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2008年10月 4日 (土)

成田空港の現状 (1)

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就任したばかりの中山国土交通大臣が 9月25日に、成田空港拡張工事の遅れについて、

「 ごね得というか戦後教育が悪かったと思いますが、公共の精神というか公のためにはある程度は自分を犠牲にしてでもという考えが無くて、自分さえよければという風潮の中で、なかなか空港拡張もできなかったのは大変残念だった。 」

と述べましたが、日教組に対する発言と共に、その責任を問われて辞任しました。黄色の X 印は長年にわたり使用できない滑走路、誘導路です。写真はクリックで拡大。

日教組に対する非難の件はさておき、元 パイロットの立場からすれば、成田空港に関する彼の発言は至極当然のことを述べたまでであり、滑走路の不足がもたらす ラッシュアワーにおける離着陸機の順番待ち、空港の非効率な運用については、日本人、外人 パイロット ( そして乗客 ) の誰もが痛切に感じていたことでした。

[ 空港建設の経緯 ]

国内線、国際線機で混雑する羽田空港の混雑緩和のために、昭和37年 ( 1962年 ) に新東京国際空港を建設することになりましたが、その候補地が千葉県富里 ( とみさと ) 霞ヶ浦地区、羽田空港拡張案、東京湾の木更津沖などと 二転三転した末に、昭和41年 ( 1966年 ) 7月に現在の場所に、住民に対する説明不足のままで、空港建設が閣議決定されました。

地域住民による成田空港建設反対の抗議運動を絶好の機会と捉えて、過激派学生、左翼主義者などが、ヘルメットを被り、 「 ゲバ棒 」 と称する 「 こん棒 」 を持ったなどして成田空港建設反対の大規模闘争をおこないましたが、昭和46年 ( 1971年 ) には パトロール中の機動隊員三名が待ち伏せした多数の過激派に 襲われ、 ゲバ棒で殴り殺される事件も起きました。

昭和 53年 ( 1978年 )の 3月、私は北米大陸の中央部にある カンサス州の カンサス市 ( 現地の発音で言えば キャンザス、Kansas 、インディアン の部族名に由来 ) の ホテルに滞在して、大型 ジェット機の飛行訓練を受けていましたが、ある日  テレビ・ニュースを見ると開港間近の成田空港の管制塔に左翼過激派が乱入占拠し、航空管制設備や機器を破壊した映像を流していましたが、あたかも日本に左翼革命でも起きたような報道ぶりでした。

空港建設工事は難航し、閣議決定から実に 12年後の昭和53年 ( 1978年 ) 5月に、ようやく成田空港が開港しましたが、不便なことに長さ 4,000メートルの滑走路 1本だけでした。

昭和 63年 ( 1988年 ) には空港拡張用地の強制収用に必要な千葉県の収用委員会の委員長が、左翼過激派に襲われ重傷を負ったことから収用委員全員が辞任し、千葉県知事は委員の後任を任命しない、つまり土地の収用委員会を開催しないことに決めました。ヤクザに脅かされたので、商店主が店 ( 公務 )を閉めた図式でした。

昭和61年 ( 1986年 )に第二期工事が始まりましたが、政治闘争化した反対運動の激しさから工事は遅々として進まず、平成3年 ( 1991年 ) には閣議で、

「 いかなる状況下でも強制的手段を用いず、平和的に解決する 」

という方針が確認されましたが、この 「 霞ヶ関文学 」 の表現を分かり易い言葉で言えば、何もしないということでした

[ 滑走路上にある民家 ]

左翼主義者たちが 「 平和運動 (?) 」 の際に常用する耳障 ( ざわ ) りの良い、 「 話し合いによる解決 」 の言葉に役人が騙された結果については、まずは冒頭に掲載した成田空港の写真を見て下さい。

写真は空港を北側から撮ったものですが、画面中央に横たわる滑走路は、東西方向から風が吹く際に使用する予定の 横風滑走路です。しかし滑走路の舗装工事完了後何十年も経つというのに、未だに使用不能なのです。

その理由とは滑走路上に、空港反対派の民家が居座り続けているからであり、下の写真の赤線で囲った部分が、それです。

空港開港から今年で丁度 30年が過ぎ、二期工事開始から 22年経ちましたが、 「 話し合いによる解決 」 の方針がもたらした結果がこれです。

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腰抜け政治家による 「 公共の利益よりも、個人の権利を優先させた 」愚かな行政の対応や、偏向 マスコミ によるそれを支持する主張の結果生じた、成田空港の恥ずべき実状 ( 世界に類のない滑走路上の民家の存在 ) を国民が知らされずにいる限り、 おそらく今後何十年もこの状態が続くものと思われます。現場は ターミナル 2 の北側にある横風滑走路上です。

反対派の民家や私有地があるのはここだけではなく、他の場所にもあり、空港の運用を著しく妨げています。

さらに 新設された平行滑走路の予定地域にも別の民家が居座っているために、長さ2,180メートルの短い滑走路しか作れず、小型ジェット機や、プロペラ機しか離着陸できない状態です。参考までに世界の主要空港における、滑走路の数を御覧下さい。

[ 大型 ジェット機用、滑走路の数 ]

ヒースロー ( ロンドン ) : 二本
シャルル ・ ドゴール ( パリ ) : 四本
レオナルド ・ ダ ・ ビンチ (  旧名 フミチノ ) ( ローマ ) : 四本
スキポール ( アムステルダム、オランダ ) : 四本
ダレス ( ワシントン D C ) : 五本
ケネディー ( ニューヨーク ) : 四本
オヘア ( シカゴ ) : 六本
ハーツフィールド ・ ジャクソン ( アトランタ ) : 五本
ロサンゼルス : 四本
サンフランシスコ : 四本
チャンギー( シンガポール ) : 三本
インチョン ( ソウル ) : 三本
北京 ( 中国 ) : 三本
キングスフォード ・ スミス ( シドニー ) : 三本
関空 : 二本
成田 : 僅か 一本です

この数字を見てどのように感じましたか?。冒頭に記した 中山 ( 元 ) 大臣の発言を、もう一度読み返して下さい。 ちなみに大型 ジェット機用の滑走路 三本を持つ チャンギー空港がある シンガポール の国土面積は、関西にある 淡路島とほぼ 同じ広さです。( 続く )

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コメント

首都から遠く離れ、深夜は使用できなく、国内線(国際線の乗り継ぎでだけ)がない、滑走路が短い(実質3200mと2180m滑走路しかない)、誘導路が十分でない成田空港が欠陥空港でないわけがないと思います。
しかし、千葉県はこの欠陥空港を人質にして、政府を脅迫しています。
羽田空港にC滑走路の沖にもう一本滑走路を拡張し、5本から6本の空港にすべきです。(もちろん、滑走路延長をします)
羽田空港だけでは首都圏の航空需要を十分まかなえませんから、石原都知事が提唱しているように、横田基地を民間に開放し、首都圏第二空港にし、成田空港を廃止するしかないでしょう。
千葉県の人口は、首都圏4都県で最も人口が少なく、航空需要も少ないから、成田空港への国内線需要がほとんどないのです。こんな県に首都圏第二空港を設置するのは間違いです。
関空も地元市町では泉州空港と呼んでいるそうですが、そんな名前を誰も知らない。地域エゴです。
空港などの公共物(橋や土地)に税金をかけ、連絡橋が国有化されると、通行車から税金を取る条例可決や空港島にだけ特別に固定資産税率を上げるとか、工事中にたんまり漁業補償を取った漁をしないサラリーマン漁民だけでなく、地方自治体にも空港を食い物にしています(しようとしています)。
日本の空港行政は、空港をインフラとは考えずに、独立採算でしか考えないのでしょうか?
成田空港のA滑走路はいつになれば、本来の4000m滑走路として運用されるのでしょうか?
B滑走路が2180mが2500mに拡張されても、A380やB-747が離発着するには短い、誘導路1本しかなく、それも途中でぐにゃと曲がっている。
こんな欠陥空港成田の廃止に賛成です。政府首脳が廃止に傾いたときの千葉県知事の顔が見て見たいと思います。

こんにちは。
ブログを拝見して勝手ながら読者になりたいと
考えています。つきましては誠に勝手なお願いなのですが、こちらのブログの表紙にはRSSフィールドが表示されておりません。ブログ設定でフィールドを表示していただけると新しい記事がすぐに分かるので便利です。可能であればご検討いただけるとありがたいのですが。

↓以下ニフティブログの説明です。

「RSS/Atom配信の設定をオンにすると、RSSリーダーなどを使っている読者は、あなたのサイトの更新状況を一目で知ることができるようになります。」

ご希望に応じて RSS フィールド を ON にしましたが、正しく作動するかどうか分かりません。

なお ブログ の更新は毎週土曜日におこない、随筆集 「 サンデー毎日の記 」 は毎月の26日に更新をしております。

勝手な要望にお答えいただき、ありがとうございました。
わたしもニフティのブログで試してみました。
どうやら設定変更後に「反映」というボタンをクリックしないと
ブログ表紙には RSSリーダー用のリンクが表示されないようです。

これ以上お手数をおかけする要望も心ぐるしいのであきらめます。
ブログ・随筆集の方は今後とも拝見させていただきます。
カネノ様にはたいへんお手数をおかけしました。
私のブログのリンクをいれておきます。
ありがとうございました。

成田、羽田も欠陥
 成田は風向きによって、燃料を大幅に食う。現在は、機体、エンジンが高性能なので問題ないが、風に左右されるので、偏西風が吹く時期は、成田に着陸ができない。特に、貨物機はその影響をもろに食らっていた。自衛隊、ロシアの防空空域に引っかかりやすい。積雪、霧など地形気候の変化が多い。
 羽田は鳥が多すぎる。鳥のため、エンジンのブレードの破損が多い。また、突然、突風なの影響がある。ブレードの破損は時には、機体全体に影響を与えて、会社泣かせ。時には3機のエンジンだけの始動帰航。羽田はレーダー管理が重なりが多く、指定空域が限定され、流されることが多い。
 羽田も朝靄が多すぎて、朝の着陸は変更が多い
 上空旋回で待機。
 塩害被害が多いため、錆び留め、洗浄の回数をかされなければならない。

 空港近くになると、航空機は最低限の燃料にするため、(着陸で失敗して炎上しないため)空中放出。
 場合よって近場の場所で緊急放出。
 昔の大惨事を防ぐための行為
 ケロシン放出ため人のいない地域を好むため
どの場所も難しい

 
 
 

糞売国奴ども許せない
日本の国益に反する行為は、断罪するべき

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