熱 中 症、 そ の 3
寛 政 元年 ( 1789 年 ) に 編 纂 された 「 広 恵 済 救 方 」 ( こ う け い さ い き ゅ う ほ う ) には、以下 のように 記 されて いた。
吐 瀉 ( と し ゃ、吐 き 下 し ) 腹痛 甚 だ しきは 即 ち 霍 乱 ( か く ら ん ) な り。
霍 乱 ( か く ら ん ) と は 漢方医学 で主に 日射病 をさ す 語で、また夏 に 起 きやすい、激 しい 吐 き 気 ・ 下 痢 などを 伴 う 急 性 の 病 気 も霍 乱 ( か く ら ん ) 称 した。
炎天 を 侵( お か し て ) 往 来( お う ら い ) し、また 農夫 等 日中 労 役( ろう え き ) して 天 熱 ( て ん ね つ ) に 中 ( あ た )り 、 中 暑 ( ち ゅ う しょ ) 昏 倒( こ ん と う )するな り 。
という 記述 があり、これが 熱中症 に 該当 する。
軍人 とても 例外 ではな く、安政3年(1856 年) に 翻訳 刊行 された 「 健 全 学 」 では、ヨーロッパ の 兵士 熱帯 勤務 での 炎 天 下 ・ 重 武 装 による 熱 射 病 が 注 目 されていた。
嘉永 6 年 ( 1853 年 ) に 平野元良 ( 重誠 ) が 著述 した ( 軍 陣 備 要 )
救 急 摘 方 ( き ゅ う き ゅ う て き ほ う ) には、
「 暑 にあた りて 悶 絶 ( も ん ぜ つ、 も だ え 苦 しみ 気 絶 ) せん、とせ しの 手当 ての 事 」 があ り、「 暑 に 当 た っ て 悶 絶 した 者 は 早 く 山 陰 や 樹 の 下 で 風 の 通 りよ くて 冷 た い 所 へ 負 ぶって 行 き、先 ず 生 姜 ( し ょ う が ) の 絞 り 汁 を 多 く 飲 ませる 方 がよ く、水 などはよ くな いと して いる。 」
[ 2 : 内 臓 の 温 度 ]
人間 の 体温 は、身体部位 によって異 なった 値 を 示 し、外部環境 の 温度 ( 暑さ ・ 寒さ の 影響 ) を 直接受 け 易 い皮膚 の 部分 である 「外 殻 温」 ( Sh e l l Temperature ) と、内 臓 の 温 度 である 「 核 心 温 」 ( B o d y C o r e Temperature ) とに分けられる。
人体 は、 「 核 心 温 」 を ほぼ 37 ~37.5 度 C の 一定 に 維持 することによって、体内細胞 を 正常 に 機 能 させるように している。 この 「 核 心 温 」 が 上昇 すると、細胞 の 活 性 が 低下 して 内臓 の 機能 も 徐 々 に 低下 する。
そ して、 「 核 心 温 」 が 4 2 度 C になると 細 胞 内 の「タ ン パ ク 質」が 不可逆的 に 変 性 して しまい、細 胞 が 死 に、内臓 の 機能 が 重大 な 障害 をきた し、生命 を 維持できな く なる。
体温計 の 温度目盛 りが 4 2 度 C まで しかないのは、そのためである。なお「核 心 温」は 通常 午前 3 時~6 時頃に最も低 くな り、午後 3 時~ 6 時 に 最も高くなる。
[ 3 : 核心温の測定場所 ]
ISO ( International Organization for Standardization )9886 によれば、鼓膜温 ・ 外耳道 ・ 舌下温 ・ 食道温 ・ 直腸温 ・ 尿温 などが規定されているが、日本では主に 腋 窩 ( えきか、わきの 下 ) が主流である。
しか し 欧 米 ではそうではない。
昭和 3 2 年 (1957年 ) に アメリカ 海軍飛行学校へ留学 した際に、同室の アメリカ 人学生 が 夜中に発熱 し、 当直室 から 借 りて きた 体温計 を 口 に く わえて 測定 したのを見て、 驚 いたのを 記憶 して いる。
現在 脇 の 下 で 体温測定 をする 国 は、日本 を 除 けば 世界 で 十 指 に 満 たないと も いわれている 。
口 腔 温 ( こ う く う お ん、舌 下 温 ) は、脇の下で 測 る 腋 窩 温 ( え き か お ん ) よりも、平均で 0.3 ~ 0.5 度 C 高 く なる のだそうであり、直 腸 温 は 「 核 心 温 」 と ほぼ 等 し いといわれて いる。
直腸温 の 測定 に 際 しては 直腸 を傷 つけないように器具 に ワ セ リ ン を 塗 り、乳児 の 場合 には, 2~2.5 センチ 挿入する。
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