小型機の事故原因に思う
1 : 飛行目的がパイロットの慣熟( Familiarization )であろうと遊覧飛行であろうと、事故原因とは直接関係がない。
2 : 機体の所有会社 ・ 整備担当会社 ・ 運航担当会社がそれぞれ異なるのは小型機の運航ではよくあることで、事故原因とは直接関係ない。下の写真は事故機ではなく、他社の同型機。
3 : 当日の気温が 30 度 ( ISA+ 15 度 ) だろうが 35 度 ( ISA+ 20 度 ) だろうが、許容最大離陸重量が減少 ( もしくは離陸距離が伸びる ) するものの、事故の原因とは直接関係ない。
I S A とは I C A O ( 国際民間航空機関、 International Civil Aviation Organization ) の定める国際標準大気 ( International Standard Atmosphere ) のこと。
なぜなら機長が当日の飛行計画作成の際に、当然 ウエイト & バランス( Weight & Balance、機体重量と重心位置 ) を確認し、滑走路長 800 メートル、標高 42 m ( 139 フィート )、当該 外気温度における 許容最大離陸重量以内であることを確認するはずだからである。
4 : 伊豆大島まで往復 1 ~ 2 時間前後の フライトに、燃料を 5 時間分 積もうが、事故の原因とは直接関係ない。
5 : 小型 プロペラ機 パイパー ( PA 46-350 P ) の事故機は、 1989年 ( 平成元年 ) に製造され 27 年経過した古い機体 のようであるが、車 と同様に古くなると各部の経年劣化 ・ 金属疲労による故障が生じる可能性が高くなる。
2004年10月、札幌市の丘珠( おかだま )空港で着陸に失敗して機首部分から接地する事故を起こし、修理後の2005年には、自衛隊機に異常接近する トラブルが起きたそうだが、今回の事故とは関係ない。
6 : 機長が当日の離陸前に エンジンの ランアップ ・ チェック ( Run up check、離陸出力に近い エンジン出力を出して エンジンの回転数 ・油温 ・シリンダー温度などの計器示度の確認 ) をしなかったとしたら、離陸滑走中の エンジン故障とは 大いに関係がある 。写真は同型機の フライト ・ シミュレーターの操縦 ・ エンジン計器。
7 : 私は海上自衛隊で 3,500 時間、民間航空で 14,500 時間の、合計 1 万 8 千時間 飛行したが、パイロットにとって最も嫌な離陸直後の エンジン故障 ( 出力喪失 ) を経験したのは、 3 6 年間の パイロット生活で僅か 1 回だけであった。
これがもし単発機であったならば私の人生はこれで終わりの可能性もあったが、3 発機のため 出力に余裕があったので、航空管制上の緊急事態を宣言せずに出発空港に戻った。
http://www.hey.ne.jp/~ok/jumon.htm#buriifu
8 : 機長はそういう事態に備えて半年毎に フライト ・ シミュレーター ( Flight Simulator、模擬飛行装置 ) による操縦技量審査を受けているが、 飛行機の エンジンはそれほど信頼性があり、まともな会社であればそのための整備 ・ 点検を毎日十分におこなっている。
9 : 私の予想する事故原因は、 ( イ ) 機長の怠慢による離陸性能の確認を含めた離陸前の チェック ミス、もしくは ( ロ ) 離陸滑走中の エンジン故障である。