航空事故調査の後進国、日本
まずは下記の ブログを読んで頂こう。
http://good-old-days.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-b742.html
日本は 1956 年に国連に加盟すると共に、その専門機関である I C A O ( 国際民間航空機関 ) に加盟したが、同時に シカゴ 条約 ( 国際民間航空条約 ) を批准した。
上の写真は平成 21 年 ( 2009 年 ) 3 月 23 日に フェデックス ( Fedex ) 80 便 ( 貨物機 ) が成田空港における着陸に失敗し、炎上した死亡事故の様子。
その条約の Annex 13 - Aircraft Accident and Incident Investigation. ( 第 13 附属書、航空機事故及び インシデント調査 ) によれば、航空機事故 ( インシデント ) 調査の唯一の目的は、将来の事故又は重大 インシデントの防止である。
罪や責任を課するのが調査活動 ( 日本では 運輸安全委員会がおこなう航空事故調査 ) の目的ではない。と明確に定められている。
しかし日本では全く違う。航空事故と交通事故とはその取り扱いにおいて同一であり、シカゴ条約 ( 国際民間航空条約 ) 附属書に盛られた将来の事故や重大な インシデントの防止に役立てようとする目的などはその 「 カケラ 」 もなく、あるのは犯罪の立件に必要な証拠の収集である。
つまり運輸安全委員会の航空事故調査とは、 検察庁の下働きに過ぎない 。
日本で パイロット ( 外国人 パイロットを含む ) が航空事故を起こすと、どのような法的処分を受けるのか?。
1 : 「 刑法 」 211 条の業務上過失致 ( 死 ) 傷罪の対象となり、5 年以下の懲役若しくは禁錮又は 100 万円以下の罰金が予想される。
しかし取り調べの際には警察官から必ず ( 刑事訴訟法第 198 条第 2 項 )、に定める 黙秘権の存在 ( 言いたくないことは言わなくてもよい旨 ) を告げられる。
2 : ところが警察の取り調べとは別におこなわれる国交省運輸安全委員会の調査官による事情聴取に対しては、建前上は犯罪捜査ではないので、自分に不利益な供述を強要されない権利である 「黙秘権」 は告知されない 。
それどころか運輸安全委員会設置法によれば、質問に対して関係者が忌避し、又は虚偽の陳述をした場合には、三十万円以下の罰金に処すると規定されている。
後述するがこのような状況下で運輸安全委員会が作成した事故報告書が、検察側の証拠として裁判の場に提出されることになる。これについて、疑問を感じるのは私だけではないと思う。
3 : 「 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律 」
第 6 条 過失により、航空の危険を生じさせ、又は航行中の航空機を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、若しくは破壊した者は、十万円以下の罰金に処する。
6 条 2 項 その業務に従事する者 ( 乗務中の パイロット) が前項の罪を犯したときは、三年以下の禁錮又は 二十万円以下の罰金に処する。
4 : 航空法違反 行政罰として 30 万円の罰金が課せられる。
5 : 事故により会社に損害を与えたため、「 航空会社内規則 」 による、解雇、機長資格 の停止、剥奪、副操縦士への降格などの可能性がある。
6 : 場合によっては会社と共に、乗客から 「 民法 」 709 条の 「 不法行為責任 」 について 損害賠償訴訟を起こされる可能性 もある。
繰り返し述べるが最大の問題は シカゴ条約 ( 国際民間航空条約 ) 第 13 付属書では、( 運輸安全委員会 ) の事故調査で得られた口述、交信情報、個人情報などを、事故調査以外の目的に使用することを禁じている。
これは、事故調査機関 ( 運輸安全委員会 ) の収集した情報が、刑事手続に利用されることになると、事故の関係者が、責任追及を恐れて、自らにとって不利な証言を控える可能性があり、原因究明に支障をきたすことが危惧されるためである。
しかるに日本では警察庁長官と国土交通省事務次官との合意文書に基づき、航空事故調査報告書を 証拠採用することが 裁判実務上 一般化している。
つまり欧米諸国ではやらないことが、日本においておこなわれ、 パイロットを処罰する法廷に航空事故調査報告書が検察側証拠書類として堂々と提出されている。これは航空事故調査における、 日本の後進性を示す証拠以外の何者でもない 。
アシアナ機の機長らは 4 月 17 日に警察 ・ 安全委員会調査官による事情聴取を終えて 18 日に帰国したが、日本における 裁判の度に法廷に出頭することになっている。
欧米諸国ではなく日本において航空事故を起こした身の不運を、アシアナ機の パイロットは恐らく嘆いているに違いない。
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