( その 3 ) 水中 爆発音 の ナ ゾ
(その 1 ) で述 べたよう に、核実験を監視する ウィーン の 包括的 核実験禁止条約 機関 ( C T B T O 、Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty Organization 、1996 年に国連で採択された 包括的 核実験禁止条約 に基づき核実験の監視を行う国際機関 ) は 、11月15日 に 「 異常な 1 回限りの、短く、激 しい、核活動ではない事象 」 を南大西洋で検知 していた。米国も同 じ場所で大きな音を探知 していた。
写真は在り し日の潜水艦 サン ・ ファン
潜水艦 サン ・ ファン( San Juan ) 自体は未だ 発見 されて いないが、考えられる事故原因 について、現在、有力説 と し て 注目されるようになっているのは、“修理の段階で新品の バッテリー ( 蓄 電 池 ) に取り換 えられたと されていた 9 6 0 個 の バッテリー が、実際には 中古の 再生 バッテリー だったということである。
それが、何らかの 問題 を 誘発 して、潜水艦の爆発を招いた というのである。再生 バッテリー が用いられた理由は コ ス ト 面からであり、新品の バッテリー は 1 個あたり ユーロ 換算で 1 万 ユーロ ( 1 2 0 万円 ) で、9 6 0 個 を取 り 換 えるには 9 6 0 万 ユーロ ( 1 1 億 5,2 0 0 万 円 ) の 費用がかかる。この費用は潜水艦を購入する費用のほぼ 3 0 % に 相当する金額 になる。
非常 に コ ス ト の 掛かる バッテリー 交換 だが、製造元 の ドイツ の ティッセン ・ クルップ 社( Thyssen Krupp A G 、軍需関連大企業 ) は 潜水艦 の テク ノ ロ ジー 、安全性、効率性などを考慮 して、5 年ごとに新 しい バッテリー と交換することを薦めて いた。
しか し、1985 年に この 潜水艦 の 建造 が 完成 して、翌年 アルゼンチン 海軍に納入されてからは、アルゼンチン 政府 も海軍 も 製造元 の ア ド バ イ ス は 一切 無視する姿勢になっていたのだ。それも あって、修理 も製造元 ではな く、アルゼンチン 国内の造船所で行っている。
しかも、その造船所 を 傘下 にもつ タ ン ダ ノ ー ル という企業は、最初は軍事産業に関係 した企業であった。その後、8 年間は民間企業に転換 して倒産。そこで 再度、国営事業と して 2007 年 に再生 させることに 決定 したという 「 曰 く 付 き 」 企業で した。
この造船所で サン ・ フアン が 修理 されたのであるが、その為に、解雇されていた エンジニア も駆り出されたという。この造船所で 6 年の歳月をかけて修理されたが、サン ・フアン の 沈没事故についてこの造船所での修理工程に不審が集まるのは当然であろう。
さらにこの 修理工程 が 費用 水増 しの 賄 賂 を 行 う ために利用されていたのであった。
クリスチーナ ・ フェルナンデス ・ キルチネル 女性大統領 ( 在任、2007~2015 年 ) の 政権下で 汚職が蔓延 し、賄賂 が 慣例化 していたという。それは企業 タ ン ダ ノ ー ル を復活させた 彼女 の 夫ネストル ・ キルチネル大統領( 在任 2003~2007年 )の時から始まっていたことであった。
汚職 で 腐敗 に 染まっていた当時の アルゼンチン で、潜水艦 サン・フアンが 修理 される前の 2004 ~ 2008 年間、海軍が契約する企業にはいつも不正があると して海軍上層部を訴えた 下士官 ホセ・オスカル・ゴメス は、それが理由で海軍から反抗罪で更迭( こうてつ ) されたと いわれている。
彼の説明によると、造船所が契約 した会社の社員が職務に就 く のではな く、会社は飽 く まで 架空 の 会社で、実際に 働 いていたのは 海軍 の 隊員 であったというのである。一方、契約 した 架空 の会社は 造船所 で行った仕事に対 して支払いを請求するのである。
また、いつも海軍と契約 していた 職 人 の ひとりは、サン・フアンの 9 6 0 個 の バッテリー の再生の見積もりと して提出 したところ、その金額の 4 倍の 見積もりを提出 した 彼 が知らない企業が、その仕事を受注 したという 証言 も報 じられている。
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