セントエルモの火
今週の月曜日 (7月28日) に関西地方を寒冷前線が通過した際には、各地で落雷があり停電により電車が停まるなどしましたが、神戸では局地的豪雨による六甲山からの鉄砲水により、都賀川で 5名の死者が出ました。
実家に里帰り中の娘は、その日の午後 3時大阪伊丹発の東京行きの便に乗る予定でしたが、激しい雷のために出発が一時間ほど遅れて離陸しました。
本人によれば飛行機左側の窓ぎわの座席でしたが、雲中飛行で外を見ていると左翼に落雷したそうです。一瞬周囲が ピンク色になり、ピシッ という音がしましたが機内の照明灯は停電もしませんでした。機長の アナウンスで 「 落雷を受けたが、飛行の安全性には支障ない 」 とのことなので安心して無事に羽田空港に到着しました。
写真は外国機に落雷した時のものですが、主翼の塗装が大きく茶色に焦げていたました。
私も現役時代に何度か落雷を受けた経験がありますが、あるとき夜間の雲中飛行で機首に落雷を受けました。目の前で強烈な写真の フラッシュを発光されたような感じがして、数秒間目が見えなくなりましたが、次には視界が緑色になり、その後に視力が正常に戻りました。緑色に見えたのは光の三原色である 「 赤、青、緑 」 の補色の関係から、ピンク色 (?) に対する補色残像かも知れません。
ところで米軍の飛行 マニュアル にある 「 雷雲中の飛行方法 」 によれば、夜間の落雷による視力の一時的喪失を防ぐために、操縦席の椅子を一番低い位置に降ろして外からの閃光を極力さえぎり、サングラスをかけて機内の照明を最大にせよとありましたが、経験に裏付けられた文言でした。
セント・エルモ の火 ( St Elmo's Fire ) を、ご存じですか?。悪天候時に建物、船などに帯電した静電気が、その尖った部分から青白い光を発して空中に コロナ放電 ( 注参照 ) をする現象ですが、地上や海上だけでなく、飛行機でも起きます。
注:) コロナ放電とは。
二つの導体の間で局部的に高電場 ( でんば、電界と同じ ) が生じ、空気の絶縁が破壊されて起きる、光を伴う放電現象のことです。
雷雲の中やその近くの雲中を飛ぶと、多量の電荷 ( Charge ) を持つ水滴や氷晶と衝突するために飛行機に静電気が帯電し、操縦席の前方窓 ガラスに コロナ放電が起きますが、慣れないうちは気味が悪く、しかも感電しそうな気がします。
窓ガラスだけでなく時には翼端や機首から前方に、あたかも着陸灯でも点灯したように コロナ放電で光る場合がありますが、静電気が機体に過度に蓄積された 「 しるし 」 であり、そうなると落雷の危険性が増加します。
機体には飛行中の機体に溜まった静電気を空中に放出するための装置として、 [ Statick discharge Wick ( 芯 ) や discharge Rod ( 棒 ) ] が翼端や操舵面の後部に装備されています。
下記の動画は
イラク上空を飛ぶ米軍の輸送機が 40 マイル ( 74 キロ メートル)先の航路上に積乱雲があるので右に避けようとしましたが、そこには敵対する イランの領空があり、十分に避けられず、やむなく雷雲の近くを突っ切ることにしました。
9分39秒の長い動画ですので、画面下部に現れる赤い テープにある 「丸印」 を ドラグして動画の後半から御覧下さい。激しい乱気流の中で機体の帯電により、操縦席前方の窓 ガラスや機体からは頻繁に セントエルモの火が走り、稲妻のまぶしさに対処するため、6分34秒からは操縦室内の照明を明るくして飛行しました。
雷雲中を飛行する 地獄の フライトの様子を御覧下さい。
http://jp.youtube.com/watch?v=4sA-Hk_jnPg&eurl=
最後には より高い高度に上昇し、積乱雲から抜け出すことができました。
シルバー回顧録へ戻るには、ここをクリック
« 飛行機への落雷 | トップページ | かみなり雲の発電 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント