ロールスロイス 製 エンジン 故障、雑感
全日空によれば、ボーイング 787 型機 の エンジン ( ロールス ロイス 社製の トレント、Trent 1000 ) に 製造上の不具合 があり、全機を改修すると 8 月 25日に明らかに した。26日には羽田空港と、大阪 ・ 広島 ・ 福岡を結ぶ計 9 便が欠航 し、約3,100人が影響を受けた。
9月末まで 1 日 10 便程度、計 300 便以上が欠航 し、影響は 10 月以降も続く見通 しで、損失は 1 日当たり 5 千万円になると予想 している。
[ トラブルの 内容 ]
飛行中に、エンジン の異常振動を示す表示が出て引き返す便が相次ぎ、全日空と、エンジンメーカー の英 ロールスロイス 社が調査 したところ、高圧圧縮機 ( High Pressure Compressor ) の タービン ・ ブレード ( Turbine blade、タービン 羽根 ) の 一部が腐食により、根元から破断 したことが判明 した。
これは全日空機だけに起きた不具合ではなく、ロールスロイス 製の同じ タイプ の エンジン を使用 している他社の飛行機 でも起きている製造上の欠陥であった。
全日空では所有する 787 型機 全 50 機の エンジン を 5 機ずつ取り下ろ し、問題の部品を新 しいものに交換することに した。破断防止対策が施された新 しい部品が届くのは来年以降だが、当面は未対策でも新品部品に交換すれば問題ないと している。
ちなみに 全日空は787 型機を国際線で約 4 割に当たる 26 路線に使っている。また、787 を現在 5 0 機持ち、さらに 3 3 機を発注済みで、東京 オリンピック の年である 2020 年 ( 平成 3 2 年 ) 度中には、 787 型機だけでも 8 3 機の フリート ( Fleet )を保有する予定。
[ 古い話 ]
軍用機 メーカー の ロッキード 社が ベトナム 戦争の終わりが予想されたため、民間機の製造販売に活路を見 いだそうと、 トライスター ( Tr i Star 、三つの星 ) と名付けた 三発機 を製造 し各国に売り込みを図った。
しか し老舗 ( しにせ ) ダグラス 社の DC-10 型機の販売実績に大きく水をあけられたため、売り込みに ワイロ 戦術を採り、日本に 3 0 億円を バ ラ 撒くまくことに した。
4 0 年前の昭和 51 年 ( 1976 年 ) のこと、日本の政界を揺るがせた ロッキード 事件が起きて、田中角栄元首相が 5 億円の受託収賄で逮捕され、一審 ・ 二審とも懲役 4 年、追徴金 5 億円の実刑判決を受け、最高裁へ上告中に死亡 した。2 1 億円をもらった児玉誉士夫 ( よしお ) も裁判途中で死亡 した。 トライスター 機 の、函館空港からの 離陸。
https://www.youtube.com/watch?v=8tDq81T2B9k
結局全日空に 2 1 機の トライスター を購入させたが、エンジン は ロールスロイス 社製の R B-2 1 1 であった。このエンジンの製造に当たり技術的失敗などによって完成が大幅に遅れ、 ロールス ・ ロイス 社の財政は逼迫 ( ひっぱく ) し、1971年 ( 昭和 4 6 年 ) には遂に経済破綻 し、イギリス政府により国有化されることによって、最終的には ロールス ・ ロイス と して独立を保った状態のまま国有化された。
[ 三発機の エンジン が 二つ止まる ]
1971年 (昭和 46 年 ) のこと、トライスター 機の R B 211-2 2 B エンジン の 設計上の ミ ス が 原因 で、潤滑油が エンジン から漏れ出す不具合が連続 して発生 し、うち 9 件は飛行中に エンジン 停止を引き起こ した。
なかでも 1974 年 ( 昭和 49 年 ) 9 月 1 日と 9 月 4 日には、トライスター機の 三つある エンジン のうち 二つの エンジン が 飛行中に潤滑油漏れにより停止 したために 、羽田空港へ緊急着陸する事態が連続 して発生 した。
[ 緊急状態で着陸できて、機長は当たり前 ]
機長は半年ごとに フライト ・ シミュレーター ( Flight Simulator、模擬飛行装置 ) で エンジン 火災、与圧喪失による緊急降下などの各種緊急事態における技量審査を受けるが、その際に 四発機であれば 二つのエンジン故障、トライスター のような 三発機であれば、二つの エンジン が故障 した状態でも安全に着陸できなければ、技量審査は 不合格となり 、翌日からその機長は飛 べ な く なる。
上の写真は 7 8 7 用の フライト ・ シミュレーター で、上下、左右、前後、傾斜、YAW( ヨー、機首振り ) 、時間軸で動く、六軸の自由度がある。
前述 した 二つの エンジン が オイル 漏れで止まり、残 りの 一つの エンジン だけで 羽田空港に緊急着陸 した二人の機長は、会社から 「 お褒めの言葉 」 も もらえなかった。その程度の緊急事態で無事に着陸できたのは、機長と して至極当然のことだからであった。
ちなみに アメリカ の マスコミ 報道に煽 ( あ お ) られて、日本でも下記 の機長を 「 英雄 」 に祭り上げた 「 軽薄な連中 」 がいたが、アメリカ の 全米操縦士協会 などの公的機関は、安易な 「 英雄説 」 を黙殺 した 。
プ ロ に要求される技術とは、厳 しいものである。
http://good-old-days.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-fe80.html