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2013年10月26日 (土)

あ く ど い 商 売

1 : バ ー 「 お そ め 」

今から 6  0  年以上前の 昭和 2  0 年代のこと、京都祇園で芸妓を していた 上羽 秀 ( うえば ・ ひで ) という女性が京都の祇園 に  バー  「 おそめ 」 を開店 した。美人で接客上手な マダム ( ママ ) の 努力の甲斐あって、京都の 旦那衆 や 文人 たちも 顧客 になり、店は非常に繁盛 した。

Uebahide

昭和 3 0 年 (1 9 5 5 年 ) に彼女の夢であった東京銀座 に 同名 の バー  「 お そ め 」  を開店  したが、後援者の大きな 財 政 支 援 によるものであった 。彼女は毎週大阪から、当時の庶民にとっては、 「 高嶺の花 であった飛行機 」 で往復 し、「 空飛 ぶ マ ダ ム 」  ; と評判になった。

顧客の中には 川端康成、白洲次郎、小津安二郎 らがいたといわれている。ところがある日、偽洋酒事件が発覚 した 。当時の日本で最も名前の知られた外国産の高級 ウイスキー はアメリカの 「 ジ ョ ニ  黒  」 と い わ れ た  ジョニー  ・ ウオーカー  の 黒  ラ ベ ル であった。

大卒 サ ラ リ ー マ ン の 初任給が  1  万円の時代に 1 本 1 万円も した ウイスキー であるが、現代の給料に換算すれば、 2 0 万 に相当する   。参考までに ジ ョ ニ 黒 は、現在 1 本 1,800 ~  2,000  円前後で購入できる。

 

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ちなみに私が フロリダ 州にある アメリカ 海軍飛行学校 に留学  した 1 9 5 7 年  ( 昭和 3  2 年 ) 当時、アメリカ の リ カ ー ・ ス ト ア ー ( Liquor store、酒 屋 ) では ジ ョ ニ 黑 が 1 本  5  ド ル ( 当時の為替  レート で 僅か 1,800 円 ) で 売 って いたのを見て、非常に驚いたが、日本の 六分の一  の値段であった。

ニ ッ カ や 寿 屋 ( こ と ぶ き や、後 の サントリー ) を保 護 するため に、高額の 輸 入 関 税 を 課 していたのであった。

偽 洋 酒 事 件 とは美人の マダム が バー テンダー と 共謀 し、 ジ ョ ニ 黒 ウイスキー 瓶 の 底 に 穴 を 開 けて 中身 を 抜 き 取 り、代わ り に 値段が 十分 の 一 以下 の 安 い国産 ウイスキー を詰 め 替 え、穴 を ガラス 細工用 の バーナー で 加 熱  して ふさ ぎ、偽 の ジ ョ ニ  黒の 瓶 を作りあげ、 バー  の客に提供 していたのが発覚 した。

それまで はこの方法により 「 ジ ョ ニ  黒 」 の 味が分からぬ 金持 ち 連中 から、笑 いが止まらないほど 毎日 稼 いだといわれている。

高い カ ネ を払って安 い 国産 ウイスキー を飲まされた文壇 ・ 映画監督 などの顧客は、芸者 あがりの  マ ダ ム の あ く ど い 商 売  に  怒 り 心 頭 に 発  し た が、彼女の 色香に迷い、味の違いに気付かなかった 「お の れ の 不 明 」 を 恥 じ る べ き で あった。

顧 客の信用を失墜 した店は つぶれ、彼女は世間から消え去った。ところが数ヶ月前の新聞 に偶然 上羽 秀 ( うえば ひで ) の 死亡記事が小さく出ていたのに気付 いた。 彼女は 9 0 歳 ( ? ) で 死 んだが、世間では 「 偽 洋 酒 事 件 」  のことなど覚えている者は、 も は や 少  数 に  な っ た が、  私もそろそろ 「 お迎え 」  に備えて、 「 終活 」 を しよう。

 

2 : 羊 頭 狗 肉 ( 商 業 道 徳 の 欠 落 )

 

中国のことわざに羊頭狗肉 ( ようとう  く に く ) があるが肉屋の店頭に羊の頭を掲げ、実際には 安 い犬の肉 を売ることであり、表示 と 実質が 一致しないことの たとえである。

 

今回の 阪急 ・ 阪神 ホールディングス 系列  ホテルの レストラン での食材偽装表示は、社長がいくら 偽 装ではなく 「誤 表 示」 だと 弁 解 しても 、リッツ ・ カールトン ホテル を含め 2 3 店舗 ( レストラン ) の 4 7 品目で表示 と食材内容とが異なるのでは、世間 の 納 得 を 到底 得られるものではない。

 

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たとえば 1 キログラム 2 , 0 0 0 円もする、京都産 「九条 ネ ギ」 使用  と メ ニ ュ ー  に書きながら、実際は産地の異なる 1 キロ 8 0 0 円の  「 青 ネ ギ 」 を何年も前から使用 し続けて いた。

 

ところで 2 0 0 7 年には賞味期限切れの食品使用や、 客が食べ残 した料理 使い回 し が発覚 して、有名料亭の 船場 吉兆 ( せんば きっちょう ) が翌年 廃業に追い込まれるという事件が起きた。

 

阪急 ・ 阪神 ホールディングス の系列企業には 船場 吉兆や前述の バー 「 おそめ 」 同様に 商 業 道 徳 な ど 存 在 せ ず、あるのは 利 益 を挙げる こ と のみであった。 長年続いた食材偽装の発覚 により、阪急 ・ 阪神系列 ホテルに対する信用が、大き く 失墜  したことは間違いない。

 

江戸前期の 浮世草紙作者の 井 原 西 鶴  ( さ い か く ) が、著作 「 世 間 胸 算 用 」  ( せけん むねさんよう ) の中で、「 金銀は商人の氏 ( う じ )、素性 ( す  じょう ) な り、商人の 銭 ( ぜ に ) 無 いの んは、首無 いのん と 一緒 や 」 と 商 人 ( あきんど ) の 処世観というか 金銭哲学 を記  していた。

 

大阪人には 江戸時代 から 現代 に至るまで、旺盛な 拝 金 主 義 や 利 益 第  一主 義が D N A の中に、受 け継 がれているのに 違 いない。  ...

 

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