救急車の初乗り
私は数日前から体の調子が悪 く38度台の熱が続 いていたので、かかりつけ医( 内科 ) の診察を受けたところ、膀胱炎の疑いがあるというので、抗生物質の点滴を受けた。
男性の膀胱炎とは珍しい病名だが、八十三 歳の私には女性と接したことなど 20 年近くなく、腎臓には以前から結石があったものの、石の 一部が腎臓から細い尿管へ激痛を伴って移動 し、膀胱に落ちた感覚もな く、発病の原因は不明であった。
ところが 7 月 20 日の明け方に 39 度 5 分の高熱に襲われために、生まれて初めて救急車を呼ぶ事態 となった。家の前に来た救急車に 2 名の隊員に抱えられて乗り込み ストレッチャー ( Stretcher、担架 ベッド ) に寝かされたが、それから患者である私の容態の確認や受け入れ先の調整などで、10 分程度待たされた。
車が走り出すとその乗り心地の悪さに驚 いたが、 あたかも トラック の荷台に乗せられているようで地面からの震動が体にもろに感 じられた。車内には各種の医療器具があり、患者の心電図・血圧などの情報を得られるようになって いた。
市内にある病院の救急外来に搬送されたが、直ちに入院することとなった。そこでは胸部の X 線撮影を初め、下腹部の C T スキャン ・ 血液検査 ・ 検尿の結果から膀胱炎の他に 熱 中 症 の 痕 跡 が あ る と い わ れ た。
家 では 毎日 昼夜 冷房 を 入 れた 室内 にずっと 寝 て いたのに、熱中症 とは 合点 が 行 かない話ではあった。
ところで病状が好転 し 院内 を 散歩 できるようになると、ほかの 階 では 他 に 行 き 場所 がな く 、家族が 見舞 いも 来 な い 認知症 の 老 人 ( 多 く は 女 性 ) たちが 入院 している 姿 を 見 た。
人生の 終 末 期 について 考 えさせられる 姿 だが、これが 今回 私 にとって 5 日間 の 入院生活 で 得 た 最 大 の 収 穫 で あ っ た。下図は 「 お しめ 」 を交換 してもらって いる、認知症の入院患者。