かみなり雲の発電
8月5日のこと、東京都豊島区で下水道道作業中の 5人が、下水管内で突然増水した水に流されて死亡、行方不明になりましたが、原因は局地的に発達した積乱雲による集中豪雨でした。大阪の我が家に遊びに来ていた孫二人を横浜の娘の家に送り届けに行った老妻が、事故と同じ 5日に大阪へ帰るため羽田空港に行くと、空港周辺には発達した雷雲があり、飛行機の運航にかなり遅れが出ているとのことでした。
空港から私に電話をかけてきて 「 18時発の飛行機に乗る予定だけれど、かみなり雲があるので乗るのが心配だ 」 というので、「 落雷を受けても、最近の飛行機は滅多に墜ちないよ。万一墜ちた場合には、わたしが 遺族補償金をしっかり貰っておくから 安心して乗りな !! 」、と励まし (?) ました。当日の羽田空港は雷雲の影響で、約 190便に出発遅れ、到着遅れが出たそうです。
パイロットにとって危険な存在である 「 かみなり雲や、入道雲 」 のことを、気象用語では 積乱雲といいますが、英語の Cumulo-nimbus ( キュミュロ ・ ニンバス ) から、略して Cb ( シービー ) といいます。 Cb の中では激しい乱気流や、雹 ( ひょう、Hail Stone ) 、「 落雷 」 の危険が存在するので、極力避けて飛行しなければなりません。
ところで落雷の記録によれば、平成17年8月16日には、 たった 1日で日本中に 15万5,228発 の雷が落ちましたが、「 かみなり雲 」 では落雷する電気が、どのようにして発生 ( 発電 ) するのでしょうか?。
小学生の頃に セルロイド ( 当時は プラスチックなどは開発されていませんでした ) の下敷きを頭の毛でこすり、細かく千切った紙に近づけると静電気の作用により、紙片が セルロイドに吸着される遊びをしましたが、プラスチックでも可能かどうか実験したことがないので分かりません。実は 「 かみなり雲 」 の中でも、この静電気の発電作用が関係しているのです。
[ 電荷の分離が生じる ]
地上付近の水蒸気を含む空気が日射などにより暖められ、上昇気流によって気圧の低い高空に運ばれると、途中で断熱膨張して温度が下がり、高空の低温域に運ばれるに従い、水蒸気は飽和状態から凝結して水滴となり、更に上昇を続けると、氷結して 「 あられ 」 や、氷の結晶 になります。
ここからが 科学的に未だに解明されない電荷分離の問題点で、 種々の仮説がありますが 、上昇気流の中では水滴や 「 あられ 」、「 氷の結晶 」が互いに衝突し合い、結合し、分裂し、摩擦を繰り返すことにより静電気を帯びるようになります。
大粒の水滴や氷は [ - ] の電荷 ( Negative Electro-static Charge )に、小粒の水滴や 「 あられ 」 氷の結晶は [ + ] の電荷 ( Positive Electro-static Charge ) に帯電します。
大粒の水滴や氷は重いので雲中を落下して雲の下方に行き、小粒のものは上昇気流に乗って更に更に高い高度へと運ばれます。雲の内部における静電気の配分を見ると、大粒が集まる雲の下方は [ - ] の静電気に帯電し、雲の上部は [ + ] に帯電することになります。
雲中の静電気の電位差がある限度を超えると、雲の内部で 「 雲間雷 」 ( Intra-cloud Lightning ) と呼ばれる雲中放電 ( イナズマ ) が始まりますが、やがて地上への落雷が起きる前兆です。
雲底が [ - ] に帯電すると、静電誘導により対極となる地表面は [ + ] の電荷を持つようになりますが、その電位差が高まれば、空気の絶縁が破られて地上に対する放電現象 つまり稲妻 ( Lightning ) 、落雷が起きます。
アメリカでは落雷による死者は毎年 100人前後ですが、そのうち ゴルフをしていた人は少なくとも 5パーセントであり、木の下にいた人は 14 パーセントでした。下記の動画を見れば、雷雨の際に 木の下で雨宿りをする気には、もうならないでしょう。
http://jp.youtube.com/watch?v=owh84___4kI
日本における落雷による死者は、警察庁の統計では毎年 15人~20人程度ですが、過去には ゴルフ場だけでも毎年 20人が落雷により死亡しました。その後 雷の頻発地域に近いゴルフ場には、落雷に対する警報 システムなどが導入され、事前の避難が可能となったので、死者は減少しました。
ところで中国の国家気象局の統計によると、中国では落雷による死者は毎年およそ1,000人に達するそうで、落雷による経済損失は10億元 ( 160億円 ) 近くになり、洪水、地震に次いで 三番目に大きい自然災害なのだそうです。北京にある天安門も、実は落雷により二度焼失し再建されていました。
雷を発生させる原動力は、前述のごとく激しい上昇気流ですが、その静電圧は 1億 ボルト ~10億 ボルト ともいわれ、落雷の際には 数万 アンペア~数10万 アンペア の静電流が流れるといわれています。この電気 エネルギーの利用法については昔から考えられてきましたが、問題は電流の流れる時間が僅か千分の一秒という短かさと、落雷地点が予測できないために利用不可能なのだそうです。
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