事故原因は ダック・アンダー
広島県三原市の広島空港で、14 日午後 8 時 5 分ごろ、韓国 ・ 仁川 ( インチョン ) 発の アシアナ航空 162 便 ( エアバス A 320型機 ) が着陸時に滑走路をそれて停止した滑走路逸脱事故が起きた。
気象庁によると、事故当時の広島空港の気象状況は北北西の風 1〜 2 メートル程度で、運航に影響を与えるほどの強風は吹いていなかった。ただ、地表付近に厚い雲があり、霧も出ていたことから、乱気流の発生は考えにくい。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150415/k10010048721000.html
パイロットにとって低視界 ・ 低雲高時の進入着陸に際して注意すべきことは、専門用語で ダック ・ アンダー ( Duck Under 、あひるが エサ を取るために、ひょいと頭を下げること、つまり機首を下げて高度を下げる操縦操作 ) を しないことである。
滑走路へ進入中に滑走路灯の一部 あるいは進入灯が見えた場合に、現在の降下経路 ( 決心高度 ) よりも少し下方に行けば、 よりはっきりと 滑走路が見えるのではないかとの 誘惑に駆られる。
それに負けて ダック ・ アンダー して 降下 経路 ( 決心高度 ) よりも下方に高度を下げると、そこには 危険な障害物が待ち構えている。
旅客機の正しい着陸とは降下角 2.5 度ないし 3.0 度で 滑走路末端上 を 高度 50 フィート ( 15 メートル ) で 主車輪を通過させることである。
今回の アシアナ機の場合は 滑走路末端から 325 メートルも手前にある、I L S ローカライザー ( 計器進入着陸用 ) の 高さ 6.4 メートルの アンテナ に車輪を引っかけてしまった。
通常は 30 メートル 以上の高度で通過すべき所を---。
機長が誘惑に負けた証拠である。
これ以外に アシアナ航空の大事故といえば、 2013 年 7 月に仁川空港から サンフランシスコ に着陸の際にも、通常の着陸地点より数百 フィート 手前に尾部を激突させ 機体が炎上し死者 3 名 負傷者 187 名の大事故 を起こしている。
その時操縦に当たっていた副操縦士は総飛行時間 9 千時間あったが、B-777 型機には 43 時間しか乗っていなかった。機長は総飛行時間 1 万時間であったが、20 日前に教官資格を取ったばかりであった。
総飛行時間よりも、その型の飛行機の飛行時間の方が 安全に関し、より重要である。
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コメント
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キャプテンのブログは常に的確冷静なコメントです。
この事故も、テレビでは差し障りのないコメントばかりです。
まさに、溜飲が下がる思いです。
ありがとうございます。
投稿: | 2015年4月16日 (木) 16時14分
お褒め頂きありがとうございます。これは自分なりの経験から、最も可能性が高いと思われる事故原因を推定しただけです。
当たるも八卦、当たらぬも八卦です。テレビの航空評論家の中には、顔見知りの人もおりました。
投稿: 管理人 | 2015年4月16日 (木) 20時42分
キャプテンこんにちは。しかし週末は雨ばかりですね技能未熟、精神疾患等々いくらハイテク機と言ってみても最後は人の手にかかってる訳でして、飛行機を多用する身としては少々複雑です。いろんな方がいろんな理屈で分析してみても近時事故は増える一方で、我々利用者も安全コストは相応に負担しなければと考えさせられました。早い安いは牛丼だけでオッケーです。
投稿: 橋本 | 2015年4月19日 (日) 17時40分