1,300万人の閉所恐怖症の人がいることになりますが、この人口比率は 私を含めて船酔いを し易い人の数と同じです

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