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2016年2月29日 (月)

不思議な話 ( その1 )

2月23日午後、新千歳空港で、乗客乗員 165 人が乗った日本航空の旅客機が誘導路から駐機場へ走行中に右 エンジン から煙が出て、乗客全員を緊急脱出させた。地元の消防によると、乗客のうち女性3人が腰や首の痛みを訴え、病院で手当てを受けた。

J A L  の小型 ジェット機が ランプアウト ( Ramp out ) 後に視界不良のために離陸待ちを したが、主翼に雪が積もったので除雪するために駐機場に戻る途中に計器に エンジン 故障を示す表示が出た。それと共に機内の エアコン から煙が出て焼ける臭いがしたので、乗客に緊急脱出を命じたという話である。

Jalevac_2

たとえ雪が激しく降っていても、飛行機が誘導路で待機 していても、安全に離着陸できることを下記の動画で見て頂こう。

https://www.youtube.com/watch?v=D6OjSd3ojHE

https://www.youtube.com/watch?v=j2WcvQr1wCg

私は 3 6 年間飛行機に乗っていたが、J A L 機のように地上で雪や氷により エンジン が故障 し 緊急脱出 した話 など、これまで日本の航空界で聞いたことがない。 それほど珍 しい出来事であったが、考えられる原因は 二つある。

その 1 は右側 エンジン の何らかの故障
その 2 は パイロット のエンジン 防氷装置 ( エンジンの Anti-ice System ) の操作 ミス がなかったどうかである。

端的に言えば エンジン の防氷装置を当時使用 していたかどうかである。これについては、いわゆる  「 テレビの航空評論家たち 」 も触れていなかった。

吹雪で離陸ができない状態で 誘導路で待機中に、 エンジン の防氷装置を 「O N 」 に    していたかどうかである。

「 O N 」 にすることにより  エンジン の 「 空気取り入れ口 」 や 「 スピナー ( Spinner )」 への着氷を防ぐことができる。

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ところで 34 年前の 1982 年 1 月 13 日午後 4 時頃のこと、ワシントン D. C. にある ナショナル 空港から フロリダ 州  タンパ に向かう エア ・ フロリダ 航空の 90 便、ボーイング 737 型機 ( 今回の JAL 機は 737-800 型 だが、これは 旧型機の-200 ) が、ナショナル 空港を離陸直後に、滑走路端から僅か 1.2  キロメートル のところにある真冬の ポトマック 川に墜落 した。

事故原因は エンジン の防氷装置の スイッチ の入れ忘れであったが、下記の 三つの ブログ を参考にお読み頂きたい。

http://good-old-days.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_e975.html

http://good-old-days.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_a797.html

http://good-old-days.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_e10f.html

J A L の事故原因が、速やかに解明されることを望む。

2016年2月19日 (金)

噴火と航空機 ( 最終回 )

国連の下部機関に国際民間航空機構 ( I CAO、International Civil Aviation Organization、日本では イカオ または アイカオ とも呼ぶ ) という組織があり、本部は カナダ の 東海岸に近い ケベック 州の モントリオール にある。

私は昭和 52 年 ( 1977 年 ) 秋に 計器進入自動着陸 の国際基準 ( カテゴリー 2、3 A、3 B、3 C ) 制定に関する国際会議に日本政府代表の アドバイザー として出席し、3 週間滞在したことがある。

民間航空条約の 44 条の 8 項にある 「 国際航空における飛行の安全を増進すること 」 の見地から、I CAO の提唱により航空機の火山灰による災害を防止 ・ 軽減するため、世界に九つの 航空路火山灰情報センター ( VAAC:Volcanic Ash Advisory Centre )が創設された。

1 : アラスカ 地域、アンカレッジ F I R ( Flight Information Region 、飛行情報区 )、 アメリカ海洋大気庁が担当
2 : アルゼンチン地域、ブエノスアイレス  アルゼンチン 国立気象局担当
3 : オーストラリア地域、ダーウィン、 オーストラリア 気象局担当
4 : ロンドン F I R ( 飛行情報区 ): 英国気象庁担当
5 : カナダ地域、モントリオール FIR(飛行情報区):  カナダ気象局担当
6 : 日本地域、東京 気象庁担当。黒い三角は平成 26 年 ( 2014 年 ) 7 月 24 日より、東京 VAAC から発表された VAA の火山。

日本国内についていえば、全国で110の活火山を対象として、当たる当たらないは別にして、噴火警報 ・ 予報を発表している

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7 : フランス地域、トゥールーズにある フランス気象局担当
8 : アメリカ地域、ワシントンにある アメリカ海洋大気庁担当
9 : 赤道以南の南太平洋地域、ニュージーランドのウェリントンにある ニュージーランド   気象局担当

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ロシア北部および北極地域、南太平洋および南極地域の一部を除き、VAAC はほぼ世界全域を カバー して、航空機の運航に危険を及ぼす火山の噴火活動の情報を提供するようになった。

Chirivoluca

上の写真は南米の チリ にある、標高 2,240 メートル の プジェウエ ( Puyehue ) 火山が2011年 6 月 5 日に、半世紀ぶりに噴火した時の様子で、火山の噴煙は高度 1 万 メートル ( 3 万 3 千 フィート )  にまで上昇 した。

火山灰は時には気流に乗って何百 キロ も移動拡散するので、航空機にとっては重大な問題である。

2016年2月15日 (月)

噴火と航空機 ( その 3 )

英国航空機のように飛行中に火山の噴煙により、全 エンジンが フレーム アウト ( Flame out、消火 ) し出力を失ったらどうするのか?。まずは機体が失速しないように直ちに降下の姿勢をとって速度を保ち、噴煙層から離脱した後に エンジンの再 スタート をしなければならない。

写真は事故に遭遇した 747、但し場所は ジャカルタ ではなく、サンフランシスコ 空港で撮影されたもの。

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しかし高高度において飛行機の風圧 ( 気流 ) を利用して全 エンジン を ウインドミル ( 風車、かざぐるま ) スタート ( Windmilling start ) するのは、空気が薄いために容易ではない。

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たとえば高度 1 万 メートル (  3 万 3 千 フィート ) における大気圧 ( 空気密度 ) は地表の 28 パーセント しかないので、仮に 270 ノット ( 秒速 135 m ) の降下速度で飛行しても、 空気密度が地表の 40  %  以上になる高度 2 万 5 千 フィート ( 7 千 500 m ) より低い高度にならないと 、ウインドミル ・スタート は困難であると 一説に言われている。

毎分  3,000 フィートの降下率を保って滑空降下したとしても、山岳地帯でなければ地上に到達するまでには 10 分以上の時間的余裕がある。再 スタートの方法自体は簡単で  チェックリストに従い、

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1 : スラスト ・ レバー ( Thrust Levers、車で言えばアクセル ) を アイドル ( IDLE、閉位置 ) にする。

2 : エンジン の タービン は滑空中の風圧により回転しているが、N 2  ( 2 軸 エンジン の高圧 ローター の回転数 ) の示度が 20 パーセント以上であれば、点火 スイッチ を 「 オン 」  にして、燃焼室内で火花を出す。

3 : そこへ 燃料 スイッチを 「 オン 」 にして燃料を流せばすぐに点火することにより エンジン の出力が得られ、エンジン に故障がなければ再 スタートは終了する。

英国航空機の場合もどうにか エンジン の再始動に成功し、ジャカルタ の スカルノ ( 初代大統領名、タレント の デビ、根本七保子 は彼の第三夫人だった ) ・ ハッタ ( 初代副大統領名 ) 国際空港へ緊急着陸に成功したので死傷者は出なかった。

それまで何の対策も採られていなかった航空路における火山の噴煙に対する対策が、世界的に急がれるきっかけとなった事故である。( 続く )

 

2016年2月10日 (水)

噴火と航空機 ( その 2 )

火山の噴火による噴煙 ( 火山灰 ) は木材などを燃や してできる 「 灰 」  などとは成分や性質が異なり、「 火山 ガラス 」 ・ 「 鉱物の結晶 」 ・ 「 岩石の細片 」 などであり、これらは既に述べた航空機の 「 前方 ガラス 」  の擦り ガラス 化や  「 エンジン 停止 」 、 滑走路に積もった場合には 「 離陸や着陸 」 に悪影響を及ぼす。

[その1 ]

1982 年に インドネシア の ジャワ 島にある ガルングン 山 ( Galunggung、2,168 m ) の近くを飛行中の 英国航空  9 便 ( ボーイング 747 ) が火山灰の雲に入り、4 基の エンジン のすべてが 一時的に停止する トラブル に見舞われた。

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この事故は高度 37,000 フィート ( 約 11,300 メートル ) で起こったものであり、高度 1 万 メートル 以上に達する火山の噴煙は世界中で数年おきにあり、高々度を飛行するからといって安全だとは限らない。

[ その 2 ]

1989 年 12 月 15 日、成田から オランダの首都 アムステルダム の スキポール 空港へ向かう途中の KLM オランダ航空 867 便が、経由地の 米国 アラスカ 州 ・ アンカレッジ 国際空港への降下中に、 前日に起きた アンカレージ の南西 170 km にある活火山、リダウト山 ( Mount Redoubt、3,108 m ) の噴煙に遭遇 し、エンジン が 一時停止 した。

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[ その 3 ]

2010 年 4 月 14 日のこと、アイスランド にある エイヤフィヤトラ 氷河 ( 島の山の氷河の意味 ) で 二度目の噴火が起こり、火山灰が上空約 1 万 6000 メートル に達 して南下 し、イギリス 北部に到達後、欧州北部と中部のほぼ全域に到達 した。

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( 氷河に覆われた火山からの噴火で、写真は火山学者 )

広範囲に拡散 した噴煙に遭遇 し飛行中の航空機の エンジン が停止する事態を避けるため、4 月 18 日には約  30  ヶ国で空港が閉鎖され、ヨーロッパ の空の交通は大混乱となった。( 続く )

 

2016年2月 6日 (土)

噴火と 航空機 ( その 1 )

2 月 5 日午後 6 時 56 分頃、鹿児島市の桜島が噴火して噴煙の高さが火口から 2,200 メートル に達し、気象庁は噴火警戒 レベル を入山規制の 3 に引き上げた。

国内で活火山の噴火の影響を直接受け易い空港といえば、阿蘇山に近い熊本空港と、空港への 「 計器進入経路 」 が桜島の噴煙を受け易い鹿児島空港である。

両方の空港とも ジェット機が就航するために市街地に近い熊本の 「 健軍 」 や、海岸にあった 「 鴨池 」 から山に近い台地 ( 鹿児島空港は 霧島市 溝辺町 標高 276 m  、  熊本空港は 上益城郡 益城町 193 m ) に長い滑走路を作り移転  した。

下図は鹿児島空港の 滑走路 3 4  へ計器進入 ( Instrument Approach  ) をする場合の進入図 ( アプローチ ・ チャート、Approach Chart ) であるが、冬に多い西風が吹けば時には火山の噴煙の近くを飛行機が着陸のために降下することになる。

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昼間や晴天の際は桜島の噴煙を目視できるが、夜間や悪天候の際には見えずに、煙の臭いを嗅いだこともあった。

火山活動が活発なある年のこと、ある機長は鹿児島空港に着陸のために計器進入をおこなったが、悪天候のために 「 手動 」 ではなく  「 自動着陸装置 」 を使い、計器進入着陸とその後の着陸滑走 ( Landing roll out ) を 「 自動 」 でおこなった。

着陸後に気が付くと操縦席の前方の窓 ガラスが 「  擦り ガラス 」 状になっていて、前方視界がかなり失われていたので、側方の窓ご しに見ながら 飛行機を空港 ターミナル へ地上滑走させたとのことであった。

Cockpit_windows

前方窓が 「擦り ガラス」 状になった原因は噴煙 ( 火山灰 ) の中に存在する直径 2  ミリメートル 以下の ガラス 質や岩の細片との 「 衝突による傷 」 であり、窓 ガラスの損傷だけでなく、最悪の場合には ジェット エンジン が停止する場合もある。

日本では長年火山の噴火や地震の予知に膨大な予算を費や して来たが、今回も爆発的噴火に関する事前の情報は何も得られなかった。残念なことである ( 続く )。

 

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