船 の 錨 と 、台風 2 1 号
近年 最強 の 台風 2 1 号 が 9 月 4 日 に 徳島県南部 に 上陸 してから、関西空港付近を通過 し、1 4 時頃 に 神戸付近 に 再上陸 した。我 が 家 は 神戸 から 電車 で 1 時間 ほど 東側 にあるために、台風 2 1 号 の 威 力 を ま ざ ま ざ と 見 せつけられた。
たちまち 停電 となり、家 を 揺 らすような 激 し い 風、窓 の シ ャ ッ タ ー に 叩 きつける 雨、ヒュー ヒュー と 吹 き 荒 れる 暴風 の 音、8 5 歳 の 今日 まで、こんなに 激 しい 台風 は 経験 したことがなかった。
報道によると、関西国際空港 では 最大瞬間風速 が 観測史上 最大 の 5 8.1 メートル を 記録 し、滑走路 や タ ー ミ ナ ル 周辺 が 高潮 で 浸水 し、利用客 らが 空港 に 取 り 残 されていると いう。
更 に 関空 に 航空燃料 を 運 ぶ 2,5 9 1 ト ン の タ ン カ ー 「 宝 運 丸 」 が、関空 の 南の 海域で 投錨 して 停泊中 に 強風 で 流 され、関空連絡橋 に 衝突 し 連絡橋 を 破壊 すると 共 に 橋 を 通 る ガ ス の パ イ プ を 損傷 し、 ガ ス 漏 れを生 じて いるとのことであった。
https://www.asahi.com/video/articles/ASL94532ZL94PTIL023.html
中心気圧 9 4 5 h p a ( ヘ ク ト パ ス カ ル ) の 猛烈 な 台風 が 来 ると いうのに、当該 タンカー の 船長 は 「 守 錨 体 制 」 ( しゅびょう た いせ い ) をと り、航海科 の 乗組員 を 守錨 当直 ( アンカ ー ワッチ、A n c h o r w a t c h ) と して 船橋 に 配置 していたかどうか おお いに 疑問 がある。
たとえ 錨 を 打って 停泊 していても、錨 の 把 駐 力 ( はちゅうりょく、h o l d i n g p o w e r 、 錨 が 海底 との 間 に生 み 出 す 抵抗力 ) よりも、暴風 による 風圧 などによ り 船体 が 流 される 場合 があるが、これを 海事用語で 走 錨 ( そうびょう、 D r a g A n c h o r ) と いう。
投錨 して 停泊 した 場所 を G P S や レーダー 、陸上目標 との 交 差 方 位 ( クロスベアリング、C r o s s b e a r i n g ) で 確認 しておけば、そこから 位置 が ズ レ た場合には、「 走 錨 」 が 分 かる。
またそれまでの船体 の 周期的 な 振 れ 回 り 運動 が 止 ま り、一方 の 舷 からのみ 風 を 受 けるようになる。下記 は 荒天 による 走錨中 の 動画 で、錨 鎖 ( びょうさ ) が 張 った まま。
https://www.youtube.com/watch?v=UrM_ji1DS5w
では 今回の タ ン カ ー のよう に 錨泊中 に 走 錨 ( そうびょう、 D r a g A n c h o r ) が 始 まったら どうすべきか?。投錨 した 船 の 錨 を 巻 き 上 げるのに 通常 20 ~ 30 分 必要 と するので、緊急時 には 待っては いられな い。
その 場合 には、錨 を 捨 てて 出港 する ( 捨 錨、 し ゃ び ょ う ) するのが 普通 である。そのためには事前 に 錨鎖 ( びょう さ ) の 1 節 ごと を 繋 いでいる 「 ケンター シャックル」 ( K e n t e r S h a c k l e、 切 り 離 し 用 シャックル ) に、引 き 揚 げ 用 の ワ イ ヤ を 結 び、目印 の ブ イ を 付 けておき、い ざ と いう 場合 には 遅滞 な く 捨 錨 し、出 港 する 。 錨 は 後日 回収 する。
今回の事故に関して船の 航海士 と 称する 人 が、自然 の 猛威 の 前 にやむをえなかったと タンカー の 乗組員を 弁護 して いたが、神戸 や 大阪港 の 錨地 に 停泊 していた 船 が 一隻 も 岸壁 ・ 防波堤 に 押 し 流 されなかったことを、どのように 解釈 するのか 知 りた いものである。
当該 タ ン カ ー が 約 3 0 分間 エンジン も 起動 せずに 漂流 し、橋 に 衝突 したのは、どういう 理由 か知りたい。機関科 の 当直 を 置 かずに いたのではな いのか (?)、
ところで 海上保安大学 1 年 の 時 に、 瀬戸内海 を 前述 した ボ ロ 船 の 練習船 く り は し ( 栗 橋 ) で 巡航 したことがあった。その 際 に どこかの 泊地 で 投錨 した 際 に、錨鎖 の ブレーキ の 掛 け 過 ぎ か どうか 原因不明 で 錨鎖 が 切断 した 出来事 が 起 きた。
船 の 乗組員 が おろおろする 中、学生 と 共 に 乗船 していた 「 運用 の 教官 」 だった 東北弁 の C 教官 が 、と っ さ に 水深 と 海底 の 底質 を 測 る サ ン ド レ ッ ド ( S o u n d i n g l e a d 、測 鉛、そ く えん ) の 編 組 ( 細 いあみひも、長さ 40 ~ 60 メートル ) に、船 の 「 手 す り 」 にあった 救助用 の 円 形 輪 ブ イ を 結 び 付 けて 海 に 投 げ 入 れたのは 「 ファイン プレー 」 であった。
そのため、後日 錨 や 錨鎖 を 回 収 するのに 非常 に 役立 ったと 聞 いて いる。なお 片方 の 錨 の 無 い 船 は 非常 に 「 み じ め 」 な 姿 であったことを 記憶 している。
錨 泊 の 際 に 繰 り 出 す 錨 鎖 の 長 さについては、旧海軍 の 時代 から の 経 験 則 があり、水深 を D メ ー ト ル とすれば、
通常の場合は 3 D + 9 0 メ ー ト ル。
今回の場合のような 荒 天 時 には 4 D + 1 4 5 メ ー ト ル とされて いる。
仮 に 水深 1 0 メ ー ト ル とすれば、荒天の場合 錨鎖 を 繰 り 出 す 長 さは 1 8 5 メートル になる。
錨鎖 の 1 節( O n e s h a c k l e ) は 2 5 メ ー ト ル なので、7 節半 使用 することになる。
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