英語の トラブル
単独飛行ができるようになると、最初に習うことは スピン ( 錐もみ ) からの回復操作であった。機種により違いがあるものの、海軍名 S N J ( 空軍名 T-6 ) という単発機は 失速特性が悪く、失速すると必ず右に傾き錐もみ状態になった。
ある日のこと アクロバット の訓練飛行の際に後席の教官から、Show me a
Spin to the left. ( 左回りの スピン をやって見ろ ) と指示を受けた。 その時に丁度 他機の無線通信と音声が重なったので、確認のために 私が Spin to the left, sir ? ( 左回りの 「 錐もみ 」 ですか? ) と聞くと
教官が R ight と答えた。
難 しい左回りではなく、易 しい 「 右回りの錐もみ 」 をなぜやらせるのか疑問に思ったが、指示 (?) のままに機首を上げたままで エンジン の出力を絞って失速するのを待った。
ガタガタ と機体に振動を感じたと思ったら 機体が急激に右に傾くと共に機首が下に落ち、「 右に 錐もみ 」 状態になりながら機体が落下 して行った。
二回 まわったところで回復操作を行い、回転方向とは逆方向の ラダー ( 方向舵 ) を 一杯に踏み操縦桿を前に倒すと回転が止まったので上昇姿勢に移った。すると教官から
God damn it 、I said spin to the Left not right.
ガッデメ ( 直訳すると 神がそれを地獄に落とす ) つまり なんてこった、こんちき しょう 左回 りの スピン ( 錐もみ ) に入れろと言ったろ !
と文句を言われた 。
私が Spin to the left, sir ? と尋ねた際に、教官が Right と言ったのは
That is right. ( その通り ) の意味であり 、渡米後 間もない時期のため言葉の トラブル から Spin to the 「 Right」. の意味に誤解 して しまったのが原因であった。
アメリカ人 訓練生の中には ガッデメ のような カスワード ( Coarse word、 下品な言葉 ) を、飛行教官から浴びせられると意気消沈する者もいたが 、学校英語 しか知らない私には、意味が ピント 来なかったせいか ショック は無かった。
英語の トラブル については、 次回でも述べることにする。 操縦教官の多くはいわゆる 戦闘機乗りであり、威勢がよく 「 柄が悪い連中 」 もいたが、中には空母の着艦資格を持つ テイル ・ フッカー ( Tail hooker ) もいた。
上の写真は航空母艦に着艦する艦上戦闘機であるが、尾部に突き出ているのは飛行甲板上に 三本張られた拘束装置の ワィア に引っかけて機体を停止させる テイル フック ( 尾部の フック ) であり、空母 パイロット のことを別名 テイル ・ フッカー とも 呼ぶ。
ところで 1991 年に ラスベガス の ヒルトン ホテル で 二日間にわたり行われた テイルフック コンベンション ( Tailhook Convention、 空母 パイロット 連盟 の定期総会 ) の際には、参加者のうちの
83 人の女性と 7 人の男性 が海軍士官やその O B から 性的攻撃 ( Sexual assault )と性的嫌がらせ( Sexual harassment ) を受けるという海軍の 大 スキャンダル が起きた。
ここでは リンク を張れないので、詳しくは下記を、コ ピー & ペイス ト して読まれた し。
https://en.wikipedia.org/wiki/Tailhook_scandal
から
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