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2018年9月 6日 (木)

船 の 錨 と 、台風 2 1 号

近年 最強 の 台風 2 1 号 が 9 月 4 日 に 徳島県南部 に 上陸  してから、関西空港付近を通過 し、1 4  時頃 に 神戸付近 に 再上陸  した。我 が 家 は 神戸 から 電車 で 1 時間 ほど 東側 にあるために、台風  2 1 号 の 威 力 を ま ざ ま ざ と 見 せつけられた。

たちまち 停電 となり、家 を 揺 らすような 激   し い 風、窓 の シ ャ ッ タ ー  に  叩 きつける 雨、ヒュー ヒュー と  吹  き 荒 れる 暴風  の 音、8 5 歳 の 今日 まで、こんなに 激 しい 台風 は 経験  したことがなかった。

報道によると、関西国際空港 では 最大瞬間風速 が 観測史上 最大 の 5 8.1 メートル を 記録  し、滑走路 や タ ー ミ ナ ル 周辺 が 高潮 で 浸水  し、利用客 らが 空港 に 取 り 残 されていると いう。

更 に 関空 に 航空燃料 を 運 ぶ  2,5 9 1 ト ン の タ ン カ ー  「 宝 運 丸 」 が、関空 の 南の 海域で 投錨  して 停泊中 に 強風 で 流 され、関空連絡橋 に 衝突 し 連絡橋 を 破壊 すると 共 に  橋 を 通 る ガ ス の パ イ プ を 損傷  し、 ガ ス 漏 れを生 じて いるとのことであった。

https://www.asahi.com/video/articles/ASL94532ZL94PTIL023.html

中心気圧 9 4 5   h  p   a  ( ヘ ク ト パ ス カ ル ) の 猛烈 な 台風 が 来 ると いうのに、当該 タンカー の 船長 は  「 守 錨  体 制 」 ( しゅびょう た いせ い ) をと り、航海科 の 乗組員 を 守錨 当直 ( アンカ ー ワッチ、A n c h o r  w a t c h ) と して  船橋 に 配置 していたかどうか おお いに 疑問 がある。

Kouseki

たとえ 錨 を 打って 停泊 していても、錨 の 把 駐 力 ( はちゅうりょく、h o l d i n g   p o w e r 、 錨 が 海底 との 間 に生 み 出 す 抵抗力 ) よりも、暴風 による 風圧 などによ り 船体 が 流 される 場合 があるが、これを 海事用語で  走 錨  ( そうびょう、 D r a g   A n c h o r ) と いう。

投錨  して 停泊  した 場所 を G P S や  レーダー 、陸上目標 との 交 差 方 位 ( クロスベアリング、C r o s s  b e a r i n g ) で  確認  しておけば、そこから 位置 が ズ レ た場合には、「 走 錨 」 が  分 かる。

またそれまでの船体 の 周期的  な 振 れ 回 り 運動  が 止 ま り、一方 の 舷  からのみ 風 を 受 けるようになる。下記 は 荒天 による 走錨中 の 動画 で、錨 鎖   ( びょうさ ) が 張 った まま。

https://www.youtube.com/watch?v=UrM_ji1DS5w

では 今回の タ ン カ ー のよう に 錨泊中 に 走 錨 ( そうびょう、 D r a g  A n c h o r  ) が 始 まったら どうすべきか?。投錨  した 船 の 錨 を 巻 き 上 げるのに 通常 20 ~ 30 分 必要 と するので、緊急時 には 待っては いられな い。

その 場合 には、錨 を 捨 てて  出港 する ( 捨 錨、 し ゃ び ょ う  ) するのが 普通 である。そのためには事前 に 錨鎖 ( びょう さ ) の 1 節 ごと を  繋 いでいる 「 ケンター シャックル」 ( K e n t e r   S h a c k l e、 切 り 離 し 用 シャックル ) に、引 き 揚 げ 用 の ワ イ ヤ を 結 び、目印 の  ブ イ  を 付 けておき、い ざ と いう 場合 には 遅滞 な く 捨 錨  し、出 港  する 。 錨 は 後日 回収 する。

今回の事故に関して船の 航海士 と 称する 人 が、自然 の 猛威 の 前 にやむをえなかったと タンカー の 乗組員を 弁護 して いたが、神戸 や 大阪港 の 錨地 に 停泊 していた 船 が 一隻 も 岸壁 ・ 防波堤 に 押 し 流 されなかったことを、どのように 解釈 するのか 知 りた いものである。

当該 タ ン カ ー が 約 3 0 分間 エンジン も 起動 せずに 漂流  し、橋 に 衝突  したのは、どういう 理由 か知りたい。機関科 の 当直 を 置 かずに いたのではな いのか (?)、

ところで 海上保安大学 1 年 の 時 に、 瀬戸内海 を 前述 した ボ ロ 船 の 練習船  く り は  し ( 栗 橋 ) で 巡航  したことがあった。その 際 に どこかの 泊地 で 投錨 した 際 に、錨鎖 の ブレーキ の 掛 け 過 ぎ か どうか 原因不明 で 錨鎖 が 切断 した  出来事 が 起 きた。

船 の 乗組員 が おろおろする 中、学生 と 共 に 乗船 していた 「 運用 の 教官 」 だった 東北弁 の C  教官 が 、と っ さ に 水深 と 海底 の 底質 を 測 る サ ン ド  レ ッ ド ( S o u n d i n g   l e a d 、測 鉛、そ  く  えん ) の 編 組 ( 細 いあみひも、長さ 40 ~ 60 メートル ) に、船 の 「 手 す り 」 にあった 救助用 の 円 形 輪 ブ イ を 結 び 付 けて 海 に 投 げ 入 れたのは  「 ファイン  プレー 」 であった。

そのため、後日 錨 や 錨鎖 を 回 収 するのに 非常 に 役立 ったと 聞 いて いる。なお 片方 の 錨 の 無 い 船  は 非常 に 「 み  じ め 」  な  姿 であったことを 記憶 している。

錨 泊 の 際 に 繰 り 出 す 錨 鎖 の 長 さについては、旧海軍 の 時代 から の 経 験 則 があり、水深 を D メ ー ト ル とすれば、

通常の場合は 3 D + 9 0 メ ー ト ル
今回の場合のような 荒 天 時 には 4 D + 1 4 5 メ ー ト ル とされて いる。

仮 に 水深 1 0 メ ー ト ル とすれば、荒天の場合 錨鎖 を 繰 り 出 す 長 さは 1 8 5 メートル になる

錨鎖 の 1 節( O n e   s h a c k l e ) は 2 5 メ ー ト ル なので、7  節半 使用 することになる。

シルバー回顧録 へ戻 るには、下記を ク リ ッ ク

http://www.rose.ne.jp/~ooha/

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コメント

主機関が起動していなかった理由は私も最大の疑問です。
海王丸の富山湾座礁事故では風速35メートルの中、主機関を全速前進にて支えるも走錨が始まり、揚錨せんと巻き上げ中に揚錨機過負荷で停止、そのまま流され座礁していましたが、宝運丸の走錨中の主機関稼働状況は私も知りたいところです。


辛坊治郎氏著書の中で阪神高速が片側2車線から連絡橋に入れば3車線になるうさん臭さの記述がありましたが、今般の事故では3車線で良かったと思いました。

神戸ポートアイランド造成直後、売れ残り地多数にて困った神戸市が、関電はじめ、在神各企業を勧誘するも、連絡橋1本では災害時に困ると言って断った話も思い出しました。
港島トンネルのようなバックアップインフラの整備検討が必要でしょう。

乗船実習中の捨錨とは、またと無い貴重なご経験ですネ。

ただ、錨鎖が切断すると2~3秒で海中に没すると思いますが、紐を括り付ける余裕があったのでしょうか?

連投すみません。
エンジン全開との報道でした。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180909-00000012-jij-soci

ブログ の 表現が悪 く、読者に 誤解 を与えて しまい、申 し訳ありませんで した。

前進投錨 か 後進投錨 か 忘 れま したが、錨作業中 に 錨 鎖 が 突然 切断 して しまい、錨 と 切断箇所 まで の 錨 鎖 が 海中 に 沈 みま した。

とっさに運用 の 教官 が、沈 んだ 錨 の 位置 に 目 印 を 設定 するために、それまで 学生 に対する 説明用 に 手 に して いた Sounding Lead ( 測 鉛 ) の 細 い ロ ー プ に、手 すりに 掛 けてあった 溺者救助用 の 輪 形 ブ イ を 結 び、現場 の 海 に 投 げ 入 れたわけです。

捨 錨 するためではありませんで した。

タンカーの エンジン が 起動 していなかったと、テレビ の 放送 で 聞 いたので 私 もそのょう に ブ ロ グ に 書 きま したが、9 月 9 日 の 読売新聞 を 見 る と、エンジン を 全開 に  しても 走錨 したと 書 かれていま した。

国交省 の 海難 事故調査 の 結果 につ いては、当初 2 週間程度で発表と述べていたので、それを見て、ブ ロ グ の 訂正 をするつもりです。

すみません。良く文面を拝読出来ていませんでした(汗)
お許しください。
捨錨手段の可否も含め、今般の海難は個人的に船の運用面と今後の法的責任(刑事)に関心を持っておりましたから。
報道では水深15メートル底質泥・・8節伸ばしての双錨泊なら大丈夫かと船長はご判断された事と察します。
私見ですが、風速は60メートルを超えていたとの報道があり、全速12ノット程度の主機関なら走錨止む無しと考えます。
無力にも2~3ノットで流されていく間の心中は察するに余りあります。

海保現職と直後に会う機会有り、風速の予見可能性と事故未然防止義務懈怠につき質しましたが、
『ま~検挙だろうな~ 東日本大震災もそうだったけど、最後は起訴猶予かな?』との意見。

結果が重大で、海保もこのまま終わりには出来ないでしょうが、松井知事の『人災だ』https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180909-00000034-asahi-sociっとのご発言には考えさせられている所であります。

今般は愚問に迅速で丁寧な返信賜り深謝申し上げます。

了解 いた しま した。

海難事故 に 限 らず、航空事故 や、災害 などの 「 初期 の 情報 」 に 誤 り が あ る のはよ く あることですが、情報 の 「 迅速性 」 と 「 正確性 」 の 兼 ね 合 いが 難 しい ところです。

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