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2015年2月10日 (火)

危険な11分間、台湾の飛行機墜落事故

2015 年 2 月 4 日10:56 ( 台湾標準時、日本時間11:56 ) 、58 人が乗った 台湾の トランスアジア航空 235 便が、台湾北部の台北松山空港を離陸し金門島の金門空港に向かおうとしたが、離陸直後に エンジンが故障したために、台北市南港区の基隆河に墜落した。

Taiwan2

今から 30 年近く前のこと、世界の飛行機事故の 74 パーセント 着陸前の 8 分間、離陸直後の 3 分間、つまり離着陸時の 11 分間に起きるという航空機事故の調査結果が発表された。

パイロットであれば誰もが知っている、クリティカル イレブン ミニッツ ( Critical Eleven minutes、 危険な 11 分間   ) という言葉である。

http://www.hey.ne.jp/~ok/jumon.htm#buriifu

もしこの 11 分間に  エンジンなどに故障が起きたらどうするのか?。機長は 「 安全に飛ぶこと 」 が第一であり、トラブル・シューティング( troubleshooting、故障に対する処置 )は 二の次にするのが 鉄則である

民間航空会社の機長は 6 ヶ月ごとに、副操縦士は 1 年ごとに フライト  ・  シミュレーター (  Flight Simulator  、 模擬飛行装置 ) を使用して、実機と変わらぬ操縦技量  知識の審査を受けるが、その審査項目には 離陸直前 ・ 直後の エンジン故障が必ず含まれる

写真は 6 軸の自由度を持つ フライト ・ シミュレーター  で、操縦席と全く同じ計器 ・ 装置を配列し室内のパイロットの操縦桿の動きに合わせて計器示度も変化するが、上昇降下旋回の際に シミュレーターも同様な動きを体に伝える。

操縦席の後方には教官席があり各種緊急事態の発生を、飛行計器 ・ エンジン計器などに表示させるようになっている。これ以外にもたとえば電気系統の火災の想定には、操縦室内に人体に無害な煙が発生する シミュレーターもある。

B777_sim_aug6c

さらに上空での油圧系統の故障 ・ エンジン火災 ・ 客室の与圧喪失による緊急降下 ・  50  パーセント以上の エンジン出力喪失 ( 双発機であれば、一つの エンジン故障、3 発機であれば 二つの エンジン故障 ) などの事態が想定され、この状態で安全に着陸できなければ審査は不合格となり、機長資格を失う事態になりかねない。

トランスアジア 航空 235 便について報道された下記の録音の様子から、C V R ( Cockpit Voice Recorder 、操縦室内の会話、無線交信を記録した ) ブラックボックス内の記録と思われる。時間は 4 日 現地時間。

10 時 41 分 14 秒
記録開始

10 時 51 分 13 秒
松山空港管制塔が離陸を許可

10時 52 分  38 秒
操縦室内で失速警報音が鳴る。離陸後5秒後の警告だった。同時に主要警告音が鳴る。

10時 52 分 4 3 秒
搭乗員が 第 1  エンジンの停止に言及

10 時 53 分 0 0秒
第 1  エンジン再始動のための会話

10 時 53 分 07 秒
搭乗員が 第 2 エンジンの停止に言及

10 時 53 分 12 秒
最初の失速警告音

10 時 53 分 34 秒
乗組員が松山空港の管制塔にメーデー ( 緊急事態発生 ) を宣言。救助を求め エンジン停止も告げる。

10 時 54 分 09 秒
搭乗員が何度も 「 エンジン再始動 」 と叫ぶ

10 時 54 分 34 秒
操縦室内に再び警告音。0.4 秒後に不明な音

10 時 54 分 36 秒
飛行記録が停止。

推定される事故原因

管制塔の離陸許可から墜落まで 3 分 22 秒であった。事故原因の可能性としては右 エンジン ( 第 2 エンジン ) が故障したのに、機長が エンジン の出力計器を チェック せずに  生きている左 エンジン ( 第 1 エンジン )  を停止させてしまい、その過ちに気付き 左 エンジン ( 第 1 エンジン ) の再始動を試みた可能性が極めて高い。

Taiwan

ちなみに

離陸直後にエンジンが故障した場合でも、火災が発生しない限り急いで エンジンを停止させる必要はなく 、繰り返し述べるが  フライ ・ ファースト  ( Fly First 、安全に飛行を続けること )  が第一である

エンジン出力の左右不均衡を方向舵の トリム ( Rudder Trim、垂直舵の釣り合い ) で修正し、飛行姿勢を安定させた後に 副操縦士と共に故障した エンジンを確認し、シャット ダウン ( Shut Down、停止  ) 操作をすべきであった。

狼狽 ( ろうばい、あわてふためくこと ) した機長 廖 建宗 ( リャオ ・ ジエンゾン ) の、危険な 11 分間における エンジン停止の操作 ミスにより、正常な エンジンを停止させたことが大惨事を招いた

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コメント

台北市長さんは、「機長の判断よくビル等に衝突する大惨事を免れた、機長に感謝」の報道を記憶してるが。小生もそう思つたが?少しお利口さんになった。

上手に川中に不時着させたものだと、感心していたのに、空のプロの眼は厳しいですね。我がアマチャン人生が恥ずかしいです。可能なら(閻魔さまの許しが得られるならば)もう一度始めから人生を
やり直したいです。

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